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はがきにこめた友愛

「反省したり改善したりするのに役立つ友だちを君は持っているだろうか。本当の友だちは、正しく生きるときに最も大切なものである」とは、拙著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主ととともに滅びる』の主人公、倉本長治が遺した言葉です。

この言葉のとおり、倉本は多くの商友に囲まれた男でした。今日のようにSNSもメールも、いえファクスすらなかった時代、倉本と全国の商友を結びつけたのは自ら描く一枚の絵はがきでした。多くの原稿を書き、多くの商人に会い、多くの店を訪れ、多くの講演に登壇した倉本なのに、いったいどこにそれだけの時間があったのだろうか思うほど、彼は多くの絵はがきを友に送っています。

一つひとつに季節の花や果物、干支のいきものなどを描き、味わいのある筆致でメッセージをしたためています。いただきものへのお礼であったり、友へのアドバイスであったり、病気見舞いであったりと、送る相手のことを思いやる気持ちが文面から伝わってきます。その心遣いが、多くの商人との絆を強くしたのでしょう。

私の取材の経験からも、お客さんに愛される商人は必ず、相手に気持ちを伝える取り組みをしています。お礼状であったり、ニューズレターであったり、SNSであったりと手段はさまざまですが、彼らはまるで親しい友にそうするように、お客様へメッセージを怠りません。

小さな一枚のはがきに、あなたもお客様への友愛を込めてみませんか。一日一枚でいいではないですか。

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