チキンレース

「ようようようよう、ひよってんじゃねえよ」
「ひよってんのはおめえだろ、黄色い嘴のひよっこどもがよ」
「そういうお前の脚はなんだ? ぷるぷる震えて千鳥脚じゃねえか」
「なんだと、鶏冠に来たぞ」
「そんなこと言って腰が引けてんじゃねえか、このチキン野郎」
「うるせえなこの鶏ガラ野郎。てめえこそなんだ、目が涙目になってんぞ」
「ぴいぴいうるせえなあ」
「それはこっちのセリフよ。ほら、飛ぶぞ、飛ぶぞ!」
 そう言って、鳥たちがばっと飛び立った。そして私が歩いている先の少し先に飛び立ち、またぎゃあぎゃあ仲間内でやり始めた。もう5回目だ。うんざりだ。人が近づいたら逃げるというのにスリルを見出して、まるで飛び立たないのがタフな証みたいなのはやめてほしい。こちらを遊びの道具にするな。
「ご主人、やっちゃいましょうか?」
 犬まで乗せられて目が輝いている。
「関わりになっちゃいけません」
「でも、でも! ああー!」
「こら!」

tough/タフな

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