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倉本長治の商人学

「店は客のためにある」

この一文こそ、「昭和の石田梅岩」と言われ、多くの商人に愛された経営指導者、倉本長治の思想の根幹です。これが小売業ばかりではなく、あらゆる事業の使命であることを伝えたいというのが本書執筆の動機です。

では、「店」とは何でしょうか。本来、店は「見世」と書きました。「世」の移り変わりを「見」て、お客様の心の変化を感じ取るのが「店」を商うことの務めだからです。商人は店を通して時代の変化を見抜き、変化に柔軟に対応してきました。「店」とは事業活動のことであり、あなたの仕事そのものです。

ところが、あるとき商人の「見世」の歴史が失われてしまいます。すべてが焼けた戦後の物不足の時代、商人は物を動かすだけで金になり、人の足元を見ては儲けました。頭にあるのは、渇望感を満たそうという欲から生じる儲けだけでした。続く高度経済成長時代には、楽をして儲けるようと効率を性急に求め、いつの間にか商人は世も人も見ようとしなくなったのです。

しかし、どんなことも永遠には続きません。高度経済成長は過去の記憶となり、私たちは激しく移り変わる社会や経済に翻弄され続けています。こうした変化が常にあることは歴史を振り返れば明らかでしょう。情報技術の発達がその動きを加速させているようにも思います。

だからこそ、私たちは世の移り変わりと人を見なければなりません。そのときの座標軸こそ「店は客のためにある」であると、倉本は遺してくれました。

本書『店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる』は、倉本長治の思想をひもとき、その真意を伝えようとする試みです。100のキーフレーズにまとめ、それらに解説を加えました。発売は9月15日ですが、Amazonで予約受付を開始しました。そこでは書影もご覧いただけます。いくつかお伝えしたいこともありますが、それはまた次回。


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