ギ リ ア ム

そのむかし、TBS『サンデー・ジャポン』('01~放送中)にテリー・ギリアムが出演したことがあった。『ブラザーズ・グリム』の宣伝だったと記憶しているから、それが正しければ'05年のことだろう。

『サンジャポ』MC・爆笑問題の太田光は、だいぶ昔からギリアムのファンを自称していたと思う――そのせいかどうか、番組ではギリアムの取材を、太田本人が行うこととなった。

インタビューマイクを握った太田がドアを開くと、ギリアムはなんとも言えない表情で、一人がけのソファにぐっと深く腰掛けていた。(…と、思う。何しろ17年モノの記憶なので、ディテールが間違っていたらすんません)

太田が隣席に腰掛けるも、ギリアムの態度は特に軟化せず。指先をこめかみにあてながら、嘆息しつつ、なんだか難しそうなカオを作って

「悪いけど、今は取材を受ける気分じゃないんだ。何も話さないよ…」

みたいなことを言った(気がする)。要するに太田という、日本のタレント相手に軽く一発カマしてみたのだと思う。たぶんですよ。
ただ、通訳がその言葉を訳しきるのを待つ待たぬか…というタイミングで、太田が仕掛けた。

無言のまま、手にしたインタビューマイクをゆっくりと下ろし、ギリアムのイチモツにあてがう太田。そのままギリアムの股間をのぞき込む。まるでイチモツに取材しに来たかのような格好。で、その太田の顔をよくよくみれば、口の端から笑みがこぼれてしまっている。…とっとんでもないWARUFUZAKEだッ。

この悪質なユーモアに対し、…イヤ、ギリアムもさすがである。即座に答えた。たしかこんなふうに言った。

「…そう、だから今日は僕じゃなくて、”僕の小さなお友達”(※イチモツのことですよ、わかるでしょ)にお話ししてもらうネ!」

――このときのギリアムの顔は、打って変わって大変な笑顔だった。例の、やたらと目がキラキラした、無垢な子どもかシリアルキラーのような紙一重の笑顔。アレだった。
このへんで太田も耐え切れずに笑った。二人して大笑いしていた。


☆☆☆
オレはなんだかこの一連のやりとりに、真剣勝負のようなSUGOMIを感じて引き込まれてしまったのでした。

あまりにもわかりやすく表出した「緊張と緩和」(枝雀理論)。ニック・ボックウィンクル(プロレスラーです)じゃないですが、「相手がワルツを踊ればワルツを、ジルバを踊ればジルバを」みたいな、要するに度量が広すぎるギリアム。シュート潰し…イヤ、試合は成立してるんだから潰してはいないですね。仕掛けられてもWIN-WINにもっていく、この実力ですよ。

――やはり、モンティ・パイソンは伊達ではない。

そんなふうに思ったブラウン管の前のオレは…18歳だった(なにそのむすび)

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