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商いの道

1922年3月22日、大阪の浄土宗大谷派勝光寺の長女として生まれ、戦前は小学校の臨時教諭として働き、戦後は夫・行雄さんと行商をして生活を支え、1950年に大阪・天神橋筋に一坪半の衣料品店ハトヤを開いた西端春枝さんの自叙伝『縁により縁に生きる』を読み返しました。

1963年には同じ志を持つ3社と共にニチイを創業、西端さんは人事・教育面で活躍しました。本書は、西端さんが生い立ちから、夫・行雄さんとの出会い、ニチイ創業までを語りつつ、商業者としての在り方を綴った名著です。その中から、私が感銘を強く受けた一文を紹介します。

それは西端夫妻が産み育てたハトヤで、朝礼などのたびに唱和され、従業員と共有した「ハトヤの祈り」です。

〈人の心の美しさを商いの道に生かして
ただ一筋にお客様の生活を守り
お客様の生活を豊かにすることを
我等の誇りとよろこびとして
日々の生活に精進いたします〉

このとき私が注目するのが最後の一文の言葉「生活」です。西端さんにとって商いは生活そのものでした。仏教者である西端さんにとっては、商いの中に行があるのではなく、行の中に商いがあるのでした。商いを通じて人間性を磨くことは至極当然なことなのです。

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