54歳、癌になって、おばあちゃんになって、再婚する私へ

私はバツイチ子持ちで、自立した3人の娘がいます。
長女と末は既に結婚していて、次女は今年結婚予定です。
末っ子が昨年出産し、可愛い孫が一人います。

子育てがひと段落した頃、第2の人生として再婚することは珍しくないですが、数年前まで私は再婚に興味ありませんでした。むしろ再び結婚するなど嫌がっていたほどです。
そんな私が結婚することになったのは、癌がきっかけでした。

前回の夫と離婚したのは下の子がまだ小学生のころです。
私は専業主婦で気ままに、家庭の経済などを考えず、妻、母として十数年過ごしてきました。
子育ては楽しかったです。子供を通して友人にも恵まれ、日々生き生きとしていました。
離婚の原因は家庭の経済が崩壊していたためですが、元を辿れば夫婦仲が崩壊していたからです。家庭の経済崩壊は夫の糖尿病が主なきっかけでした。

夫の健康状態については、この数年前に夫婦仲が悪化してからしばらくお互い干渉することなく過ごしていたため気づきませんでした。そもそも前から私は妻、母として、家庭のために食生活など気を使い一生懸命家事をこなしていましたが、夫はそれを受け入れてくれませんでした。夫は重度の疾患で車椅子生活となり、高額の医療費や、家をバリアフリーにする費用などかかりました。それらは苦しい家計から捻出することとなり、気づけば家計が苦しくなっていき、結果離婚となりました。

離婚後はパートとしてフルタイムで働きました。アパレルの接客業で、数十年働くことから離れていた私にとってストレスが溜まるものでした。そんな中、子供たちはそれなりに素直に成長してくれていたと思います。

子供が自立して、末っ子の結婚式が終わった後、前より気になっていた喉の膨らみを検査しに行ったところ、甲状腺に癌が発見されました。

私は過去に、不健康になっていく元夫について、自業自得と毛嫌いしていました。それは離婚後も変わらず、彼の訃報を聞いたときは気の毒にも思いませんでした。この時は確かに、自分自身の健康状態について過信していました。だからまさか自分が癌になるとは、しかも発見したときには既に末期であるとは思いもしませんでした。

甲状腺癌について、もちろん名前は知っていましたが実態は知りませんでした。癌を申告されてから進行状況を精密に検査する期間があったため、私はその間ネットで調べました。そこでは、甲状腺癌は癌という病気の中で比較的よくあるものであり、寿命死ぬまで気付かない人がいるほどの軽度なものだと見ました。
しかし精密検査の結果はそんな楽観的な考え方ではどうやらダメらしいというもので、全身に転移していると言われました。

お酒も好きで、昔はタバコもやっていました。でも全然健康で、よほど行いが悪くなければ大病を患うわけがないと思っていました。そんな私が癌だらけの身体になって、体を大事にすることを少し真剣に考えるようになりました。

色々、体操などを試みた中で、朝早起きし、毎朝6時半からNHKで流れているラジオ体操をする習慣がつきました。
早起きともなると、冬の寒い期間は布団から出ることが第一の試練となっていきます。これを乗り越えて、着替えが済んだ頃から、起きて良かったぁ!と嬉しい気分になります。
癌を発見し、パートを辞める1年前の生活と比べると、朝のルーティンがまるで違います。出勤まで、起床して、軽く家事を済ませ、朝風呂して、朝食を適当に済ませる。何事こ手抜きで簡単に済まし、空いた時間はスマホゲームに夢中でした。

そんな生活から、早起きしてラジオ体操をするというのも大きな変化でした。一歩進むと、また一歩、また一歩と進みたくなるもので、自分を大切にする一環で、身体を大事にしようと、食生活、運動するなど生活を見直して過ごそうとしています。

もし自分ひとりであれば、こんな変化がなかったでしょう。昔から自分には子供がいましたが、それは親子としてでした。同じ立場として、パートナーとして一緒にいる人がいたのは大きかったと思います。いざとなればひとりで生きていけると思っていた自分から、誰かの支えがどれだけ大切かを知り変わろうと思えました。だから、癌と向き合い、これからの人生と向き合った中で、私はこの人との再婚を決意しました。

そしてもう一つ、新たに、いや改めて始めた趣味があります。仕事を辞め専業主婦のような生活を送り、キッチンにいる時間が長くなってきている中で、コロナ禍の巣篭もり生活もあってお菓子作りに手を出し始めました。
若い頃、子供達のため色々と作っていましたが、自分が甘いものを食べないためやめてしまっていた趣味。最近何となく作り始めてみて、改めてその面白さに夢中になりました。
専業主婦時代、母親同士のコミュニティの一環で子育ての片手間に勉強していたお菓子づくりを、時間に余裕ができた今、楽しんでできています。

思い返せば、このように前回の結婚の経験もあり、第2の人生とも呼べる今、楽しく生活できているような気がします。癌になる前は、特に趣味もなく、スポーツは観賞のみで、好きでもない仕事をできる範囲でこなし、楽しみはたまに旅行へ行ったり贅沢な食事をするくらいでした。一生懸命とか、夢中になるとか、無縁な生活。子育てを終えた50歳過ぎのおばさんはお気楽に暮らせました。
そんな私の生活が大きく変わった今、小さな孫が、私のケーキでずーっと喜んでくれたら嬉しいと思うのです。この先ずっと、そんな優しい気持ちでいたいものです。

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