トングの可能性

トングが折れた。

私などがわざわざ言わなくても、もう既に、誰かが二億回ぐらい指摘していることだと思うけど、トングって便利だ。トングの便利さを一度味わうと、もう、なんでもかんでもトングでつかむ。麺類、肉類、野菜類、パンでもなんでもトングでつかむ。

で、酷使した結果、折れた。
折れたとき、トングって折れるの?と思った。
食材をつかむ方と逆側の、繋がっている方が、真っ二つに折れた。

もともとは、義母が脳出血で倒れる以前に愛用していた品だから、少なくとも、軽く10年以上は使っていることになる。だから、経年劣化の結果だと言いたいが、ロールパンをつかむときに、そもそもの可動域を無視して無理やりひろげて使ったりしていたから、寿命を少し縮めてしまったということはあるかもしれない。

無いなら無いで、菜箸やらで代用できるのだけど、「トング、トング…あ、折れたんだった。」というくだりを一人で何度も繰り返しているのも不毛なので、新しいものを買った。これが、とてもいい。

別に、こだわりのトングを買ったわけではなく、食材を買い出しにいったついでに思い出して、スーパーの一角にある台所用品のコーナーで見繕った、ごくありふれたトングだ。折れたものは、トングの先のはさむ部分が、持ち手よりひとまわり幅があるぐらいだったのが、今度のものはその倍以上幅がある。野菜をいっしょくたに煮込んだうどんなんかを挟むとき、麺も野菜もガッパガッパと挟むことができる。うれしくて、夫に、めっちゃ挟めるよ、と報告したぐらいだ。

何をトングに、そんなにはしゃいでいるのかと思うが、例えば菜箸でうどんを掴みそこねて、つるん、と、汁に落下させてしまったときに飛び散る飛沫だったり、汁の中から野菜だけをとりたいのだけど、お玉だと汁もなみなみすくってしまうし、菜箸だと一回一回時間がかかるし、という事態を解決してくれるのだ。調理中の、ちょっとしたつまずきがないというのは、とても気分が良い。道具、大事。

と、ごく当たり前の結論に至ったわけだけど、それがどんなに当たり前のことでも、何度も繰り返し言われてきた知見を、飽きもせず何度も繰り返すことは、わりかし大事なことだと思っている。

ここで書いたことが果たして「知見」なのかどうかは置いておく。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?