フィールドが自然遺産になった
車で2時間半
オーストラリアの田舎の大学で修士課程を修了した私は、高校の時に住んでいたタイの大学に就職した。この話はまた別の機会に書こうと思う。タイ語も話せない私がタイの大学に就職できたのも、いろんな巡り合わせだ。大学はバンコク郊外に位置しており、工学系が強い工科大学にあるフィールド研究室に入った。メンバーは、Principal Investigatorがアメリカ人、イギリス人とタイ人の研究員に怪しい日本人の私が加わった形のチームだ。月の半分以上をバンコクから2時間半程離れたカオヤイ国立公園で過ごす生活が始まった。
目覚ましはテナガザルのコール
自然に囲まれた「コテージ」が研究の拠点だった。知り合いの好意により、公園内のお偉いさんの家族が住んでいるコテージの一部屋を使わせて貰える事になった。斜面に建てられているため、結果的に高床式になっているお家だ。その下の空間は動物たちの憩いの場になっていた。しかしそれを知らなかった私は何度かびっくりさせられた。いきなり夜に床の下から「シャカシャカシャカ〜」と(祈祷する時に聞こえてくるような音が)聞こえてきた時はひとりホラー映画モードになった。ドキドキしながら眠りに着いたと思ったら、朝も明けない3時半位にテナガザルが家の真上で朝の日課を開始した時は苦笑いするしかなかった。彼らは人間がいつ起きるかなんて関係無いんだから、私が文句を言う筋合いもない。なかなか出来ない体験だから、テナガザルのコールで目覚めるなんて素敵と思う人もいるかもしれない。だが、突然のけたたましいコールは目覚ましのそれよりも心臓に悪い。
難しい課題
3年間、カオヤイ国立公園で研究している中で何回か珍しい体験をした。そのひとつが、研究フィールドが自然遺産にノミネートされ、登録された事だ。自然遺産になると良いことも多いがいろいろ制約も出てくる。自然遺産に指定された場所に住むという貴重な経験をさせてもらった。なかなか、自分の研究フィールドが研究中に自然遺産になり、さらにそこに住むという体験は出来ないのではないかと思う。私は本当に良いタイミングで良い場所にいるという運を持っているようだ。
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