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過去作品解説 part.2

映画「インターステラー」を見ました。嘘っぱちをドラマにする映画という技術はすごい。ひたすら演出が光る映画でした。さて続きです。

夏休みを経て、3年の後期の中間ですね。学祭でギャラリーを借りて展示しました。「危機」という展覧会名です。

いわゆるマンガのキャラクターの顔、が出現します。あと特徴的なのは文字ですね。それがペインタリー!!!!という感じで描かれています。絵として崩壊寸前、もしくは絵になるスレスレのラインで、なんとか辛うじてタブローになっています。それがバラバラに壁に飾られています。これらの作品はかなり短い期間に一斉に描かれました。一番左の黒い絵は確か搬入日か前日くらいに一日で仕上げました。

中高生の頃、僕はスケッチブックにキャラクターの絵ばかり描いていました。僕らにとって絵といえば、最初にキャラクター、マンガの絵なのです。ただ僕はキャラクター、マンガの絵、とは呼びたくありません。何か特定のキャラを描いているわけでもないし、マンガと絵は全く異なる表現です。ですから、僕にとっては、無差別にすべてただの絵です。当時だってただ自分の絵を描いていただけ。僕の場合は、殴り書きに近い、即興的に鉛筆で描いていました。あとは母から貰ったパステルなんかも使ってた記憶があります。ノートに落書きとかではなく、スケッチブックに描きためていました。美術部、とは別の創作活動として描いていました。というかオナニーです。  

要は自分にとって一番近いところにあったモチーフ、「絵」、を思い出したということです。しかし、そのような絵、キャラクターという語は使いたくないので、少年の絵、とでも呼びましょう。そういうものはいつも確かに感じながらも表に出ることはなかったのです。中高の時だって、表の美術部での活動、に対して、家での闇のスケッチ、のように陰と陽でした。この「少年の絵」を引っ張り出しキャンバスの上にタブローとして乗せる。これはなかなか決心が要ることでした。

その決断を後押ししたのは、ひとつにはpixivの画家たちの影響がありました。pixivとは隆盛を極めたイラスト投稿型巨大SNSです。デジタルイラストレーションをやっている人がほとんどですが、当時、少ないながらも決してイラストではない「絵」をやっている人が存在し、その勢いは凄かったのです。どう凄いかは作品を見たらわかります。僕も好きな画家がたくさんいました。当時、僕は彼らの絵に衝撃を受け、pixivという広大な絵の海の中を宝探し感覚で見漁っていたのです。今ではまた状況が一変しほとんど見ることはなくなってしまいましたが。彼らの作品からは本当に勇気と希望を貰いました。大学と言うのは狭いんです。ネットの向こうには、こんなに素晴らしい絵を描く人がいるのかと、戦々恐々でした。じゃあそのような現状の中、僕はどういう絵を描くべきか、pixivの画家達の存在がひとつの手引きをしてくれたというのは事実です。

ですからこの頃は、「少年の絵」をキャンバスにひたすら乗せていく、壁掛けのタブローにする。たとえそれが絵画の崩壊に繋がろうとも。でないとこの先、新しい絵がどんどん生まれる中、生き残れないだろう。だからタイトルは「危機」だったのです。もう3年というのもありますしね。そんな心境で早描き多作をして、キャンバス、タブローを怖がらない度胸もついてきました。絵画が何ぼのもんじゃい、という意気込みです。

この学祭での展覧会から、ちょっと暴走気味になります。次くらいがこの青いストライプの絵です。

この絵はubeful galleryでのカレンダー展用に描き下ろしました。学祭のあとくらいにubefulさんにひょんなことから声をかけて頂きまして、初めての外部のギャラリーでの展示となりました。pixivつながりでお話を頂いたので、ユーザー名である「清方」としての参加となりました。(名前についてですが、別に本名でもいいんですが、こっちの方がクールかなと思って使い続けています。世間から隠れたいとかではありません。)絵の具が垂れちゃってます。超ペインタリーです。モチーフは青いストライプと、星です。あと小さく顔も描いてます。サイズは100号。気持ちのよい作品ですね。こういう絵は、というか僕の場合全ての絵がそうですが、下書き等一切なく張ったキャンバスに書道のように描いていきます。ですが、練習はしています。同じサイズの安い紙を壁に張り、実作までに何回か筆ならしをします。ほんとに書道と同じみたいですが。その段階では手数も色の数も多いですが、本番でかなり削ぎ落しシンプルに仕上げます。前段階の練習の絵ももちろん保存しています。キャンバス画に仕上げず、ただでかい紙に描く場合もあります。その絵は壁画として描かれますが、発表はしません。僕の制作は、そういう練習の絵や無関係な壁画をいくつか経て、キャンバス画が出来上がっています。

最後にご紹介するのは3年の年度末作品展の「サンダーボルト」です。この作品までにちょこちょこ変なことやったりもしていますが、省きます。

雷を描いています。サイズは縦2.7m×横1.8mです。サイズには理由があります。大学の作品展は美術館に展示させて頂くのですが、学生全員展示するので壁を均等に人数で割ります。その年度は横1.8mまで使っていいことになりました。するとだいたいみんな限界のサイズの絵を描きます。同じような大きさの絵がずらっと列ぶ風景、卒展でよく見る光景になっちゃいます。僕は目立ちたかったので、横が駄目なら縦で勝負だということで、縦長にして一番大きい絵にしました。雷はドローイング頻出の大好きなモチーフだったので、雷を落とすことにしました。この絵も同サイズの紙に練習してから描いています。前段階では構図がありもっと複雑でした。ここまでシンプルにしたのは、大好きなモーリス・ルイスの影響があったりもしますが、絵の中に入り込めるようにするためです。つまりこの作品は、絵の前に人が立って完成するようにしたのです。カラーフィールドのような身体で体感する空間としての絵画の力を雷にしています。実際、僕は大学2年くらいのときに行った川村記念美術館でアート史にその名を刻む巨大抽象絵画群を初めて目にして、雷に打たれたような気分になったのです。世の中にはこんな巨大な営みが脈々と受け継がれているのかと、洗礼を受けました。単純ですがアートの力強さに感動してしまったのです。

喋り過ぎかもしれませんが、この絵は筆ではなくスポンジで描いています。スポンジだと絵の具切れしないので、このように長い線も一回で描くことができます。夜遅く、誰もいなくなった教室で一晩で描きました。キャンバスを張ったりパネルをつくるのに2週間くらいかかりましたが。。。絵の具も大量にストックしてから描きました。この時に作った絵の具がまだ残っており今も普通に使っているくらいです。この絵を描いた夜のことはよく覚えています。なかなか味わえないスリリングさでした。今では同じ絵を描いても、当時のような緊張感はまったく持てないでしょう。

つづく

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