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地質図でオリエンテーリング!

※PC不調と地質図に魅入られて遅くなりました。申し訳ございません。

はじまりました、オリエンティア裏advencalender9日目!今回のテーマは「地質」。地質とオリエンテーリングの関係性とは?地質図Naviを使って解き明かします!
今日は地質図でオリエンテーリング!!

全国の地質図(地質図Naviより

はじめに

こんにちは、離島オリエンティアのきたみです。
オリエンティアadvencalenderへの投稿は3回目で今までは技術論やコース論を書いてました。読むのも書くのも毎年楽しませてもらっています。
今年は趣向を変えてテーマは「地質」です。

地質とは?

まず、地質とは表土の下に拡がる岩石や地層などを含めた地面の性質のことです。
その成り立ちは様々で、火山噴出物や海で長い年月をかけて堆積した地層、圧縮や熱で変成した岩石などがあります。日本列島はプレート境界に位置する影響で多種多様な地質が生まれ、その上に土壌や植生があり、人々が生活し、テレインがあります。
テレインの土台基礎が地質であるため、テレインを知るには地質が欠かせません。また、競技中に何気なく見ていた岩石や傾斜変換、尾根沢の成因も明らかにできます。
地質を知るとオリエンテーリングはもっと面白くなるので、今日は面白さを伝えられたらと思います。

伊豆大島の地層大切断面は長年の三原山噴火履歴が一目で分かるジオスポットですね
(伊豆大島ジオパークHPより)

地質図Navi

そんな地質をまとめた地質図という地図があります。Omapに植生を描くように、成因・性質・年代などに分けて表層に分布する地質範囲をまとめた地図です。20万分の1版で日本全国、詳細な5万分の1版では50%ほど刊行されており、産業技術総合研究所地質総合センターを中心に、全国地質図化計画が進行中です。

日本全国の地質図は無料でほぼ公開されています。それが地質図Naviです。20万分の1の地質図をもとに分類され、全国の地質が一目で分かります。地質図以外にも火山図やハザードマップ、鉱床図など地学好きにはたまりません。植生図や土壌図もあるのでテレイン研究にはもってこいのサイトです。
一つずつじっくり地質図を見たり印刷したい時は地質図カタログで一つずつの地図をダウンロードしてください。

では、全日本大会2022を地質的に振り返ってみようと思います。

全日本ミドルロング2022を例に

今年の全日本大会が開かれた「富士天神山」。激難テレインでしたね。私もボコホゴにされた者の1人です。西に広がっていた礫地エリアで何分彷徨ったことか…。あのエリアが何だったのか地質図をもとに探っていきます。

本テレインは富士北麓に位置します。富士山は日本一高い山。また活火山であり富士噴火は過去に幾度も起きています。富士山の噴火による噴出物をまとめたのが↓の富士火山地質図です。

富士火山地質図
噴火による噴出物を年代、性質ごとに色分けしている。
同じ色は同系統。山頂や中腹の火口から流下する軌跡が見事に表現されて惚れ惚れする。

全日本テレインは赤で囲った範囲です。↓の地図が拡大したものです。

おおまかなテレイン範囲(緑色)スキー場(黄色)主要道(黒色)

地質図は大きく赤色と青色の2色で塗り分けられていますね。Sd-Aog(濃い赤)は貞観噴出物、Sd-Ten(淡い赤)は天神山とイガドノ山を形成した天神山伊賀殿噴出物、Sb-Sjg(青)は精進口二合目溶岩流と分類されています。
Sd-の2つは有史時代の噴出物であり、貞観噴出物は西暦864年から2年以上にわたり噴出した記録が古文書に残っているそうです。これはさらに流下してあの有名な青木ヶ原樹海を形成していることが地質図から分かります。富士山なので組成は玄武岩の溶岩です。
Sb-はそれらより古く約4000年前に噴出した玄武岩質溶岩とのことです。スキー場の大部分はこの地質の上に作られています。

貞観噴出物に苔が生えてる。幻想的
(全日本大会ミドル・ロング大会Twitterより)

