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Arca「KiCk i」感想

Arcaの新譜「KiCk i」がリリースされたのでその感想を急いでメモ。

(なんか、最近Arca関連が微妙に多くなっているのですが、今回でひとまず終わりにして次は絵のこと、何か書いてみたい。)

NonbinaryのMV公開から始まり、アルバムものすごく楽しみにしていました。
色々ツッコミどころ満載なのですが、一言。

なんてヘンテコで!!なんて爽快なんだ!!

これは、音楽に付き纏う文化をぶち壊す作品、だと思った。
文化って言い方が正しいのかわからんけど、特に、主に、ジェンダーについて。
音楽が未だ強いられてきた、むしろ保守してきた様々な制約?そんな色々を正にkickしてる。

これまでArcaは音楽そのものを壊して、より感情的に、よりダイレクトに作り変えてきたように思う。ビートやリズムがない、繰り返しがない、エフェクトの連続で作ったり、、規則性を壊して、ミュータントを創造するように。正にMutantはそんなアルバムで、僕が一番好きな最高傑作。しかし、それは外の道だったのではないか?僕は大好きだけど、それはある意味、殻を破るようでいて、殻の中にいる大多数の人たちには届かないのかもしれない。末端すぎて、ポップでは無かったいう単純な意味。前作のArcaで自身が歌い始めて、異形のサウンドは、歌モノ、になった。しかしそれは苦しみながら絞り出すような歌声で、大変悲しく、人生の切なさを感じた。特に、それはゲイ(あるいはトランス)として生きることの苦しみであり、美しさであり、そこを外さずに語ることは出来ないと、個人的には思うくらい。根本はそうしたネガティブなイメージであり、その根本を曝け出すことがアルバムのテーマだったのではないか。殴られたようなアザだらけの自身の顔ドアップのジャケ写。サウンドはとても美しいのだけど、そのテーマは、僕はあまり好みではなかった。悲しみは人類共通だけれど、大げさなくらい壮大な曲もあり、気分を選ぶ。しかし、そこから、Arcaはさらに変身を続ける。まず見た目がめっちゃ変わる。そしてハイパーファッショナブルになる。その何年か後のシングル@@@@@では、誰?状態。そして、悲しみ、苦しみはどこかへ消えて無くなり、笑い声や銃声が入る。パワフルな、エクスペリメンタルディーバへと、とにかく攻撃形態へと、変貌を遂げたのだった…いつのまにか!!@@@@@は、めっちゃ、好き。元気出るし、泣ける。で、そんなアレコレを経て、今回のKiCk i。ジャケで武装してるし、直立不動でニューマンのジップラインみたい。戦士。その内容は、初期のMutantとは明らかに違いすぎた。これはポップの殻を被って世界を内側から破壊する、ノンストップで自爆するエクスペリメンタルポップだった。

一発目のNonbinaryから、一聴して気持ちの良いリズムだが、すぐに嵐のような違和感が様々に襲ってくる。

Timeは幽玄なラブソングかと思えば、モンスターの求愛のような叫び声に変わる。

Mequetrefe、踊れそう?と思ったら一瞬で消えたり止まる。で、ブラクラのようなMV。

ロザリア参加のKLKという曲。

レゲトンのイカついイメージ、、金と女と車、、みたいな、偏見ですが、そんな悪い男のクラシックな美学を、未来のダンスフロアに召喚して、全く異質で奇妙なものへと変えてしまう、バグった空間!そこは、ジェンダーレスで、ノンバイナリーで、サイバーパンクで、TikTok的で、映像的で、ラテンも、アニメも、エロもkawaiiも、何でもありの文化溶解地点。ロザリアが正にアイコン的。お披露目インスタライブでは二人で「日常」見てましたね。Kは日常が好き。みんな好き。そんなロザリアとアルカ、二人に導かれて踊っているのは一体どんな奴ら?これで乗れる人間がいるのか?ヘンテコ過ぎて、僕は正直全く乗れません。最初聴いた時、何じゃこりゃダサすぎる!!と思った。俺の感覚、間違ってる?と。けど、やっぱり、その全力で型をぶち壊しに行く姿勢、最高にかっこいいわ。

ビョーク参加のAfterwardsは、箸休め的な曲で、ビョークの歌声にホッとするくらい。いつもはユニークに聞こえるのに、このアルバムの中だと人間的で安心する。
他にも盛り沢山。最後は以前のArcaにあったような、美しい旋律を聴かせて幕を閉じる。しかしその聴こえ方も少し違って感じた。

Arca、こんな音楽を作ってくれてありがとう。

感想終わり。

気になった人はYouTubeなりApple MusicなりSpotifyなりで聴いてみてください。

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