見出し画像

STU48と瀬戸内を巡った日記 暗闇

STU48は1月にデビューシングル『暗闇』をリリースした。

メンバーは歌詞に注目して聴いてくださいとよく言う。歌詞において、私は都会で暮らす窓しか見ていない人であり、そもそも私は海のない土地で育ったので、頑張って想像しながら聴く。私にとって歌詞には、聞こえてくる歌詞と聞こえてこない歌詞があって、『暗闇』はその中間で聞こえてきたり聞こえてこなかったりする。出自より年齢のせいかもしれないが歌詞がすんなりと耳に入ってこない。申し訳ない。歌詞云々よりも、私は2番Aメロのトラックが好きだ。どう好きなのか説明するのが難しいが、その部分の音の響きが好きだ。小さい音だとわかりづらいが、ライブで聴くと重なり合って鳴る楽器の音が波のようでもあって一心に耳を傾けてしまう。

MVの監督は枝優花氏。『少女邂逅』を撮った監督として知っている。タイミングが合わず映画はまだ見ていないが、写真ではない動いているモトーラ世理奈さんを見たいので必ず映画館に行くつもりだ。

アイドルのMVを女性クリエイターが撮ると、兎角女性であることを強調しがちに感じる。本人が望む望まないにかかわらず、女性であることがアピールポイントになっている場合もある。それによってバイアスがかかった見方になってしまうのはいつも申し訳ないと思っている。

『暗闇』のMVを初めて見たとき、誰が撮ったか私は知らなかった。YouTubeのクレジットを読んで、どこかで見かけた名前だと思ったが『少女邂逅』の監督だと気付くには少し時間がかかった。枝氏の普段の作風を知らないので間違った偏見かもしれないが、MVからは作家性よりもSTU48のグループとしての雰囲気を大切にしているように感じられた。

私は最近のアイドルMVにおける曲の前後のドラマ部分が本当に苦手で、その苦手なMVがことごとく女性監督によるものなのが不思議で、女性が作ったから苦手になりやすいのか、たまたま苦手なのが女性なだけなのかわからずにいる。どれも曲の部分の映像は素晴らしいのに、前後のドラマのおかげで見るのがつらくなってしまう。映像作家としてドラマパートを作りたくなってしまうのか、そういうリクエストがあるのか、はたまた期待されていると思い込んで作ってしまうのか、本当のところはわからない。

それが『暗闇』ではドラマは曲の中に収められ、映像も奇をてらうことなくあるがままを映しているように感じられた。作家性が抑えられ、作った人が誰であるかという部分が気にならないMVだった。いいグラビアと同じで、まず対象の良さが前面に出ている。『瀬戸内の声』のようなあからさまな観光プロモーション映像でもなく、曲の世界を忠実に描いたMVは、牧歌的雰囲気のあるグループにとても似合っていた。

ともすればセンセーショナルな作品の陰に埋もれてしまいがちでもある。しかしSTU48はこれでいいと思う。丁寧にグループの世界を作り上げていってくれたらと願っている。

あと書き記さねばならないことは、『暗闇』はMVも良いが、初回盤CDのブックレットも素晴らしいということだ。初回盤が瀬戸内7県分の7種あることにまず驚きだが、7種すべてのブックレットの中身が異なっていてすべて最高なのだ。蛇腹のブックレットには隙間なく写真が敷き詰められており、STUメンバーの素の表情が瀬戸内の風景と共に綴られている。写ルンですで撮ったらしい、タグ付けされていない青春がそこには写っていて、この時間がずっと続けばいいのにと祈りたくなるぐらいの良さがある。STU48に興味がある人にまず何を勧めるかと問われたら、私は『暗闇』のブックレット全種を勧める。それぐらい好きで、好きすぎて私は1冊にまとめてしまった。

続く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?