では、Omapと見比べてみましょう!
手元にない方はこちらのLiveloxから閲覧できます。

比較すると、地質図の赤と青の境界線がOmapにも引けませんか…?
少しなだらかな礫地エリアとA藪エリアにばっさり分かれていますね。北西の柵に囲まれたゴルフ場も綺麗な地質境界です。あの岩石群を切り開くのは確かに避けたくなりますね。
なんと地質情報まで読み取れてしまうOmap恐るべしです。この地形地質の違いは簡単に、噴出した年代差により侵食風化度合いが異なったものと考えています。

富士南麓テレインを例に

富士山の南麓、静岡の富士テレインの地質図も読んでみます。富士テレインの範囲は関東圏Oマップよりだいたいこの範囲です。

村山口登山道(緑)鳥追窪(青)丸火(黄)勢子辻(赤)

眺めると気になるのは、またまたSd-の赤色。勢子辻をぶった切っているので、あの礫地エリア確定ですね。地質図からもあの禍々しい溶岩エリアが思い起こされます。鳥追窪の東を富士天神山東と同時代のSb-の噴出物が占めています。同質テレインと言えそうです。
一方、村山口登山道や鳥追窪西を占めるのはF-噴出物です。これは約17000年前から8000年前と、より古い時代のものです。Sb-の噴出物と比較すると確かにF-噴出物エリアの方が侵食が激しく、尾根沢が発達して地形が鋭くなって見えます。しかし、他地域と比べるととても若く硬い地質なため、穏やかな地形です。

富士山以外の溶岩テレインと言えば筏場です。
カワゴ平からの軽石質紫蘇輝石角閃石石英安山岩の流れ方がジオいですね。
日本には活発な火山は他にもあるため、地質図をもとにしたテレインハントも面白いです。

筏場の地質図
(5万分の1地質図幅「修善寺」)

望郷の森・駒ケ根高原を例に

火山噴出物ばかりではありません。第四紀に堆積して形成された崖錐や扇状地も地質図には描かれています。

例えば某大会のためにクローズされている、望郷の森。このテレインを東西に横断する道路の上下で雰囲気違うと感じてる人も多いと思います。上が急斜面に尾根沢が鋭く、ガラガラ礫が転がってるのに対し、下は緩斜面に尾根沢も緩く、礫は比較的少なく、地面がふかふかな印象を持っています。これも地質の違いです。
上は濃飛流紋岩として岐阜周辺では普遍的に見られる岩石。下は崖錐堆積物です。崖錐とは、水による力で河川から侵食され運搬されて堆積するものとは異なり、上部斜面から風化により落下してきたものがたまってできる地形です。そのため、上部と同じ濃飛流紋岩がこの崖錐部に転がっていると考えられます。

テレイン範囲(赤)主要道(黒)
(5万分の1地質図幅「付知」)

駒ヶ根高原には扇状地エリアと呼ばれる公園横の範囲があります。地質図で見るとここも浮き彫られます。河川より流れ出した礫・砂・粘土などが堆積する扇状地地形が綺麗に広がっています。扇状地エリアはまさしく扇状地です。白くて緩い面白いエリアで楽しいですが、開拓されずに残ったのが不思議ですね。

テレイン範囲(赤)駒ヶ根家族旅行村(青)
(5万分の1地質図幅「赤穂」)

矢板テレイン

矢板テレインはこの通りです。
高原山からの供給と河川の掘削のせめぎ合いがジオいですね。

ミツモチ山麓(黒)前高原(黄)熊の木(青)山苗代(緑)矢板山田・日新(赤)
(20万分の1地質図幅「日光」)

