『電人ザボーガー』('11)

'11年にmixiにあげていた文章で、気分を害する恐れのある超・主観的な文章です。
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なんというか、天然に物真似は勝てないというか。
(主に山口暁が)クソ真面目に、力いっぱい空回りした結果、なんだかワケわかんなくってズレてるけど、それでもなにかエネルギーが溢れまくって珍作・怪作になった旧作に対し、「元がヒドいし、お笑いだったらこんなもんだろ!」とコントのつもりで作ったのが本作であると思います。旧作を神格化するつもりは全くないんですが(中身は大概、デタラメだし…)、その一点に顕著な違いがあるように思います。そんなわけで本作、オレとしては「世紀末戦隊ゴレンジャイ」ぐらいの作品だと思ってるんですが、どうでしょうか。演技なんかを見てもそう、俳優はみんなコントだと思ってやってるようだし。

間違いなく言えるのは、本作は旧TVシリーズやその周辺作品に思い入れが強い人向けのリメイクではない、ということです。どちらかと言えば、趣味の狭い若い子たちが「ヤバいモン見ちゃった!」とか「ありえない! カルト!」と騒ぐための共感ツール(ニコ動の動画みたいな感じ)の一種である…とい印象。

えー、じゃあ色々気になったところをちょっとずつ。
まず美術なんですが、これはまあ気に入りました。コレ本当に西村映造? と思うぐらい頑張ってましたね。所々ですけども。
ザボーガーの新デザインもまあまあカッコイイ、旧作のマシーンザボーガーは頭がでかすぎるよなー、なんて思ってたらきちんと直ってるし。スーツは多分ほとんどがウレタンの切り貼りで作ってあったと思うんですが、見た目には清潔な仕上がりで色合いも綺麗。あ、ただヘリキャッツにキャノピーがあったのは何故?中で小さいザボーガーが運転しているんだろうか。まさかな。
一方で悪ノ宮やシグマの幹部連中の衣装はコント臭が強すぎた感がありますね。そういえばなぜか海賊ジャックの名前が変わってたな。関係ないけど。色々変な感じだったんですが、ミスボーグのヘルメットまでウレタンか何かの切り貼りで、いよいよコントの被り物みたいでした。
ヨロイデスのデザインとかラガーズの改変はなんだかよくわかんない感じですが、でもアリザイラーなんかは本当に良くなってました。旧作に登場したアリザイラーはちょっと素朴すぎる感じだったので(ザボーガーの敵なんてみんなそうだけど)、こいつに関しては完全にリメイクの方が好みです。ブルガンダーはまあ、表面がキレイになったなあってぐらいでしょうか。旧作では確か一歩も動かなかったような気がするジャンボメカがアクティブに街を壊して回ったのは良かったですね。付随する色々な事には目を瞑って。あ、でも誤解のないように書いておきますと、巨大な裸女が突然街に現れて…というシチュエーション自体は嫌いではないんです。あの一連のシーンでは、デモ田中が渡辺裕之とオナラで人間ロケット(特攻)をやったのにゲンナリした。なんだこういう世界なのか、じゃあ生きるのも死ぬのも大して重いことじゃないね…って感じがしちゃったんですよね。オレは。ああ、話がズレちった。

ヒドかったのはねえ、さっきもちょっと書いちゃったんですけど、物語。
一応あらすじだけ簡単に書いておきますと、まあ色々あって大門豊とミスボーグがデキちゃって(一応SEXシーンもある)、レディボーグと秋月玄が生まれて、果たしてミスボーグは死にまして、ここで時間軸が飛ぶわけです。成長したレディボーグはミスボーグの記憶を引き継いでいて大門に懐くんですけど、なんかジャンボメカの心臓部に組み込まれちゃうわけなんですね。で、悪ノ宮のもとで成長した秋月玄はマシンホーク(今回は変形もする)に乗っかって大門に挑むんですが結局は負けまして、なんとなく親子で仲直り。まあ悪ノ宮は倒した、ジャンボメカは破壊しました、レディボーグも無事でした、よかったなあ平和が守れて…というお話。糖尿病だのなんだの、宣伝文句に多用されたキャッチーな新要素の数々は、まあその場限りのギャグとしてしか披露されません。

それでもねえ、この物語。旧作を知っている人ほど敷居が高いというか、よくわかんない改変の数々で閉口するばかりです。あらすじに関してはオレも間違ったことは書いていないと思うんですが、自信がないので気になる人は映画館で確認してね。

まあでも、一番イラッと来たのはその、大門の「オレに父親としてお前に出来る唯一のことは、お前の意思を尊重することだ」だとか、レディボーグの「離れていたほうが、お父さんを大事に出来る気がして」とか、ああ、お前らそんなんでいいの? って思っちゃう様なセリフの数々でしょうか。歯が浮くようなお砂糖菓子感覚で、実にしょうもない。
なんというか脚本も兼任した井口昇監督、パッと見は童貞のかわいいおじさんなんですが、オレはそういう風体の人物は大抵男らしくて、信用に足るものだと思っていたんですよ。経験上。
それなのになんというかそれを裏切る、非常にそれっぽ~い、雰囲気だけで中身の無い、おロマンティック(なんでしょう。知らんけど)なだけの具体性を失った感情表現、暇つぶしのくっだらない文言が羅列される。これにはいささかガッカリしましてよ。まあ、過度な期待は全てオレの思い込みに起因するもので「そこを不満ぶられても…」かもしれませんけど、パッと見が童貞のおじさんだったらもう少し逞しく現実を描いてみてよ! というのが正直な思いではあります。

オレとしては本作についてはそんな風に、ただ手癖で書いたヤッツケ仕事ぐらいにしか思えなかったので、エンドロールで「山口暁に捧げる」みたいなテロップが出たのは、少々気持ち悪いというか、理解の出来ない感覚がありました。そーいうのは、もう少し真面目に作ったときにやりなさいよ、と思うわけです。コントにしたときではなくて。

ま、そんなこんなで色々ありまして、本作は旧作とは何ひとつ同じではないんですけど、まあ映画館ではオレより若いようなオタクキッズたちが「ピープロってこうだよね~!」とか「ザボーガーってこうだよね~!」とか何も具体的でないことを知ったような口ぶりで語っていて、それにも随分ガッカリさせられたという。
カンで喋るのはやめろ! と思うんですが、何か知ったかぶりをしておかないとマズいんでしょうね。仲間内で見下されるんじゃないですか。

まあでもそういった周囲の騒音を抜きにしても、オレとしては評価に値しないという印象の本作なんですが、ネット界隈ではおおむね評判が良いようでビックリしております。あとになって家のTVで見ても流し見で終わってしまうと思いますんで、皆さんには是非、カネを払って劇場で見ていただきたいと思いま~す。

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