隠しきれなくなった見苦しさ

昔っから、可愛くなりたかった。誰よりも可愛く、それでいて優しくて、分け隔てなくて、前向きで、でも押しつけがましくなくて、周りを自然と巻き込んで、「あのグループ好きじゃないけどあの子だけはしゃべれる」って言われて、一匹狼的な人にも好かれてて、目立って、学校中がその存在を知っていて、少し有名にもなっちゃったりして、でも素朴で、熱いところがあって、勉強や仕事も自分なりの考えを持ちながら一生懸命頑張って、どんな場所でも最後には必ず一目置かれるような、この子がいてくれてよかったと誰もが言うような、そんな風に必要不可欠と言われながらもそのことをあまり気に留めず周りに執着しないで軽やかに進んでいくような、そんな人間になりたかった。

なりたかったは少し引っかかるものがある。だって、ある程度はかなっているから。というより、これは今までの私だから。私はこういう人間なのだ。こんな素晴らしい人間なのだ。

なのに、引っかかるものがある。私はこういう人間なのに、間違いないのに、引っかかる。実はそれほど可愛くないからか?自分に自信がないからか?こんなのは全部虚勢だからか?
いや違う。だって私は実際可愛いし、素晴らしいところがたくさんあるし、性格だっていい。人を思いやれる人間だし、なにより頭がいい。賢い。理解力がすごく良くて、国語は大して勉強しなくてもクラス1位。新入生テストでは学年1位をとっちゃってクラスまで人がきたことがある。すれ違った人や後輩に可愛いと噂されることもあった。歌を口ずさんでいればうまいねと言われ、みんなが嫌いな持久走ではいつも手を抜かずトップクラス。非の打ちどころのない完璧な人間。それが私だ。私は自分に自信しかない。こんな素晴らしい人間、この世でほかにどこ探したっていない。いないはずだ。いないはずなのに。どうして私は、今も、ずっと、カウンセリングに行かなければならないほど、お金を払ってでも話ができる場所を作らないと爆発しそうになるくらい、苦しんでいるのだろう?こんなにも恵まれているというのに。本気を出せば何もかも意のままにできるはずなのに。なのになんで、どうして。どうしてみんな私をもっとちやほやしない。私が目の前に座ったら喜べよ。嬉しいだろ?歌うまいだろ?声に出してほめろよ。もっと私をあがめて、自分には不釣り合いだと自らを蔑めよ。何も気づいていないふりをして、内心にやにやしながらやさしく手を差し伸べてやるから。そして裏で笑ってやるから。気持ち悪って言ってやるから。一生はいつくばって、格上の人間のやることなすことを見ていればいい。妬み嫉みなど抱かせないであげるから。完璧に好きにさせてあげるから。私は素晴らしいもんね。ほんとよかったね、あなたの人生に私という人間が存在してあげていること、もっともっとありがたく思ったほうがいいよ?あなたと私なんて本来不釣り合いなんだから。それなのに登場してあげるんだから。おめでとう、どうしようもない人生がこれで一気に意味のあるものになったね!

私の望むものを私より先に手に入れた人がいれば、うるせえ黙れって思う。てめえになにがわかんだよと言ってやりたい。でも、たまには調子にも乗らせてあげないとね。そのあとの絶望とゆがんだ顔面がより楽しみになるから。ぼろぼろにしてあげちゃう。

これが、私の本音だ。何をどれだけ考えようと、謙虚になろうと努力しようと、周りとうまくやるために本音を抑えたり言葉を選んだり気を使っても、どれだけコミュニケーションを学んでも、結局はこんな見苦しい本音が間違いなく私の本音なのだ。こんな自分を直したくて、客観的に見ておかしいと思って、なんとかしたくて必死になってたくさん本を読み知識を蓄えた。だから周りとはうまくやれるようになった。でももう苦しいのだ。この見苦しい本音は消えてくれない。どんなに考えを変えようとしてもだめだった。こんな、漫画とかで自滅していくタイプの意地の悪い現実見えてない女王様のようないじめっ子的考えしか持てない。どんなに取り繕ったって結局は取り繕ってるだけで、こういう自分を一切表に出せないのはしんどくて、自分がよくわからなくなって、苦しくて苦しくてしょうがなくて、どうしたらいいかわからなくて、わからなくてわからなくてわからなくてもうどうすることもできない。助けてほしい。でもこれが私なのだ。今まで必死に隠してきた。私は一体どうしたらいいんだ。こういう思考はおかしいのか?私は病気なのか?

こんな文章、あげて平気なのだろうか。でももう抑えきれない。どうしても一度外に出したい。私の見苦しい本音を。

こういう考えがおかしいのはわかってんだよ。苦しい。どうしてこんな考えしか持てないのかわからなくて、変えられなくて、ずっと苦しい。誰かを絶望させる前に私が自分に絶望してんだよ。ほんと、ばかみたいだ。だから誰か、お願いだから助けてくれよ…。


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