大塚海渡騎手の木村哲也調教師への民事裁判が和解成立

過去にも記事にした、大塚海渡騎手がかつての師匠だった木村哲也調教師からパワハラや暴行を受けたとして、木村師に損害賠償請求をしていた民事訴訟が、10月8日に水戸地方裁判所土浦支部にて和解が成立しました。

調教見学中だった大塚騎手を木村師が引き摺り出し、頭を叩いたこと(これだけでも立派な暴力)を詫びると共に、和解金として80万円を支払うことを、大塚騎手の代理人弁護士が明らかにしています。
大塚騎手によると、和解金80万円は競馬サークル、スポーツ界のみならず、世間から暴行や暴言が無くなるよう活動に尽力している機関や団体に寄付するそうです。

大塚騎手の代理人の一人の鈴木和憲弁護士は、以下のように述べています。

「刑事事件がなかったら、(JRAは)そのままにしていた可能性は高い。はっきり言って、中央競馬会は事なかれ主義ですよ。でも、3カ月(の調教停止処分)はやるんだ、とも思いました。事なかれ主義だと思っているから。暴行といったら簡単ではない。許されないです。(今回の民事訴訟における)殴った、殴っていないという裁判は少なくとも、あまりないですね」

また、高倉太郎弁護士は以下のように述べています。

「今回の訴訟を通じて木村師側の反論としては、命を預かっている危険な職業であるから指導の目的で強く指導したんだというような反論、主張が出てきていて、そういうこともあるんだろうとも思いますが、かといってそれが(暴言や暴力を)容認する理由にならないと私たちは思っていました。もし競馬界や、その他の公営競技の中で指導の名のもとにそういうことが行われる事例があるのだとすれば、時代には遅れているのではないか」

尤も、JRAは今回の訴訟のみならず、競馬関係者が起こした様々な事件についても無責任な態度を取り続けており、それが世間一般の競馬への忌避感情に直結しているに違いないと、わたしは強く思うのです。
木村師に3か月の調教停止処分が下されたことについて、鈴木弁護士は「やるんだ(要するに、処分を下したの意)」と驚いたことでしょう。
ただ、わたしとしては、3か月の調教停止処分ではあまりにも甘過ぎると思っていましたし、6か月~1年の調教停止、程度によっては調教師免許の剥奪までしなければ釣り合わないとも疑問でした。
「指導」の名の下に暴言や暴力が是認される風潮は、日本の学校や職場にも蔓延し続けているのではないでしょうか。
ましてや「愛の鞭」という言葉で言い包められると、被害者は反論がより困難になりがちだとも思うのです。
それを基に、学校での虐めや職場でのハラスメント事件を見ていくと、競馬ファンもまた違った見え方をするのではないでしょうか。

大塚騎手は現在、美浦トレーニングセンターの乗馬苑にて乗馬トレーニングを重ねており、医師からのOKが出れば、トレセン内で競走馬に騎乗することができるとのことです。
この現状を勘案しても、今年2021年中の復帰は困難だとわたしは思わざるを得ません。
大塚騎手の訴訟を機に、競馬界のみならず、全てのスポーツ界が全ての人々の人権を尊重した社会に寄与しなければならないと、わたしは切実に要望するものです。

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