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続・こうして店は潰れた

2017年12月6日の全店営業停止から3年近くが過ぎ、2018年8月25日の前作『こうして店は潰れた』からも2年あまりが経った9月11日、山梨・韮崎の地域土着スーパー「やまと」元社長、小林久さんの新著『続・こうして店は潰れた』が刊行されます。

多くの反響を呼んだ前作は6版を重ねたものの、発行元の株式会社商業界が4月2日に倒産。やまとは二度目の沈没を余儀なくされました。しかし、こうして発行元を同文舘出版に移して復活を果たしたのです。

しかも、倒産直後から最近までに小林さんが経験した倒産後のできごとと、前作では書けなかった真実が加わり、さらに臨場感と知恵を増してよみがえりました。そう考えると、新作としての刊行は必然のように思えるのが小林さんの真価です。

私が注目したのは、第8章「なぜ会社は潰れるのか? 倒産社長の悔恨とメッセージ」です。やまとが倒産した理由を5つ挙げて冷静かつ客観的に分析、読む者に己を振り返る基準を示してくれています。

さらに「生き残りを懸ける中小企業経営者の皆さんへ」として、コロナ禍のいま倒産の淵に立とうとしている経営者に、倒産を経験した者だからこそ示せる具体策を披露されています。資金繰りの面で当座のピンチをしのぐ方法に加え、最も大切な本業での売上や利益の獲得のための具体策を、こう記しています。

〈安易に異業種に参入したり、奇抜や新商品ややみくもな広告宣伝に社運を賭けるより、いままで自社を支えてくれた地域や常連さんに向けた行動が最優先だろう。自分が大切にしてきた商圏や顧客こそ、あなたをこの窮地から救ってくれる「救世主」なのだ。(中略)そのためには〈「困っています、助けてください!」とみんなに頼むことだって、恥ずかしくはない。(中略)人は必死に戦っている人を応援する。そして見捨てることはない。〉(263ページ)

そう、小林さん本人こそが必死に戦ってきたし、いまも必死に戦っている人にほかなりません。だから私たちは、彼の生きざまに惹かれ、彼から大切なものを学べるのです。その意味でも、『続・こうして店は潰れた』は初めて触れる人はもちろん、前作に親しんだ人にとっても必読。

行間から「大丈夫、心配ない、潰れてもなんとかなる。なんとかするんだ!」という励ましの声が聞こえてきます。

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