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【グルーヴとは…】

結構前の話だが、久しぶりに地元でのライブイヴェントに参加させていただきました。
と言うか、洋楽スタンダードのサポート依頼が来たので受けたんですが…。
中々、最近のローカルライブのシステムが理解できず、面食らう場面も多々有ったんですが、自分もローカルのミュージシャンとして活動しているわけで、この隔世感はなんだ?と。「昔はこんなんじゃなかった〜!」見たいなオヤジの叫びを繰り返しても仕方がないので、まぁ長い物に巻かれながら「反骨こそがロックじゃないのか?」見たいな厨二病的感傷に苛まれつつ、粛々と演奏したわけですが…。
その辺の話はまた別な機会に置いといて…。w
 
その日の打ち上げで、洋楽ロックのカヴァーをやるに当たって色んな話が出たんですが、其の中で「グルーヴ」の話が出て、ちょっとコレは書いた方が良いなと思うことが有ったので書き残しておきます。
 
今の日本のロックのルーツを辿ると、全てが50〜70年代の洋楽ロックやブルース、R&B(宇多田じゃない)にたどり着くわけです。
これは、今の日本のロックの基礎を作った世代が洋楽ロック世代だからと言う理由に尽きるんですが、御存知の通り、洋楽ロックのグルーヴと、日本のロックのグルーヴは違うわけですが、洋楽ロックのカヴァーをやるに当たって「なんで違うの?」って部分と「何がマズイの?」って部分と、最終的には「どうすりゃいいの?」見たいな所までを考察してみたい。

◆なんで違うの? 

違う原因は多々ある訳ですが、其の中でも一番大きな要素は「言葉の問題」だと思います。
そもそものロック発祥の地は英語圏なので、日常会話に英語を使う訳です。
勿論、そのままロックも英語で作られ、英語で歌われているわけです。
それを手本に日本人が洋楽ロックを真似たのが日本のロックの始まりであるので、つまりは模倣なんですよね。
日本のロックの先人たちは、その洋楽ロックの模倣を繰り返して、どんどんホンモノに近づこうと努力します。
しかし、そもそも日本人は日本語を話す民族であり、日本語の歌を歌う訳ですね。
当然の如く、言葉のイントネーションがリズムを作りますので、幾ら模倣を繰り返しても、いやむしろ繰り返すほど、当り前に英語のロックとは異質なものが出来上がります。
それが定着して「J-ROCK」なるジャンルを作り上げ、結果洋楽ロックと日本のロックのグルーヴの違いを生み出したんでしょう。
 
人の言語中枢は3〜5歳位までに発達し、それを過ぎるとそれは固定され、新しい言語を受け付けづらく成ると言われています。
我々日本人は、日本語を話す親に育てられ、日本の音楽、すなわち歌謡曲を聞いて育ってます。
お陰様で5歳を過ぎた頃には、日本語しか受け付けなくなっており、日本語のイントネーションでリズム感も形成されてしまっています。
「私は違う!」という人も居ますが、そう言う人はどちらかと言えば少数派で、大半の人は5歳を過ぎて違う言語をネイティブとして習得することは無いでしょう。
しかし、両親が国際結婚であるとか、海外で生まれ育って自宅では日本語だが外では英語みたいな環境で、日本語と英語が混在する環境で育った人は、どちらの言語に対してもネイティブなんですよね。

対して生まれが何処だろうと、オオカミ少年(野生児)だと言語を習得する時期、つまり生まれてから3〜5歳位までの期間を過ぎてしまえば、その後に言語を習得することが困難に成ることも判っています。
この使用言語によるリズムの違いは物凄く影響してくる訳です。

元々ロックは英語圏で発達した音楽でその表現には英語が使われてました。
すなわち楽曲全体が英語のイントネーションに最適化されているわけです。
その英語のイントネーションがもたらすグルーヴがロックに限らず洋楽全般に流れるグルーヴなんですね。
其の洋楽全般の中でロックと言われるジャンルが、ある時期を境に世界に拡散され、それぞれの国のロックとして根付いた訳ですが、じゃロックじゃ無い洋楽って?と言って聞いてみると、明らかに違うと感じれるのは、クラシック位じゃないでしょうか?

