銘柄分析 星光PMC

このノートは何

主に自分の備忘録として、主力として大きく売買した銘柄について考えたことなど記録しておくものです。特定銘柄への投資を推奨するものではございません。

3行まとめ

・CNF実用化で製紙業の再興へ
・電動車用部品へのCNF採用に期待
・主力事業が堅調で投資余力十分

企業概要

星光PMC(4963)。製紙用薬品の大手。銀ナノワイヤ、セルロースナノファイバーなど微細繊維の研究開発も手掛ける。柱となる製紙用薬品は中国での生産販売やベトナムでの製造など海外で拡大中。

購入に至る経緯

きっかけは東北大学が発表したプレスリリース。東北大学と日本製紙の共同研究で、セルロースナノファイバー(CNF)を利用する蓄電体(キャパシタ)の開発に成功した、という内容。https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/03/press20210323-04-cnf.html

元々日本製紙をわずかばかり保有していたため興味を持ち、CNFについて調べた。詳細は次項にて。

CNFに将来性を感じ、関連銘柄として製紙業や化学繊維メーカーなどを比較検討。その中で星光PMCを選択した理由は主に次の4点。(1)CNF複合樹脂の製造における独自技術、(2)連結業績に占めるナノファイバー事業の割合が大きいこと、(3)財務健全性、(4)DICが53.7%保有する親会社であること。

セルロースナノファイバーについて

セルロースナノファイバー/CNFは、植物由来の「セルロース」から製造する、ナノレベルの微細な繊維のこと。その特長は、軽量・高強度・高弾性・低熱膨張・非地中資源・再生可能資源、といったところ。

CNFは単体で用いるほか、従来素材と複合化して使用できる。これまでの研究で、樹脂や繊維素材に複合化することで強度の向上などの効果が見られている。

CNFの実用化に向けた課題は、製造コストと凝縮性だ。現在のCNFの主な用途は、食品添加物、化粧品材料、製紙材料、不織布など繊維製品あたり。いずれも単価が安く、CNFの製造コストでは採算が合わないために採用が広がらない状況にある。そのためCNFの発展には、低コストでの製造方法の確立、あるいは高付加価値製品への採用、もしくはその両方が必要となる。

凝縮性というのは、CNFを他の素材と配合した時に、全体に分散せず凝縮してしまい、期待した効果を得られないという問題。全体に分散される形で複合化する方法が研究されている。

CNFの製造方法は基本的に製紙の工程と似ている。より微細なレベルまで繊維を解きほぐすイメージだ。

日本の製紙業は、世界的にも有力。2019年度の売上ランキングでは、世界3位に王子製紙、9位に日本製紙が入っている(https://deallab.info/pulp-paper/)。CNFの研究においても、日本は先行者に入っており、アメリカや北欧と競っている状況。

ここまでが調べた内容、この先は私見。

日本に限らないが、製紙業は斜陽産業と化しており、事業転換が求められている。CNFの実用化・高付加価値製品での採用が進めば、製紙業界の再興ひいては日本経済の活性化に繋がる可能性がある。

CNFについては、2012年頃から政府が後押しする形で、産官学共同の研究が進められている。

将来的なCNFの用途として期待されるのが、自動車・機械の部品、半導体など電子機器の材料、医療用品など。いずれの用途でも実用化されればCNFの市場は大きく拡大することになるだろう。

個人的には、特に電動車用部品に期待したい。日本の産業において、自動車は未だ大きな割合を占めている。従来のガソリン車に比べ馬力に劣る電気自動車は、車両の軽量化が課題となっている。デンソー、アイシンといったトヨタ系Tier1では既にCNF複合素材の研究開発を進めている。(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/01796/)

自動車部品への採用となると、CNF単体での利用は考えにくく、樹脂(プラスチック)や金属との複合素材となる可能性が高い。

そこで星光PMCである。同社はCNFの分散性が高い複合樹脂を製造する技術を持つ。また、かねてより銀ナノワイヤ(銀のナノファイバー)も製品化しており、ナノファイバーを製品化する技術力が強みである。

CNFの研究は産官学共同で推進されている。その中核は京都大学、東京大学、九州大学。星光PMCは京都大学の矢野浩之教授とのコネクションが強い。

技術力の裏付けとして、同社はホームページ上で「Technical Review」として研究開発の情報を公開している。正直なところ内容はさっぱり理解できないが、こういう情報を公開できることに技術への自信が感じられる。(https://www.seikopmc.co.jp/tech/review/)

CNFの活用により電動車の軽量化が進めば、EV開発に遅れを取っている日本が巻き返せるかもしれない。もちろん脱プラスチックにもなる。

以上をふまえると、CNFは今後、日本の成長戦略の一翼を担う可能性が十分にあるのではないだろうか。ロマンがあってとても良い。

財務健全性

21年12月期1Q時点で、自己資本比率71.1%、流動比率249.93%。現預金+受取手形+売掛金で流動負債を賄える状況。売掛金は前年比同等の水準。問題ないね

キャッシュフロー。これは20年12月期の数値。営業CF4,020百万円、投資CF+財務CFが2,690百万円。問題ないね

キャッシュフローについて過去数年を確認。凹凸はあるが、一貫してプラス。主力事業である製紙用薬品がきちんと現金を生んでいるので、新規事業へも安心して投資できる。

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設備投資が増加傾向。これはナノファイバー関連の研究開発の他、中国での生産販売やベトナムでの生産拠点を立ち上げた影響。いずれにせよ、連動して業績が伸びているので、良い投資ができていると判断

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投資CF、財務CFは一貫してマイナス。つまりフリーCFの範囲内で事業拡大投資や借入返済・株主還元を実施できている。ファイナンス実施の可能性は低い

株主構成

筆頭株主はDICで53.7%保有。星光PMCは元々、DICと外資系企業の合弁会社としてスタートしている。

日本製紙が4.1%保有の2位。製紙用薬品の販売先であり、CNF研究での協働もある。CNFの生産販売において業務提携を発展させられると良いな

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懸念として、CNFがいよいよ実用化、来期業績超期待!となったタイミングでDICがTOBかけて上場廃止、なんてことが起こりうる。夢の途中で強制終了、というのはちょっと悲しい

成長性

売上はやんわり成長中

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営業利益は凹凸あるが、2019年度にグッと伸びた

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ここにCNF複合樹脂や銀ナノワイヤが本格的に乗ってくると、楽しみな感じ

割安感

20年12月期実績でPER15.31倍、ROA7.30%と、妥当な水準。ここにCNFや銀ナノワイヤの用途拡大や、中国・ベトナムでの事業拡大が乗ってくると割安と言えそう。

競合

CNFでは主に製紙業。王子HD(3861), 日本製紙(3863), 中越パルプ(3877)など。会社全体に占めるナノファイバー事業の割合で、星光か中越パの二択に絞り、財務とCFで星光に決めた。

ナノファイバーの製品開発としては、東レ、帝人、クラレといった化学繊維メーカーや、第一工業製薬、東亜合成あたりも入る。各社とも化学繊維や炭素繊維など他事業の割合が大きいことと、自動車部品での採用を考えた時に星光の複合樹脂よりも秀でた強みは無いと考え、CNFの未来に投資するには星光PMCが最適と判断した。

そのほか雑感

とにかく肝は、CNFの用途拡大である。製品開発に成功するのは競合他社でもかまわない。今は市場を形成していく段階なので、他社が製品開発したとしても連れ高できると考えている。もちろん、星光PMCが台風の目になれれば理想的だし、その可能性は高いと思っている。

以上です

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