夏の思い出①

 夏休み明けの1発目のランチの時間にみんなで部室に集まった。話は休み中に彼氏彼女ができたかになって、盛り上がってきたところで3限になってしまったからみんなわーっと出ていき、たっちゃんと私だけが残った。
「たっちゃんさ、さっき、すごく変な顔してたけど、大丈夫?」
「…わかった? 実は…」

 弟が来年受験だから、その家庭教師をするように親に言われて、実家に帰ったんだ。少しお小遣いをくれるって言うし、ご飯の心配をしなくていいし。
 帰省してみたら、弟は夜には塾に行くから、昼に教えるだけで、夕方から後は暇で。実家ですることないから、夜は別のバイトをすることにした。
 実家があるのは夏は避暑地、冬はスキー場になるところで、近所にログキャビンのレストランがあって、小中の時の同級生のお母さんがやってて、そこのフロアに入ることになった。
 フロアは8人がけのテーブル1つ、6人がけ1つ、4人がけが4つに2人がけが2つだから、広くはない。そこを、同級生と僕で回すことになった。
 同級生の名前は香織で、東京の大学に行っていて、夏の忙しい時期に合わせて帰省してきていた。
 香織と会うのは2年ぶりだった。でも、そんなに会っていなかったなんてわからないくらい、すぐにいろいろ取り戻した感じがした。
 営業が終わると片付けをしながらずっと喋っていた。香織のお母さんも一緒だった。夜遅くなって家族からラインが来て慌てて帰ることもあった。僕は自分の車で帰るから、店を出たら離れるのが寂しかった。
 定休日が火曜日で、水曜日に行ったら香織がいなかった。
「ごめん、今日は一人で回してくれる?」
「いいっすよ」
 その日はわからないけど無茶苦茶忙しくて、あっという間に閉店時間になった。その時にはへとへとになっていた。
 片付けを済ませたら、お母さんが賄いを出してくれた。いつもより豪華で、店で出しているのと変わらない感じだった。

cedar/杉の

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?