大雑把に言えば、マイルス・デイビスと、ジェームズ・ブラウンのグルーヴの違いや、マライア・キャリーとエアロスミスのグルーヴの違いを明確に説明できる人は殆ど居ないんじゃないかと思うわけです。
つまりそこには、英語圏の人が持つ英語のイントネーションによるグルーヴが共通項として存在するから、それらの違いを明確にすることなんかほぼ不可能なんです。
だから、洋楽は何を聞いても「ロック」に聞こえる日本人は多いと思うのですね。
 
まぁ、長々と書きましたが、「言葉の問題」が一番大きな原因だと言うことは解って貰えたでしょうか?

◆何がマズイの?

厳密にマズイ訳じゃないんですが、正直カッコ悪い。w
洋楽のカヴァーやってるのにグルーヴが演歌とかカッコ悪いでしょ?
例えば、「ホテル・カリフォルニア」を演奏するのに、ノリが「津軽海峡・冬景色」だったり、「天城越え」だったりすると、微妙だと思いません?
グルーヴって言うのはそういう部分の話なんですね。
「津軽海峡・冬景色」や「天城越え」は世代を超えた名曲として若い人でも知ってる人は多いと思いますし、あの曲を絶賛こそすれ批判する意見は殆ど聞きません。
それだけ名曲なんですが、その石川さゆりグルーヴでイーグルスを演ってもカッコ悪いでしょう?
それを「格好良い!」と思う人は、ちょっとロック向きじゃ無いと思います。w
 
では、イーグルスをカッコ良く演るにはどうしたら良いか?少なくとも演歌ノリじゃダメ。
よりソレらしく演るためのリズム感(つまりグルーヴ)が必要で、ギタリストなら誰もが、ジョー・ウォルシュやドン・フェルダーの様にと思うはずです。
つまり、「よりソレらしく」するために一番必要なのが「グルーヴ」なんですよね。

◆どうすりゃいいの?

まぁ結論としては「明確な答えは無い」と最初に言っておきましょう。
しかし、何らかの方法は幾つかあります。
 
英語圏の人たちは黙ってても使用言語が英語ですから、自然と英語のグルーヴが発生します。
そこにロックという要素が加わって、ロックミュージックの、あのグルーヴが生成される訳ですね。
まぁ、尤も音楽的な才能が無けりゃ英語でも日本語でもグルーヴなんて出せませんけど…。w

で、我々日本人は英語に疎い分、英語のネイティブスピーカーを構成する要素を分析して研究・習得するしか無いわけです。
それでも完璧とはいえませんが、イイ線まで持っていくことは可能です。
恐らく、日本中のロックの先生方がそれぞれの門下生に対してどのように伝授すべきかを悩んでいると思いますが、KIYA-HEN 式として企業秘密大公開します。w

良く、「1拍のなんちゃら〜」みたいな話を聞きます。
「3拍目のウラを溜めて…」とか、「4拍目のウラから突っ込んで…」とかそういう話。
まぁ、説明としてはそうなるんでしょうけど、じゃ、ジミ・ヘンドリックスがそんなこと考えながらウッドストックを演ったのか?とか、ブーツィー・コリンズがそんなこと考えながらベースソロ弾くのか?とか考えると、それは誰の目にも明らかに「NO!」でしょう。
そう云うのは、知識としては存在できますけど、実際のステージではあまり重要じゃありません。

そこで、KIYA-HEN 式では、拍ではなくて「小節」に重きを置きます。
拍単位で考えると、そこにグルーヴを織り込むのはむしろ難しくなります。
なぜなら、グルーヴってのは、一定の拍数の中に存在するからです。
日本人的に一番洋楽のグルーヴを視覚的に、明確に表しているのは、小学校の頃に習ったであろう、指揮者の指揮棒の振り方に其の秘密があります。

