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暮らしだよりvol.2 ~Osteria Nacon

―中尾
今日は旭川に来ました!
4月に来て以来8か月ぶりなのですが、この10年間、毎月来ていたので、何年も来ていなかったような気分です。
今日はナコンというイタリアンのお店のご夫婦をお迎えしました。
ナオちゃんと、ヒデ君です。よろしくお願いします!

―Nacon ナオちゃん・ヒデ君
こんにちは。よろしくお願いします。

―中尾
なぜ今日お二人をゲストに迎えたかということからお話しますね。
2011年に、旭川市内で芸術を通して地域づくりをしようという「NPOかわうそ倶楽部」をあべ弘士さんと澁澤さんと私の3人で立ち上げて、その拠点として、あべ弘士さんの作品を中心に展示する「ギャラリープルプル」をオープンしました。地元の女性が一人、事務局員として働いていましたが、地域の人たちとのお付き合いやギャラリー展示の仕事になかなか慣れなくて、毎晩夜遅くまで仕事をしていました。東京の感覚で仕事をしていると、あっという間に周りのお店が閉まってしまい、夕飯を食べるところがなくて、その日も2ブロックほど歩いてようやく見つけたのがナコンだったのです。

地下に降りていくと、お客さんは誰もいなかったのですが、カウンターの向こうにヒデ君がいて、ナオちゃんが明るい声で迎えてくれました。私は、まだ仕事が残っていたので、お手伝いをしてくれていた女性とエプロン姿でパスタだけ注文して、急いで食べて出たのですが、とっても美味しかったので、またゆっくり来ます!と言ったのは覚えています。

その翌朝、いつものようにホテルを出てギャラリーに向かっていると、信号の向こうから、「なかおさーん!」ってめっちゃ明るい声で手を振ってくれる女性がいるのです。
みたことない人だなあ、だれ?…と思いつつ近寄ると、「昨日はありがとうございました」と満面の笑みで声をかけてくれたのが、ナオちゃんだったのです。

私はそれまで、私から声をかけることしかなかったので、やっと地元の方から声をかけていただけたことが、ものすごくうれしかったんですよ。
私の中では、お店に行った夜は次の仕事の段取りしか考えていなかったので、ナオちゃんとはほとんど話もしていなかったのに、もう何十年も前からのお友達のように声をかけていただいて、すっごく幸せだったんですよ、澁澤さん。

―澁澤
はい。

―中尾
それから時々食事に行くようになって、さらに数年後にはナコンが入っているマンションに私も部屋を借りることになって、お二人と親しくなって、どんなふうに暮らしていらっしゃるのかとか、色々お話しするようになり、いつもカッコイイお二人を旭川を代表してご紹介したいと思って、今日はお招きしました。

―Naconナオちゃん
そんな旭川代表なんて滅相もないです。

―中尾
早速ですが、「ナコン」という名前の由来から教えていただけますか?

 ―Naconヒデ君
はい。まず、自分が食べて育った自家栽培の野菜を使ったお店を持ちたいと思ったのがきっかけです。意味があるわけではないのですが、菜っぱの「菜」と、根っこの「根」を合わせて「ナコン」としました。
当て字だけど、響きが良くて、まあ意味は後からついてくるだろうなと思って名付けました。

―中尾
ということは、そもそも、ひでちゃんがやっている畑があったということですね?

―Naconヒデ君
僕がやっているというよりは両親ですが、僕が子供の頃は祖母がやっていました。

―中尾
なるほど。お料理にはいつごろから興味があったのですか?

―Naconヒデ君
19歳のころから料理の世界に入って、色々なお店を経験しましたが、イタリアンを教えてもらったシェフについてから、野菜を使ってお店をしたいなと思いはじめました。

―中尾
お二人でお店を始めたわけではないのですよね?

―Naconヒデ君
そうですね。はじめは僕一人で始めました。

―中尾
結婚してナオちゃんと二人の店になるのかな?

―Naconヒデ君
そうですね。二人でお店を始めてから15年です。

―Naconナオちゃん
実はナコンは、野菜を使った多国籍料理のようなお店だったんですよ。最初はイタリア料理というジャンルのお店ではなかったんです。お酒もワインだけじゃなくて、いろんなお酒を置いていました。
私が一緒に働くにあたって、「何が一番得意なの?」と聞くと「イタリア料理」だというので、じゃあ私が入ったら、全部イタリア料理に変えよう!一本で行こう!といったんです。お酒もイタリアワインのみ!と決めました。

―Naconヒデ君
それで、二人でいろいろ話し合って、ルールを決めたのです。
北海道の食材しか使わないとか、でも果物は無理だから国産のものを使おうとか。

―Naconナオちゃん
でも、根本はナコン畑の野菜を使うということです。最初からずーっと使っています。
イタリア料理にしてよかったのは、本当に野菜がおいしく頂ける料理なんですよね。

―中尾
で、ここは新しいお店。今月からオープンしたのですよね。旭川市内の地下から、今月地上に出てきましたね。
とても明るくて、きれいな建物ですね~。ここはもともとご自宅だったのですか?

