輝く地球の中で

 部屋に入ってへたりこんでしまった。今日は疲れた。いつもより、疲れた。いつも、いつも、いつもより疲れる。
 扉のアラームはもうだいぶ長い間鳴っている。これ以上大きくなる前に閉めないと怒られる。体が動かない。めんどくさい。誰か、誰か。ぐぐぐっ、しゅーっ、扉が閉まる。顔の横にハンドルが来たから、どうにか縋り付いて回していく。1,2,3,4,5。ハンドルに顎をもたれ掛けさせて、また、休む。

 地球に人が住めなくなって何年も経つ。ずっと前に投票があって、地球を捨てて宇宙へ出ていくことが決まった。でも、票を入れたのは、その時に偉かった人たち。なんでもなかった私たちは地球に取り残された。みんなで必死にシェルターを作って耐えている。でも、どうしようもなくなるのも時間の問題。もうエネルギーを作ることができない。何重にも中に入ったシェルターの中の今の温度は28度。いちばん外は…考えない考えない。
 ほんと、何で生きてるんだろう。一日一日死に近づきながら、ようやく寝られるくらいの私の部屋あるシェルターの整備点検をするだけで毎日が過ぎていく。他には何もできない。いつも空腹、楽しいとこもなく、寝ても見るのは息ができなくなる夢だけ。でも、死ねない。怖いから。死んだ先があったら嫌だし、無いとしたら、耐えられないから。
 ようやく動けるようになった。冷蔵庫から水を出して飲む。ぬるい。汲みに行かなきゃ。
 さっきら扉を閉めてくれたのはお向かいさんかな。水も汲んできてくれないかな。あはは。
 もう一度、扉を開ける。暑い。お向かいさんはいつものように自分の部屋の上に座っている。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です」
 部屋の上に立ち上がって水汲み場の方を見てくれた。
「空いてますよ」
「ありがとうございます。…汲んできましょうか?」
「あざっす」
 石棺のように部屋が並ぶのを上から眺めるのはどんな気分だろう。
「…一緒に行きましょう」

voter/投票する人

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