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本日開店の日に戻ろう

創業から13年目、埼玉・北浦和を拠点として地域に5店舗を展開し、「家族の笑顔」をテーマに婦人服、子供服と雑貨を商う「COSUCOJI」へ3年ぶりに訪問。店主の小杉光司さんに会いに行きました。

初めてコスコジを取材したのは創業間もない2009年のこと。それから10年を経て、品揃えは大きく変わりましたが、小杉さんの笑顔も、同店のミッションである「家族の笑顔」もさらに磨きがかかっていることを確認できました。

創業10年目の朝を迎えられるのは1割

中小企業白書によると、個人事業主の廃業率 は創業1年で37.7%、3年で62.4% 、10年ではなんと88.4%。10年生き残るのはたった1割のみ。会社を設立した場合でも、1年で2割、5年後には約半数が廃業(倒産)。そして10年後まで生き残れる企業は36%です。

とりわけ飲食業や小売業、サービス業は開業率、廃業率が共に高い、いわば“多産多死”の業種。多くの起業者が夢を追い、そして夢破れていくのです。再チャレンジが難しい日本にあって、これはゆゆしき問題です。

小杉さんもここまでけっして順風満帆な航海ではなかったことを私は知っています。それでも、彼はぶれることなく大切なものを大切にしつづけた。

店はなぜ滅ぶのか?

商業界創立者の倉本長治は、店と顧客と従業員、そして店主を次のように定義しました。今では、顧客満足、従業員満足を誰もが声高に謳いますが、大平洋戦争敗戦直後の日本において、いえ世界中を見渡しても、それは極めて革新的な提起でした。

店は客のためにあり
店員と共に栄え
店主と共に滅びる

一行目は顧客満足のことであり、これこそ店の目的です。二行目は従業員満足を示しており、関わる人たちを幸せにすることが経営の使命です。

そして三行目、ここでは創業の理念の大切さを説いています。創業時にゼロから何かを生み出そうとした“熱い志”を失ったとき、店はあっけなく滅びるのだと倉本は諌めています。

本日開店の日に戻る

日々の売上げや店の都合に追われているうちに志を忘れてしまわないため、小杉さんが必ずしていることがあります。それはCOSUCOJIの理念をすべての店に張り出すこと。彼はその理由をこう言っています。

「本当に色々なことあるとさ、俺は何のためにこのお店を始めたんだっけなって、よく分からなくなる時あるのね。
そんな時にこの理念を何度も何度も読み返してきたの。今でもそう。立ち返るの。オープンしたあの日に。僕は戻れる。
僕がみんなに理念はちゃんと書いて貼っておこうねって言うのはそんな経験から。人はぶれる」

そして、大切なものを守るために、変わることを小杉さんは恐れませんでした。いえ、恐れたかもしれません。それでも、高い壁を乗り越えてきたのです。

品揃えを変えたのも、一つひとつ丁寧に店を増やしてきたことも、変わろうとしてきた同店の歴史です。そして、その営みに終わりはありません。

多くの商人とご縁をいただいていますが、彼は私にとってとても気になる商人の一人なのです。またお話ししましょう。

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