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ARK:Survival Evlovedの話

 ARKは面白いゲームだ。恐竜好きにはたまらん。というか、生物のテイムを主軸に置いたサバイバルアクションゲームが結局ARKくらいしかないんだよなって話でもある。パルワールドに期待だ。
 ARKのストーリーの話がしたい。ARKのストーリーは、マップのそこかしこに落っこちてるノートを拾うことで断片的に読み取ることができるものだ。クトゥルフのクローズドシナリオで、先達の日記が落ちていることがあるけど、あれに近い。

 というわけで、エドモンド・ロックウェルの話をする。

 ロックウェルは19世紀イギリスの科学者だ。目が覚めたら『島』にいて、『島』は古代の生物たちが我が物顔で闊歩する不思議な場所だった。島にはロックウェル以外にも様々な人間がいたが、生まれた時代も生まれた場所もみなバラバラだった。
 温厚な老紳士であり、しかも優れた知見を多く持っているロックウェルは、『島』の人間から敬意を集めていた。『島』の中では、複数のグループが争うこともあったが、彼はそこからは距離を置いていた。
 ARKのストーリーに登場する人物の中で、主人公格にあたるのは21世紀の動物学者であるヘレナだ。ロックウェルは、このヘレナにとっても良き相談相手であり、時代こそ違えど同じ科学者として尊敬されていた。

 ただ、いろいろあって事情が変わっていく。
 『島』の洞窟の奥底には、明らかに人工的な空間があり、この『島』が何者かによって作られた場所であると、ロックウェルとヘレナは仮説を立てる。その後、二人はそれぞれの研究のため、別々に行動をするようになるのだが、ロックウェルは洞窟の最深部で見つけた『アーティファクト』に夢中になっていった。
 この『アーティファクト』を構成する未知の物質を、ロックウェルは『エドモンジウム』と名付け、さらに研究にのめり込んでいく。まぁ、お察しの通り、この物質はヤバい物質だ。レネゲイドみたいなもんだと思ってもらえればいい。
 これは語られてはいないが、ロックウェルが未知の物質にのめり込んでいった背景には、焦りがあったのだと思う。彼と接していたヘレナは良識的な女性だが、ロックウェルからすれば未来の人物で、彼女に知識の訂正をされることもたびたびあったはずだ。自分を「先進的な人物」だと思っていたロックウェルにとっては、ガマンできなかったのではないか。しかも、彼女はオーストラリアの出身、19世紀のイギリス人から見れば、島流しにあった罪人の子孫なのである。

 ロックウェルは、些細な行き違いや誤解から、ヘレナが自分を出し抜いて未知の物質の研究を進めようとしていると思い込むようになり、表面上は老紳士として接するものの、内心は猜疑心に蝕まれていった。

 『島』が宇宙空間に浮かぶコロニーであり、他にも『島』のようなコロニーがいくつもあると判明すると、ヘレナとロックウェルはコロニー間の転送装置を使用して『島』を脱出。別のコロニーへと移動する。
 それを何度か繰り返した後、二人は崩壊したコロニーへとたどり着く。

 このコロニーも、他のコロニーと同じく先駆者たちがいた。30世紀の軍人や技術者といった集団である。超未来人だ。しかも彼らは、件の未知の物質の取り扱い方を、最初から知っていて、それを使ってアイアンマンのスーツみたいな装備を作ったりできていた。
 ロックウェルからすれば悔しいことこの上ない話だ。彼は技術者チームに入れてもらうが、当然、モノを知らない原始人扱いである。未来人たちも優しくは接してくれたのだろうが、ロックウェルの自尊心は傷つきっぱなしだ。

 でもロックウェルはすごい奴だった。未来の知識を吸収し、やがては技術者チームと比べて遜色ない発明をして周囲を見返す。
 彼は強化スーツなどの装備ではなく、エドモンジウムを体内に直接取り込めば、より強力な力を得られると持論を提唱するが、未来人からそれは危険だと言われ止められてしまう。
 また見下されていると感じたロックウェルは、未来人たちに隠れて、持論の研究を進める。ダミーの研究で未来人たちの気を引くことも忘れなかった。片手間でそういう研究ができちゃうのがロックウェルのすごいところだ。

 そのあとどうなったか。まぁお察しの通りだ。
 ロックウェルは、自分の肉体にエドモンジウムを直接注射し、怪物になる。未来人たちの集落に甚大な被害を出す。
 ヘレナや未来人たちがコロニーを脱出した後も、ロックウェルはコロニーの最下層に残り、ゲーム上でプレイヤーと戦うことになる。

 エドモンド・ロックウェルは、確かに人間的にちょっとアレなところがあって、それゆえに彼は怪物になった。ただの偏執的なジジイだ。
 でも、僕はこのロックウェルのことが妙に嫌いになれない。ヘレナからしても、彼は本当に良き友人であり、良き師であった。

 このロックウェルの魅力を言語化するのはちょっと難しい。

 たぶん、19世紀のイギリスでは、ロックウェルは温厚で知的な老紳士としてその一生を終えられたはずなのだ。
 そうでなくとも、1000年の技術格差を一瞬で埋められるほどの天才であり、少し何かが違っていれば、頼れる味方でいてくれた気もする。ロックウェルが有能な人間だったのは間違いなくて、彼の遺した料理のレシピは、ゲーム上でプレイヤーがサバイバルするために役立っている。崩壊したコロニーで彼が開発したというアイテムも、ダミーの研究も、ゲームを生き延びるためには不可欠なものだ。

 似たような類型の人として、「宇宙大帝ゴッドシグマ」の風見博士がいる。ハガレンのタッカーも近いんだけど、ロックウェルや風見博士がタッカーと違うのは、マジで有能であるにもかかわらず、周囲の環境により心を荒ませたところかなと思う。
 個人的には、「本当に有能な人なのにどうして……」と思っちゃうところに、この手のキャラの悲哀があるんじゃないかなと思った。

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