民話 キツネの玉 〜異聞〜
むかし むかし あるお寺に かしこい小僧さんがおって
お山の狐の住処から まんまと 狐の玉を 持ち帰りました
小僧さんは その狐の玉をだいじに つづらに隠しておりました
ある日 和尚さんのお使いで 出かけた時のこと
寺に おっ母と名乗る女が やってきて
うちの坊主の洗い物をしますので つづらをお持ちください と
和尚さんがつづらを渡すと ゴソゴソとつづらをあらため
女はペロリと 舌を出すと つづらを残し 煙のように消えてしまいました
お使いを終えた小僧さん その話を聞くや
お山の狐が おっ母に化けて 玉を取り戻しに来おったか
化けたり消えたりとは さては 狸に玉を借りよったのかな
和尚さま これから隣村のお稲荷様に行ってまいります お許しください
そして 隣村までかけて行くと 神社に着くなり
神主様 どうか神主様の装束をいっときお貸し下さい とお願いしました
日暮れ間近になって 狐のところに
見慣れない 小さな神主さんが やってきて 言いました
わしはお稲荷様から遣わされたものじゃ
玉を取られた狐がおると聞き参ったが それはお前かの
狐は あゝ お稲荷様はすべてお見通しであった と観念し
はい 仰せの通りで ですが玉は戻って参りました
ほんとうか では あらためさせよ
はい こちらに ほんものにございますよ
狐が玉を 神主さんにわたすと ふむふむ
ではお稲荷様に あらためていただくので 夜まで待て
そういって 神主さんは玉を持ち帰っていきました
狐は不安な気持ちをこらえ 次の朝まで待ちましたが
神主さんも 狐の玉も 狐のもとに戻ってきませんでした
おしまい
最新のお話はTwitterで進んでいますが、 振り返れるようにnoteでまとめ記事にしています。