思い出して下さい。
なんか、変な図形を描いているハズです。
例えば、4/4拍子の場合、正確に刻む為には、正方形を描くのが一番正確な訳ですが、なぜか、正方形は描いていません。

Fig.1

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Fig.1を見てもらうと分かる通り、「山」型になっています。
更によく見ると、「1」の長さと「2」の長さと、「3」の長さと、「4」の長さが全部バラバラです。
これが「リズム」なんですね。
日本のロックがカッコ悪くてつまらない最大の理由は、この4つを全部均等にすることで、「正確です」と言って満足してしまう所にあります。
もし本当に正確さを求めるなら、指揮棒はこんな振り方しないで正方形に成るように振るべきなんですね。
にも関わらず、なぜこの形か?
日本人的な「正確さ」はそもそも望まれてないからです。

音楽はロックに限らず抑揚を表現しそれを伝える所に醍醐味があるわけで、それを機械で図ったようなリズムで演奏することで抑揚を拒否してしまっている。
だから日本人はエレクトリカルとかテクノポップみたいなジャンルを作り出すことができたんだとは思いますが、今は其の話じゃない。w

Fig.1に戻ります。
更に見ると、4拍の中で3拍目と4拍目がかなり間延びしてます。
これはどういうことか?
其の秘密は言葉にあるんですね。
現代音楽の始祖は9世紀のグレゴリオ聖歌に有り、それが16世紀になってイギリスの和音が合体して、現在の形に成ったと言われている。
つまり現代の音楽って、基本的に英語で伝わってるわけだ。
では英語での発音を考えてみる。
日本語では、1,2,3,4(イチ・ニイ・サン・シイ)と数える事が多い。
英語では、one two three four(ワン・トゥ・スリー・フォー)になる。
日本語ではそれぞれの拍の長さが一定に近いが、英語だと、明らかに1,2よりも3,4が間延びするわけだ。
つまり、3、4拍目の間延び加減がグルーヴの肝になる。
もっと突っ込むならば、2拍目を短くすることで辻褄を合わせている事にも成る。
これを指揮棒の振り方で表しているわけです。
これが理解できれば、それだけで随分とグルーヴィーなリズムに成っているはずです。

更に言えば、実際には、one and two and three and four and ... とカウントします。
これはつまり、and が裏拍を表してるんですよね。
なので、英語圏のミュージシャンは日本人よりもグルーヴィーに聞こえるわけです。

この感覚を成人してから習得するには、音楽を聞く時はいつでもリズムを取ると言う事が大切です。
それも、タンタンタンと単調に「テンポ」を追いかけるのではなく、心の中で指揮棒を振って、そのそれぞれの拍の間延び加減を考えながら取るわけです。
現実にはソレだけじゃありませんが、そこから先はKIYA-HEN ギター教室で教えている企業秘密ですので、ここでは割愛します。w
ここでは、拍単位で正確なテンポが取れても、そこに洋楽を象徴するようなグルーヴは無いということが理解できればOKです。

◆まとめ

まぁ、演歌のグルーヴで洋楽ロックをやろうとしてもカッコ悪いだけ。
洋楽ロックのカッコよさを出すにはグルーヴは必須であり、其の習得は日本人には険しい道であることが理解できたと思う。
なので、現代はJ-ROCKとか言う、日本人向けのロックミュージックが発達したわけです。
そんな時代にあえて洋楽ロックのカヴァーをやろうとするならば、やはりここは避けて通れない部分なわけです。

時代が変わり、帰国子女の様なネイティブ並の英語スピーカーも増えて、日本人もどんどんグルーバル化していますから、この話が必ずしも当てはまるとは思いませんが、日本人としてのアイデンティティを固持するためにも「違い」は明確に理解した方が良いと思います。

実はキヤヘンは、この辺の話を「知識」としてではなく、幼い頃からの「感覚」として持っています。
知識が感覚になるには長い年月が必要ですから、ロックを極めたい!と思うならば、長い年月を諦めないで楽しむことが重要でしょうね。
(^^)

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