―Naconヒデ君
地上に出てきました(笑)
ここは、畑でした。野菜を作っていたところです。

―中尾
ここがナコン畑ですね。
そして、農作業をしながら、二人は走ってますよね。
私なんか、普通に歩いていても滑って転んでしまう旭川で、お二人は冬も走っていらっしゃるんですよね。何でしたっけ?あの走っている動画は。

―Naconナオちゃん
ノースフェイスのコマーシャル動画です。2年前の秋冬のランニングウエアの広告で、モデルとして使っていただいたんですよね。

 *ノースフェイスのコマーシャル動画はこちらのYouTubeからご覧ください。
→https://www.youtube.com/watch?v=Cc2Zcw1ISJI&t=0s

 ―中尾
雪の中をね。すごいスピードで。

―Naconナオちゃん
自分たちの走りをコマーシャルとして使っていただけたのは、自分たちの経験としても良い思い出になりましたし、なにより旭川を紹介してもらえるのがとても光栄でした。地元を紹介できて良かったです。

―中尾
走っていてよかったね。走り始めたきっかけは?

―Naconヒデ君
そうですね。僕の体に不調が出てきて、試しにランニングをしてみようと。走るのは嫌いだったんですけどね。

―中尾
嫌いだったの? 信じられない! めちゃくちゃ走ってますよね。

―Naconヒデ君
今はそうですね。イタリアに毎年勉強のために行くことを始めていたので、その時に僕の友人からランニングシューズをもっていって向こうで走ると、行った場所の土地勘もわかるようになるよという話を聞かされて、試しに持っていってみたんですね、二人で。で、走ってみたら、それがとっても楽しくて、はまりました。

―中尾
ナオちゃんはどう?

―Naconナオちゃん
地元の景色を楽しめますよ、ランニングは。それとともに食。走ってお腹がすいたら余計においしいし、田んぼもみて、お米も、今年も豊作だと良いなとか、いろんな畑もみて、あれジャガイモかなとか、玉ねぎかなとか、食とつながる風景もこの辺にはたくさんあるけど、車じゃ感じられないものを自分で走ってほかの場所で見たりして、そして、ナコンに持って帰るという感じ。

―中尾
街を見るのに走ることは良いですね。体で体感するということですよね。

―澁澤
畑も田んぼも人に見られるんですよ。作っている側からすると、冷蔵庫の中を見られているような感じなんですよね。ある意味で心を開けないとできないことです。勿論、本人も努力をして、草を刈ったりよく作ろうとするけど、絶えず自分の労働の結果を他人に見られるわけですから、ある程度心を開かないとできない仕事なんです。だから、景色を見ただけで、どんなお百姓さんがつくっているか、人柄までわかりますからね。だから心を開いて自然の中で生きていくという姿なんですよ。

―Naconヒデ君
そうですね。

―Naconナオちゃん
食だけは、IT化できないものだから、ネットでは絶対に体験できないものだと思っていて、おそらくずっと、皆で食事をすることは昔から変わらないじゃないですか。その時間をコロナで奪われそうになって、私たちもどうしようと思っていたんですけど、みんなそこに立ち戻って生き続ける放送を最近よく見るので、食文化というのはなくならないし、改めて、笑顔でみんなで食事している姿は素敵だと思いました。

―中尾
そうですね。特に日本は春夏秋冬があって、旬があって、それをいただくというのは良いですよね。ナコンだと、夏になったらズッキーニの花を食べたくなるし、ね。そのために8月に行こうと思いますよね。

―Naconヒデ君
それは理想ですね。そうなると嬉しい。

―中尾
そして、たぶん旅って人に会いに行くんだと思うのよね。
会いたい人がいるところに行く。

―Naconナオちゃん
インスタグラムをやっているんですけど、ランニングとお店の広告代わりに投稿するものと、あと山登りもするんですけど、その3つを敢えて一つのアカウントで分けずにやっているんですが、ランニングで出会った方とか、山で出会った方とかが、みんなお客さんとしてお店に来てくれるのですよね。

―澁澤
総合芸術なのだと思いますよ。五感全部で感じるんですよね。
今度のコロナで自宅にいて、料理だけが宅急便で届いても、味は半分以下ですよね。やはり、その場を囲む。五感全部を研ぎ澄ませて、というか開いて、みんなでまじりあっていくということかな。

―中尾
真っ白い建物に、黒い暖炉があって、火を見て、ここでみんなで食事をする、なんて素敵でしょうと思いますね。

―Naconナオちゃん
16年間地下にいて、地上に出てきて、太陽を浴びて、この風景をお客さんに見ていただけることがすっごくうれしいんですよ。いつも意識しているのは、お客様がわざわざナコンに足を運んで来てくださったからには、今日という日は今日しかない、特別な大切な時間として、ナコンでディナーを過ごしに来てくださっていることを意識して、そこは自分たちのできる限りのおもてなしをしたいといつも思っています。

―澁澤
ここで新しいスタイルが出てくるのでしょうね。味も変わってくるでしょうし、メニューも変わってくるでしょうし、これからの10年が楽しみです。

―中尾
ほんとですね。今日はナコンのお二人に来ていただきました。
さて、それではおいしいものをいただきましょう♪

今回が、今年最後のキツネラジオとなりました。今年3月に始めてから9か月間にわたってお聴きいただき、本当にありがとうございました。
キツネラジオはいかがでしょうか?
最近は時々ですが、「キツネラジオ毎週聞いています」とお声をかけてくださる方もいて、とてもうれしいです。
できる限り続けていきたいと思っています。
2022年も、キツネラジオもnoteも、どうぞよろしくお願いいたします。


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