街角の殺人('09)

'09年3月の日記から。
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しばらく前なんだけども、近所に住んでるサカモトんちに遊びに行った時の話。まァそのサカモトってのがこれまたえらいチビで、これについても色々と面白い話があるのだが、それは次の機会に譲ります。

そのサカモトに会ってみるとなんだか暗い。夕方の玄関前で話してたから実際暗かったんだけれども。オレは別に大して心配もしてなかったのだが、渡世の仁義と思い、い、一体どうした!? と尋ねてみた。したら奴さん、なんでも受験に失敗したという。

オレは今年で22になる同級生が未だに受験をやっていた事実にも愕然としたのだが――イヤ本当は前から知っていたのだが、まァその、たいしたもんだネ! と感心したのだった。何か気の利いたことを言おうと思ったオレは、だがしかし色々と間違えて「何で? 身長制限?」と言ってしまった。要は冗談で流してやれんのかな~と思ったのだ。それに対してサカモトはたった一言、いつにも増してか細い声で「そんな訳ないじゃん…」と呟き、それっきり俯いてしまった。近年でも稀に見るマジ凹みだった。気まずい沈黙が流れた。

俺は数秒でその沈黙に耐え切れなくなり、「じゃあオレ、家でサザエさん見るから…あとからくりTV」と捨て台詞を残し、俯いたまま動かなくなった灰色のサカモトを置いて帰った。

からっ風が吹いていた。帰る道々振り返ってみると、夕暮れの中にひとり佇む佇むサカモトの姿は、いまにもその場からなくなってしまいそうな心細さを感じさせた。それを見た俺はついに耐え切れなくなり…指を指して大いに笑ったのだった。

以来、オレはサカモトとは会ってない――ということもなく、次の日も会って酒を飲んだ。勉強しろ勉強!


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