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ハリガネ人物クロッキー

先日、みずいろ絵画教室で人物クロッキーを行いました。

クロッキーとは、もののかたちをすばやくとらえること。写生の簡易版のようなものです。今回は、僕がモデルになり、時々生徒さんにもお願いして、ハリガネを使って、実験的に取り組んでみました。タイムリミットは5分です。ポーズを変えながら何セットも行いました。

これ、かなり難しいです。輪郭線を追って作る人もいれば、立体の人形になってしまう人もいました。前者は、人物のシルエットは作れるがポーズによっては奥行き表現に苦戦し、後者は、体の構造はよくわかるが棒人間のようでシルエットが見えづらい。ハリガネを曲げながら悪戦苦闘、頭をフルで使う時間でした。

↓生徒作品。子どもから大人まで。

現実の物を見て描くとき、僕は二通りのやり方があると思います。一つは、輪郭=ガワを追うやり方。もう一つは、構造を示すやり方。どちらも大事なことなのですが、一方を重視しすぎるともう一方が疎かになってしまうのです。シルエットVSモデリング。3次元のものを平面の絵にするためにはどちらも必要になってくると思います。ものを見て絵を描く時、画家は頭の中で常にその二つの見方で板挟みになっています。

例えば、手を描く時、指が5本あることを図解することと、塊として手の全体形を捉えることは、時に矛盾し、対立します。一方ばかりに気を取られればもう一方が弱くなります。これをうまくまとめるには写生の経験が必要です。そこで対立を回避させる一般的な方法として、正面化させる、という方法が取られます。奥行きの最も少ない形で描くという方法です。手を描く時でいうと、手のひらを広げて指を伸ばした形、パーに寄った絵になるということです。これは無意識の働きです。よほど写生を積んだ人でも、パーに寄ってしまうものです。勝手に描きやすい方向へ絵を作ってしまうのです。=モデリング。平面上で、立体物をわかりやすいように展開して図解してしまうのです。だから写生を積んでそのことがわかっている人は意識的に修正を入れながら描いてます。この違いが、写生が上手い人とそうでないひとの違いの一つです。ただ、モデリングの働きも重要でそれがないと構造がわかりにくくなってしまいます。

シルエットとモデリングのジレンマを知っているか知らないか、、やってみた後だから気づいたことなのですが、ハリガネクロッキーは3次元を絵にするまでの頭の中での働きを可視化したようなもので、絵に「する」ことに意識的になれる良い教材だったと言えるかもしれません。紙にペンだとこうはいきません。細部を書き込めるからそのものに似せることにこだわって根本的なことを考える隙がありません。ハリガネは曲げればすぐ形を360度変えられますがペンだと修正もすぐ出来ません。何より平面に描くわけだから、そこに行き着くまでの頭の中の働きを掴んでいないと何度やっても同じでしょう。

元々考案のきっかけは、クロッキーをもっとシンプルにシルエットとフォルムだけでやってみたくて、最初は机に紙を置いて平面に黒い紐でやってみたのですがそれだと形をぐにゃぐにゃ定めていくことが出来ず、それでハリガネに至ったわけです。ただ、紐からハリガネにして、360度形を作ることが出来るようになったことで新しい発見がありました。ハリガネの面白さは、3次元の物体だけども2次元の線描にも見えるというところだったのです。二つの見方が出来ることが、写生のジレンマについて考えることに繋がりました。

こんな感じで、、最近のみずいろの関心ごとは写生、デッサンの研究です。また新しいやり方を考えていきたいと思います!

↓終わりに、作ったハリガネクロッキーを半立体から平面へ映しとりました。方法はひみつ。

マティスのダンスのようだ!!

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