Pythonでやってみた(Engineering):反応工学
1.概要
反応器設計に必要な反応工学の基礎を紹介します。(Pythonでの実装は追って)
2.記号
使用する記号一覧は下記の通りです。
$${r}$$:反応速度
$${C}$$:濃度
$${t}$$:時間
$${k}$$:反応速度定数
$${F}$$:反応系内の流量
$${G}$$:反応系内の生成量
$${n}$$:反応系内の蓄積量n
$${V}$$:体積
$${T}$$:温度
$${P}$$:圧力
$${R}$$:気体定数
$${E}$$:活性化エネルギー
3.反応器の種類
反応条件に関しては定容/定圧系、等温/非等温があり、反応系に関しては大きく分けて3種類あります。
3-1.回分反応器
回分反応器(batch reactor)とは、系内(反応器内)に原材料を投入した後に蓋を閉めて、反応が終わるまで物質の流入・流出がない反応器です。このタイプの反応器では、一度に一つの「バッチ」の反応物質が反応器内で反応し、その後で反応器が空にされ、新しいバッチが開始されます。回分反応器は、多様な反応条件を設定することが可能で、化学工業で広く使用されています。
3-2.連続層型反応器(CSTR)
連続槽型反応器(Continuous Stirred Tank Reactor)とは、反応器内に連続して原料の流入・流出があり、かつ反応器内は攪拌されており濃度が均一なため「反応器内の成分濃度=出口成分の濃度」となる反応器です。
CSTR同士をつなぐことができ、多段にすることでPFRに近い特性を持たせることも可能です。この反応器は定常状態を想定することが多く、反応条件を制御しやすいという利点があります。
3-3.流通式反応器(PFR)
管型反応器(Plug Flow Reactor)とは、反応器系内に原料が連続して流入して生成物が出ていく反応器です。CSTRとの違いは系内が攪拌されるわけではないため、PFRでは入口から出口にかけて濃度分布が生じます。
PFRでは入口での濃度が高く反応速度が速いため、単純な1次反応であればCSTRより反応器サイズを小さくすることが可能です。
4.反応設計の基礎
4-1.全体の物質収支式
反応器の設計に必要な基礎方程式は任意の反応成分$${A_{j}}$$に対する物質収支から導けます。化学反応を伴うときの物質収支は物質量の単位で考えるのが便利です。物質収支の図と式を下記に示します。
$$
系への流入 -系からの流出+生成量=系内への蓄積量
$$
$$
F_{in} - F_{out} + G = \frac{dn}{dt}
$$
系内の各点において反応速度が均一であれば、生成速度$${G}$$は反応速度$${r}$$と反応体積$${V}$$から下記で表せます。注意点として$${G}$$、$${r}$$ともに特性成分の生成速度を正に取るため、原料などによる消費反応では記号は負となります。
$$
G=rV
$$
5.反応速度式:回分反応器
5-1.物質収支式の導出
成分Aに対する回分反応器の反応速度式を考えます。なおここでの体積$${V}$$は回分反応器内に存在する反応混合物の体積です(反応器の体積でないことに注意)。
回分反応器では系内(反応器)への流入、流出が無いため$${F_{in}=0, F_{out}=0}$$であり、定容のため$${G=rV}$$となります。よって、全体の物質収支式は下記になります。
$$
\frac{dn_{j}}{dt}=r_{j}V \to\frac{\frac{dn_{j}}{V}}{dt}=\frac{dC_{j}}{dt}=r_{j}
$$
上式を成分Aに対して適用し、反応開始時(t=0)の成分Aの濃度$${C_{A0}}$$として積分すると下記の通りです。$${-r_{A}}$$は成分Aの消失速度となり正の値を持ちます。
$$
t = \int_{C_{A0}}^{C_{A}} \frac{dC_{A}}{r_A}=\int_{C_{A}}^{C_{A0}}\frac{dC_{A}}{-r_A}
$$
反応率は$${C_{A}=C_{A0}(1-x_{A})}$$のため上式に代入すると下記式に変形できます。
$$
t =C_{A0}\int_{0}^{x_{A}}\frac{dx_{A}}{-r_A(x_{A})}
$$
5-2.積分式の導出:定容回分反応器
求めた物質収支式から各反応速度式における積分形を解きました。
$$
G=r_{A}V
$$
よって物質収支式は
6.反応速度式:連続層型反応器(CSTR)
6-1.物質収支式の導出
成分Aに対する連続層型反応器(CSTR)の反応速度式を考えます。
CSTRでは系内への蓄積がないため$${\frac{dn}{dt}=0}$$です。
よって、全体の物質収支式は下記になります。
$$
F_{j0}-F_{j}+r_{j}V=0 \to r_{j}=\frac{( F_{j}-F_{j0})}{V}
$$
空間時間$${\tau=\frac{V}{\nu_0}}$$とし、反応率と濃度の関係式:$${F_A=F_{A0}(1-x_A)}$$、$${F_{A0}=\nu_0C_{A0}}$$から式を変形すると
$$
\tau=\frac{V}{\nu_0}=C_{A0}\frac{x_A}{-r_A}
$$
定容系の場合、体積変化がないため流入量と流出量は等しいため物質収支式$${F_{j0}-F_{j}+r_{j}V=0}$$は下記に変形できます。
$$
\mu_{0}C_{A0}-\mu_{0}C_{A}+r_{A}V=0
$$
$$
\tau=\frac{V}{\nu_0}=\frac{(C_{A0}-C_{A})}{-r_A}
$$
6-2.積分式の導出
追って
7.反応速度式:回分反応器(PFR)
7-1.物質収支式の導出
任意の成分$${A_j}$$に対する回分反応器の反応速度式を考えます。管型反応器(PRF)では、反応器の入口体積$${V}$$および$${V+\Delta V}$$だけ離れた二つの断面で囲まれた微小な体積要素$${\Delta V}$$における物質収支式を考えます。
PRFでは軸方向に連続的な濃度分布が生じており、$${A_j}$$の物質量流量$${F_j}$$は軸方向の位置、つまり反応器の入口からその位置までの反応器体積$${V}$$の関数とみなせます。物質収支式$${F_{in} - F_{out} + G = \frac{dn}{dt}}$$とPFRの条件より式は下記のように書けます。
$$
F_j(V)-[F_j(V)+\frac{dF_j}{dV}\Delta V]+r_j\Delta V = 0
\\ \to r_j = \frac{dF_j}{dV}
\\ \to -r_A=F_{A0}\frac{dx_A}{dV}
$$
【PFRの条件】
流入速度=$${F_j(V)}$$
流出速度=$${F_j(V+\Delta V)}$$
生成速度=$${r_j \Delta V}$$
蓄積速度=$${0}$$
$${-r_A=F_{A0}\frac{dx_A}{dV}}$$を$${(V_{0}, x_{A0})=(0, 0), (V, x_A)=(V, x_A)}$$で積分すると
$$
\frac{V}{dF_{A0}}=\int_{0}^{x_A}\frac{dx_A}{-r_A}
\\ \to \tau=\frac{V}{\nu_0}=C_{A0}\int_{0}^{x_A}\frac{dx_A}{-r_A}
\\ \to \tau=-\int_{C_{A0}}^{C_A}\frac{dC_A}{-r_A}
=\int_{C_A}^{C_{A0}}\frac{dC_A}{-r_A}
$$
7-2.積分式の導出
追って
参考資料
http://seisan.server-shared.com/15/1545-2.pdf
http://www.che.kyutech.ac.jp/chem22/reac06.pdf
あとがき
追って追記
履歴
2023年6月17日:物質収支式まで書き出しー>積分形は追って
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