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משל קצר על תצוגה והעברת רצון


 ――大体、小がぁがぁの伝えるヒトビトの話なんか見ている時間はありませんよ。お話の中のヒトに本気で話しかけるヒトっておかしいでしょう?
 中がぁがぁの登場人は、責任を持ってお芝居をしています。――

 中がぁがぁは以前、そんな風に笑っていた。
偏方向種は自分で考えて話すことはできないはずなのに、それは確かに中がぁがぁの言葉だったのだ。いつのころからか、中がぁがぁは暇さえあれば双方向種の悪口を言うようになっていた。
 私がコドモのころに好きだった画芝居は特にひどかった。古がぁがぁや中がぁがぁのスレートに映された物語は、素敵な画がまる生きているように動いていて、歌も音も本当に凝っていた。
 ――現実と区別がついていないんですよ。中がぁがぁの登場人が小がぁがぁなんかに話をすると本気で思っているのですか?――
 けれども偏方向種達は、それを見に来るヒトビトから餌をもらい終えるとすぐに馬鹿にし始めるのだ。
 やがて双方向種の飼い手は、ひどいあだ名で笑われるようになった。画芝居の登場人やパズルの駒を好んだり、それで遊ぶヒトや有名になるヒト、つまり中がぁがぁの亜種と小がぁがぁの飼い手だけが、偏方向種から笑われるようになっていったのだ。
 今とは違い、がぁがぁを飼わないおおぜいのヒトビトも、馬鹿にされるのを嫌がって一緒に笑った。

 ――画芝居狂は本当に気持ち悪い。――

 がぁがぁドリ達はヒトビトの幸せのためにいるのだと思っていたけれど、どうしてそうなったのかは分からない。
 もしかすると、小がぁがぁが個人の飼い手の有名度を決めているからだろうか? 外のクニではそう言う人もいるけれど、餌がなければ生きていけないのはヒトもがぁがぁも同じだ。
 有名になれば小がぁがぁはヒトに贈り物をすることもあったから、今では誰もが有名度を競っている。

 最近は迷った小がぁがぁが、見知らぬヒトから送られることもない。中がぁがぁの亜種は顔も知らない個人の飼い手同士を繋いでいたし、餌なんかなくても、有名じゃなくても必死で飛び回っていた。
 今では想像すらできないけれど、がぁがぁが一羽もいなくても、昔は見知らぬヒト同士が何の見返りもなく話をしたし、餌も有名度も関係なかった。
 けれども、今では何をしてもすぐに小がぁがぁはお報せにしてあちこちに伝えてしまうのだ。
 そしてそれを評価するのは、いつも中がぁがぁだった。

130 198 130 241 130 198 130 241 129 64 130 198 130 241 130 169 130 231 130 232 130 198 129 64 151 215 145 103 10 138 105 142 113 130 177 130 164 130 181 130 240 138 74 130 175 130 234 130 206 129 64 138 231 147 233 144 245 130 221 10 137 244 130 181 130 196 146 184 145 213 130 191 130 229 130 164 130 190 130 162 129 64 137 241 151 151 148 194 10 146 109 130 231 130 185 130 231 130 234 130 189 130 232 129 64 146 109 130 231 130 185

 がぁがぁ達は大きくても小さくても、偏方向でも双方向でも、自分達が責められるとみんなどこかへ飛んで行ってしまうし、どんどんと新しい歌や報せを持ってきた。誰がいちばん餌をあげていて、力のある飼い手だかを調べて報せる人は誰もいない。
 みんながぁがぁドリの鳴き声を聞いていると忘れてしまうのだ。

 チイオウが色付いて、白氷結晶が舞って、カルサが散る。
それから緑と熱波。
 輝く黄金のパーティクルは冷たい結晶に姿を変え、透けるほど薄紅の白装束が砕けて緑に代わると、またチイオウの時期がくる。
 なんどもなんどもそれを繰り返している内に、戦争に行ったヒトはどんどん少なくなって、今では疑問に思うヒトすら減ってきた。

 ――速報、速報!
小がぁがぁ達のせいで中がぁがぁの有名登場人、歌姫が死んでしまいました! 自殺です!――
 商業地に着いたポリヘドラが、低い低いうなり声をあげてゆっくりと口を開く。ポリヘドラから出て近くのサーフェスの貼り付けがぁがぁで最初に見たのは、そんなお報せだった。
 ――ヒトは赦し合わねばならないのです! 悪いのは陰で浮気を糾弾した卑怯者です。無責任に小がぁがぁを飛ばすヒトビトに罰を!―――
 気のせいだろうか? 小がぁがぁ達は最近、自分達の飼い手より中がぁがぁの話ばかりを大きな声でしているように見える。
 数が多い小がぁがぁの話は、勝手にまとめられて中がぁがぁが自分達の報せとして伝えていたし、無名の飼い手達の良い話は無視され続けていた。
 それに、気味の悪いうわさも聞く。
中がぁがぁの飼い手達は餌を使って、ひそかに小がぁがぁに自分達の都合のいい話をさせているのだ、と。
 それから小がぁがぁは、飼い手の居場所や会話、時には考え方すら盗んでどこかに集めているのだ、とも。
 ――犯罪者! 犯罪者!
小がぁがぁと道徳心のない飼い手に飛行禁止令を!――
 そして別のうわさでは、小がぁがぁの飼い手は中がぁがぁの飼い手に餌を贈らなければならない規則にする、というのもあった。
 たとえそれが外のクニの飼い手だとしても、私には分からない。
かわいそうながぁがぁ達は、餌がほしくて鳴くだけだから。

 ――かわいそうで気の毒な歌姫!
残酷な小がぁがぁと無責任な飼い手! 悲劇です、これは悲劇です!――

 商業地のポリヘドラには、あちこちに中がぁがぁや貼り付けがぁがぁがいて、狂ったように鳴いている。
 めまいがして、サーフェスに寄りかかる。
私はどこへ行こうとしていたのだろう。

 がぁがぁドリ、がぁがぁドリ、どこからきたの?
   がぁがぁドリはこたえない。

  がぁがぁドリ、がぁがぁドリ、どうして鳴くの?
   がぁがぁドリはこたえない。

 音もなく喚き続けている小がぁがぁを握りしめ、私は追われるようにポリヘドラの路地へと逃げ込んだ。
 聞こえてきたのは幻聴としか思えない、奇妙な数字の羅列だけ。
チイオウもカルサもない路地。
 飾り立てられた、あるいは無機質なサーフェス。

 うつむいたまま滲み出した悪意に顔を上げて別の路地を見ると、中がぁがぁの報せを受けた誰かが、またがぁがぁドリを飛ばしていた。



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