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心が問われる時代

西友、イトーヨーカ堂という日本の小売業を牽引してきた企業が大きな変わり目にいます。西友は北海道の店舗をイオン北海道に、九州の店舗をイズミに譲渡、イトーヨーカ堂も北海道、東北、信越から撤退、首都圏でも数店舗の閉鎖を進めています。


私が暮らす千葉県船橋市の繁華街の一つ、津田沼。この地には、1977年から1978年のわずか2年間に、パルコ、西友、イトーヨーカドー、丸井、高島屋、ダイエーが立て続けに進出。激しい商戦は「津田沼戦争」と呼ばれました。


そして2003年にはイオンが出店。今日、丸井、髙島屋、ダイエー、パルコ、西友はすでになく、それぞれの跡地には後発の専門店チェーンが入居、イトーヨーカドーもこの秋に店を閉じることになっています。まさに栄枯盛衰、驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢のごとしです。


諸行無常は世の常ですが、どこで道を間違えたのでしょうか。その解答の一つとして、東京大学を卒業後、西武百貨店で小売企業人として出発、西友ストアーを立ち上げ育ててきた上野光平さんの言葉があります。拙著『店はきゃのためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』の倉本長治の死に際して、上野さんが後輩に語ったものです。


「これまでの高度成長の時代には成長自体が一つのメルクマールだったが、これからは違う。よって立つ、精神的基盤が問題になる。商業を支える商人の心が問われる時代になる。商業に真の生き甲斐、働き甲斐を感ずる人たちの輪を広げるためにも、長治先生には長生きしてもらいたかった」


上野さんはその後、商業に携わる後進たちを導く教育者となり、学びと実践の大切さを説きました。次の一文は彼の商人観を表わしています。


「まずインプットが大切。勉強すること、学ぶことだ。そしてインプットがうまくアウトプット(成果)に結びついた人は幸せな人、インプットがアウトプットにつながらなくてもインプットを続ける人を“美しい人”といい、私のもっとも好きな商人の形だ」


暮らしに役立ちたいというビジョンを成すための手段であった成長が目的化し、心を忘れ、学び怠った末に衰退する後輩たちを、上野さんは天上でどのように思うのか。そんなことを考えたニュースでした。


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