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八勿の訓

江戸後期の蘭学者、画家の渡辺崋山は、親しい商人から依頼され、その心得として「商人八訓」を遺しました。それについては前回のnoteで紹介していますが、崋山は「八忽の訓」という交渉の心得も遺しています。


勿とは「なかれ」とも読み、「してはいけない」という禁止事項八訓と意味します。


一、面後の情に常を忘れるなかれ
二、眼前の繰廻しに百年の計を忘れるなかれ
三、前面の功を期して後面の費を忘れるなかれ
四、大功は緩にあり 機会は急にありということを忘れるなかれ
五、面は冷なるを欲し 背は暖を欲すると云うを忘れるなかれ
六、挙動を慎み其恒をみらるるなかれ
七、人を欺かんとするものは人に欺かる 不欺は即不欺己ということを忘れるなかれ
八、基立て物従う基は心の実という事を忘れるなかれ


意訳すると次のようになります。


一、直接面談しているときの感情に流され、平常心を忘れるな。
二、眼前のやりくりに、百年の大計を忘れるな。
三、貯金の利益を取ろうとして、後の費用がかかることを忘れるな。
四、大きな功績はゆっくり積み上げていくものだが、チャンスは急に訪れることを忘れるな。
五、表面は冷静でありたいが、心はあたたかであることを忘れるな。
六、行動を謹んで、自分の本心を見破られるな。
七、人をだまそうとする者は人にだまされる。偽らないということは、自己を偽らないことだと忘れるな。
八、基本が立てば、あとはみなそれに従う。基本は誠実であることを忘れるな。


さて、あなたはいくつ実践できているでしょうか。


また、渡辺崋山は「今日一日、決して腹をたつまじくこと」とも遺しています。心が平らかであることが交渉事のみならず、仕事を成し遂げていく上で大切だ説いています。

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