かけ算の順番に関する考察の整理

問題
みかんを3個ずつ、5人にくばります。
みかんは全部で何個いりますか。
しき:       こたえ:

正答
しき:3×5=15 こたえ:15個

論点
しき:5×3=15 は誤答かどうか

誤答とすべき意見に多く見られる主張
[1] 小学校では(1つ分の数)×(いくつ分)の順番で教えている
[2] この問題は、生徒が(1つ分の数)と(いくつ分)を取り違えていないかを問うている
[2] よって、5×3では、5個ずつ×3人分となるので誤答である

[1]には順番を固定することで学習の理解を助けるという主張があるが、
「それは本当に効果があるのか」という点については不問とする。

[1]に対する疑問
(1) かけ算を教えるときに、交換法則についても言及している。また、長方形で考えるときの縦×横については、横×縦でもよいことを説明している。
(2) 実生活においても、(数量)×(単価)と(単価)×(数量)が混在しているように、(1つ分の数)×(いくつ分)の順番で記述しなくてはならない状況というものが想定できない。
(3) 指導要領においても、あくまで「先生の教え方」として、この順番で教えることとはしているが、「生徒」が逆に書いてはいけないとは書いていないし、もちろん生徒が書いた場合は誤答であると書かれてもいない。
(4) (1)~(3)より、(1つ分の数)×(いくつ分)の場合のみ、殊更順番通りに生徒に書かせることに拘る根拠が希薄である。

[2]に対する疑問
(5) (1)(2)によって、先生の教え方に関わらず、生徒が「5人分×3個ずつ」のつもりで5×3と書いた可能性がある。この場合、生徒は「3個ずつ」「5人分」と考えており、先生の教え方と逆に書いたとしても、取り違えてはいないことになり、[2]の目的を果たしていない。
(6) 「先生が教えた通りに書かないことが誤りの理由」というのは、前時代的な考え方である。先生が教えた方法以外で答えに辿り着くことを許容しないのは、本来できたはずの生徒を不当に貶めることになる。

[3]に対する疑問
(5) 数式の記述は、日本語の文法を反映したものではない。
(6) 「先生がそのように教えたから」というのは、単なるローカルルールであり、無条件で(5)に優先する理由にはならない。
(7) 仮に(6)によって学校内では有効なルールであるという主張があったとしても、テストは保護者が確認するものであり、学校の外で理解されないようでは問題がある。

(1つ分の数)と(いくつ分)を取り違えていないかを確認する問題に対する提案
・問題文に「ただし、(1つ分の数)×(いくつ分)という形で書くこと」と記述する。
・問題を「🔲個ずつ×🔲人分」という穴埋め形式にする。

*いわゆる「掛け算の順番問題」は、既に何十年も議論されてきた問題です。既に様々なメディアで紹介され、多くの数学者や教育学者の見解が述べられ、多くの人の間で論議が交わされています。もし何らかの関心が生じた場合、まずは小学校の教科書や指導要領などを十分確認し、ある程度議論の経緯を確認してから表明されることをお勧めします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?