空腹の祈り

CREDO IN UNUM DEUM PATREM OMNIPOTENTEM FACTOREM CAELI ET TERRAE VISIBILIUM OMNIUM ET INVISIBILIUM.
 どうしてもお腹が減る。貪ってはいけないというのはわかっていると言う以上にわかっている。けれど、本当にご飯が少ない。あのパンだけでは満たされない。どうにかして、今すぐ、パンを食べたい。

CREDO IN UNUM DEOMINUM JESUM CHRISTUM FILIUM DEI UNIGENITUM EX ET PATRE NATUM ANTE OMNIA SAECULA.
 天井を見上げながら聖句を呟く。みんなはどうやってこの空腹を耐え凌いでいるのだろう。眠るどころではない、頭が冴えて、でもどんどん何もわからなくなっていって、そしてだんだん痛くなってくる。何か食べたい。すぐに食べたい。

DEUM DE DEO LUMEN DE LUMINE.
 神の中の神、光の中の光。この聖句ばかりが繰り返し頭を駆け巡る。文字が頭の中から目を通して出てきて天井をぐるぐるし始める。降りて行って水をがぶ飲みしようか。でも、あれは、やりすぎると吐いてしまって、その後しばらく物が食べられなくなって、もっと辛い。台所に行って盗み食いをしようか。お腹が空きすぎて、盗む、という罪を犯すことすら頭の中で考えてしまう。

 どうしても耐えられなくなって、梯子段をそろそろと降りた。扉には鍵がかかっているから、窓から忍び出ればいい。DEUM DE DEO LUMEN DE LUMINE. 今日は運の悪いことに月の光が強い。LUMEN DE LUMINE. 光の中の光。運悪く神がこちらをご覧になっているようだ。空腹を満たしてくれない神なのだとしたら…。そんなことを考えてはいけない。窓を開けると冷たい空気が流れ込んできた。

CREDO/我神ヲ信ズ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?