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オパビニアとミ=ゴは親戚説


Twitterのユーザーネームを変えるのが趣味です。

決して『板酒』という本名が気に入っていないわけではありません(むしろ結構好き)。特にこれといった意味はなく、理由を尋ねられたら「何となく……」と答えることができない不思議な趣味です。
頻繁かつ気軽に自分の名称を変えるなんて現実ではなかなかできないことなので、その感覚が新鮮なのかもしれません。

最近は「ディッキンソニア」という古代生物の名前を拝借して使っています。


2022 11/26現在


このディッキンソニアというのがどんな生き物だったかというと、


ディッキンソニア(学名:Dickinsonia)は、先カンブリア時代エディアカラ紀に海中に生息していた生物の一種である。 オーストラリアで発見された、いわゆるエディアカラ生物群の代表的なもの。約6億年前に生息していた。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%82%A2



どうやらオーストラリア近辺の海で暮らしていたようです。ちなみに、エディアカラ生物群というのはオーストラリアのエディアカラという場所で発見される生物の化石群で、いずれの生物も固い骨格を持たないことを特徴としている、とありました(これもwikipedia調べ)。

ディッキンソニアもぐにゃぐにゃしながら海を漂っていたんですかね。



それでは、現代に残った化石をもとに製作されたというディッキンソニアの生態復元想像図を見てみると、


出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%82%A2


気持ち悪い。


というのが第一印象でした。
ひだがより集まったような見た目といい、金属じみた光沢のある体色といい、こちらの嫌悪感を絶妙に誘ってくる姿をしています。
こんな生物が海底をうぞうぞ動き回っていたかと思うと、思わず寒気を覚えてしまいました。しかも体長は一メートル近くあったそうです。広げた新聞紙くらいある……。

現代の美醜の感覚で古代生物の見た目をどうこう言うなど申し訳ない気持ちもあるのですが、嫌悪感はどうしても拭えませんでした。
多分ディッキンソニアたちも、人間どもの姿を見たら「なんて気持ち悪い生き物なんだ」とひだの表面に鳥肌を立てていたと思うので、おあいこということにしてください。ごめんなさい。


それで、ディッキンソニアの他にもいろんな古代生物の復元図を見てみたのですが、


https://www.pinterest.jp/gyoshonin/%E5%8F%A4%E4%BB%A3%E7%94%9F%E7%89%A9/




どれも微妙に気持ち悪いんですよね。

いや、これは「気持ち悪い」とはまた違った感覚なのかもしれません。


ディッキンソニアもアノマロカリスもオパビニアもハルキゲニアもオットイアも、人間のそれとは遠くかけ離れた見た目をしています。人間どころか、(私が知っている限りの)地球上のどの生物とも異なっています。
彼らが生きていたのは、ヒトが誕生する何億年も前の出来事なので、当たり前ですよね。
彼らの存在は、人間が作り上げてきた常識とか文明といった概念の埒外のところにあるといえます。

人間は「自分の理解の及ばないもの」に対して本能的に忌避感を覚えるそうですが、古代生物はそれの最たるものなのではないでしょうか。

ここまで考えたところで、ふと一つの考えに思い至りました。
人智を超えた見た目を持ち、見るだけで嫌悪感や忌避感を呼び起こさせ、人間の常識を不愉快に逆なでしていく存在といえば……



そう、神話生物だ!!!




ミ=ゴ(神話生物)とオパビニア(古代生物)
遠い親戚と言われてもまあ納得できるくらい
似てる


神話生物というのは、クトゥルフ神話という架空の神話体系、創作群の中に登場してくる神様や、それに仕える様々な種族の総称です。
この神様は大きく二つの分類にわかれています。一つが≪旧支配者≫、二つが≪旧神≫です。そしてこの≪旧支配者≫と彼らに仕える種族は、ほとんど全てグロテスクかつ悍ましい見た目をしています。

例をあげると、

ラーン=テゴス
大いなるラーン=テゴスはロマールが誕生するよりも遥か以前に滅亡した、伝説上の忘れ去られた極地文明の狂暴な生きのこりであり、もともとは太陽系の果のユゴス星から到来した。(中略)うずくまる悪意ある存在で、身長六フィート、六本の脚と球状の胴を有し、泡を思わせる頭部には、三つの目、長い鼻、ふくれあがった鰓、すさまじい蛇のような吸引管があり、上肢には蟹に似た鋏が備わっている。
出典:「暗黒神話体系シリーズ クトゥルー1」 青心社 H・P・ラヴクラフト他 大瀧啓裕編

イタカ
イタカは、永劫の太古に名状しがたきものハスターを助けるために呼びだされ、ハスターの意志にしたがう風の精である。(中略)崇拝者以外の者が見れば死が訪れる。人間の目には、空を背景にした黒い輪郭、怖ろしい獣の輪郭、目があるべきところには鮮紅色の星がふたつ輝く、人間の顔の戯画化としてうつる。
出典:同上


脚が六本で胴が球状だったり、崇拝者以外がみたら即死だったり、想像するだけで恐ろしいですよね。ほかの神話生物もこんなのばっかりです。大抵のクトゥルフ神話は、こういう悍ましい神に人間が振り回される話が主になっています(もちろんそういう内容ではない話もあります)。


クトゥルフ神話はホラー小説に分類されます。
ラーン=テゴスの説明に「太陽系の果のユゴス星から到来」とあるように、クトゥルフ神話は地球を飛び出して遥か宇宙のかなたまでその舞台を広げているのですが、クトゥルフ神話の恐ろしさは「宇宙的恐怖(コズミックホラー)」という言葉で表現されたりします。


この独特の神話の創始者であるラヴクラフトは、

人間一般のならわし、主張、感情が、広大な宇宙全体においては何の意味も有効性も持たないという根本的な大前提

がクトゥルフ神話にはあると述べています。


個人的に考えるクトゥルフ神話の恐怖の肝は、これまで自分が信じていた常識、世界の土台が覆され、すべてがとるに足らないものだと知った時の絶望と孤独感にあります。自分の常識の埒外にあることわりを知ってしまった時に感じる恐怖です。

宇宙の中では矮小な地球のその表面の、20万年という瞬きのような僅かな時間に存在している人間。



クトゥルフ神話は何億光年という膨大な空間を目の前にした時の恐怖かもしれませんが、古代生物を見たときに感じる恐怖は、何億年と言う果てしない時間を突き付けられた時の恐怖です。


微妙に違えど、この二つの恐怖は我々がいかに儚い存在であるかを伝えてきます。


だからと言って、古代生物は神話生物だ!と主張するのはかなり論が飛躍しすぎの感が否めません。やっぱり親戚くらいの近さですかね。 
一応、『狂気の山脈にて』というラヴクラフの著作は古生物学的志向が結構強めなので、神話生物を作るにあたり作者が古生物から何らかのインスピレーションを受けたという話もありえなくはなさそうですけど、そこまで詳しくないので断言できません。

しかし、自分が暮らしているこの地球に、架空のホラー小説に登場する存在じみた生き物がいたかと思うと、どこか不思議な気持ちになりますよね。ならない?なってほしい。私はなります。


リアルでSAN値を減らしたい方は、枕の下に古代生物の図鑑を入れて寝るといいかもしれません。



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