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子どもたちのポートレート

その店の2階売場へとつながる傾斜の強い階段を上った壁の一面に、セピア色したポートレートが額装されて並んでいます。ある写真はモノクロな時代物であり、あるものは色褪せたカラー写真ですが、どれも写っているのはその人の幼い頃の笑顔。その人とは、その店の会長はじめスタッフの全員でした。

視聴率を獲りたいなら、子どもと動物は鉄板と言われます。これも顧客ウケ狙いかと思うのは、浅はかで短絡的な思い込み。恥ずかしながら私もそう受け止めた一人ですが、店主の意図はほかにありました。

この店がもっとも大切にするのは、そこで働き、お客様一人ひとりに向き合うスタッフ。彼らの精神的安定とモチベーションがなければ、お客様に心底喜んでいただくことは叶わないことを店主は知っています。その意味で、店はお客様のためにありますが、会社は従業員のためにあります。

たとえば、意見の対立やちょっとした仲違いがあったとしても、相手にも幼くかわいい頃があり、そして今があることを、子供の頃の写真が教えてくれます。写真は、一時的な悪感情を炎天下に置かれた雪だるまのようにスッと溶かしてくれるでしょう。

この店にとって、スタッフどうしは互いを援けあうファミリー。だから、1+1は2ではなく、3にも4にもなっているのでしょう。その秘密を、ポートレートの中の笑顔の子どもたちが教えてくれます。

日本最大級の料理道具街、かっぱ橋の超料理道具店「飯田屋」にそれらはあります。ちょっと覗いてみてください。会長と社長が瓜二つ。店主によると、彼の息子さんも瓜二つだとのことです。つまり、瓜三つなのです。


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