茶色範囲は高原山の火砕岩、赤範囲は火山礫を含んだ火砕流堆積物とのことです。年代的には前高原(Vp1)がミツモチ(Va2)、日新(Vp2)より古いです。ミツモチは標高が高いので急峻ですが、地質的に熊の木と同じなのは意外です。
見てるとやはり、火砕流は遠くまで届きますね。阿蘇の火砕流が山口県まで到達した記録もあるほとです。
矢板はOmapと見比べてもあまり違いが分かりませんでした…。気持ち、Va2は緩いかな…と思うくらいです。地質は植生や土壌に埋もれるので分かり辛いことも多々あります。次矢板に行く時はハンマーを持って出走して現地調査したい所です。
ただ、対局的な構造を地質が創り出したということは地質図から見て取れます。

カルスト地形テレイン(秋吉台、スコラ高原ながの村)

カルスト地形のオリエンテーリングって憧れますよね。祖父江君のadvencalender(駒ヶ根の扇状地被りしてました)でカルスト地形について紹介されています。日本では秋吉台、平尾台が有名ですね。石灰岩自体は日本各地で採れますが、カルスト地形となると絞られます。類似テレインを開拓したい時に地質図はお役に立ちます。
↓は日本列島の地質構造区分です。年代と成因によって分類されています。ここでは、青色の5番「秋吉帯」に注目です。山口県の秋吉台、福岡県の平尾台に加えて、広島・岡山周辺にも秋吉帯が広がっています。この地域といえば帝釈峡・スコラ高原ですね。確かに僅かながら凹地が見られます。先日、隣接テレインのながの村に入ってドリーネを見て感動しました。
離れた地域にもこんな共通点が隠れていることもあります。

日本の地質構造区分

全日本2023テレイン研究

最後に誰よりも早い全日本2023テレイン対策をお届けします。次の全日本テレインは千葉県勝浦市。
まず、千葉県の地質からおさらいです。

千葉県の地質図
(20万分の1地質図幅「東京・千葉・横須賀・大多喜」)

地質図でもチーバ君がいますね。頭を利根川に削られて、縞模様の立派な服を着ています。
前弧堆積盆と呼ばれる沈み込むプレートによる広域な応力によって形成された凹地(古東京湾)に堆積した地層で千葉県の大部分が成り立っています(↓説明図)。また、嶺岡構造帯南側は付加体でできてます。その地層の積み重ねがチーバ君の縞模様の服です。

千葉県の成り立ち(産総研より)

全日本テレインはチーバ君のお尻に当たる前孤海盆に堆積した地層の中では古い地層です。
Ohは砂岩泥岩互層、Nhは泥岩であり一般的な海成層の堆積岩。ただ、深海底の堆積物が陸上に露出した地層としては世界でもっとも新しい部類(約220万年前から80万年前)に入るという特徴があります。
新しい海成層は固まら前に地表に出てしまったため、柔らかく侵食されやすい特徴を持っています。その結果、あの入り組んだ尾根沢ができています。断層起因の傾斜変化があるかもしれません。地質を感じながら尾根辿りたいものです。
対策としては、形成年代の新しい砂岩泥岩テレインに入るべきです。近隣テレインの釈迦谷は地質が同じで良い練習になると思います。
また、アクセスしやすい位置にあるチバニアンの地磁気逆転層はおすすめジオスポットです。ヨーロッパばかりの地質年代の国際基準地に千葉県が選ばれるほど、世界に例のない地層です。見た目の迫力とかはありませんが…自分は全日本大会兼ねて絶対見に行きます。

全日本テレイン(赤)
チバニアンゴールデンスパイク設置位置(青)
(20万分の1地質図幅「大多喜」)

さいごに

以上、簡単な紹介でしたが地質の面白さは伝わったでしょうか?

自分の好きなテレインと同じ地質を地質図から探して開拓するのも面白いです。
よく調べると、あるテレインの面白いエリアだけが近くのゴルフ場と同じ地質だったり、スキー場は緩い地すべり地形にできてたり、多くの発見もあります。
また、狙ってる大会の類似テレインを探す際にも便利です。隣接しているからと言っても違う地質の可能性もあります。地質を知っておけば対策の仕方が広がります。

ぜひ、地質を調べてから大会に参加し、競技に影響出ない程度に岩石を気にしながらオリエンテーリングを楽しみましょう!
読んでいただき、ありがとうございました!

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