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釣果はあまりにも大きかった、泳がせたサカナ――キングオブコント2023私的感想


TBS公式サイトより

それなりのお笑い好きとして、もちろん毎年欠かさず見ているキングオブコント。2023年大会が先日開催されて、サルゴリラが優勝した。翌年以降の自分に向けた備忘録として、今大会の感想を書き記していこうと思う。


●1組目:カゲヤマ


重要な商談に臨むサラリーマン2人だが、後輩が大事な資料を紛失してしまって、先輩が謝罪するネタ。

料亭の座敷の襖前でうろうろするビジネスマン。なんでも、重要な客の機密資料を紛失したらしい。そこにさっそうと先輩が登場して「起きたミスはどうしようもないから、その後が大事」とかをどうにも間抜けな感じで話して、自分が謝ってやろうと一人で座敷の中に入っていく。
すると、襖の向こうから「申し訳ありませんでした!!!!!!」とバカでかい声が聞こえてきて、うろたえる後輩。まず何よりも、デカい声が面白いということ。おいでやすこがの例を出すまでもないが、声が大きいだけでなぜ面白いのか。あまりにもデカい声で、後輩のミスを謝罪する先輩。そしてそれが「いったいどんな状況なんだ」と想像させる。で、座敷の襖を開けると土下座をする先輩の下半身、しかもケツ丸出し。ここで一発目の爆発。まず驚いた後輩の第一声が「お尻ィ~?!」で笑ってしまう。そうなんだけどさ。

ここから数回、襖を開く→後輩困惑→また開くという展開に入る。もちろんケツは面白いのだが、複数回見せられているうちに、今度はなぜか履いたままの白い靴下がバカバカしく見えて、二段ロケットのようにもっと笑えてくる。さらに後輩の尻拭いをしようと座敷に入る際、先輩が言った「松屋の牛丼おごってくれ」という発言が何かみみっちいな――とどんどん勝手に思い出して笑ってしまう。

「ケツを出すこと」「ひたすらに声がデカいこと」といった根源的な面白さはコアにしつつ、なんだかこういうディテールがしっかりしているなと感じた。途中、右と左の襖を交互に開けると開ける方に必ずケツ丸出しの下半身があらわれるフェイズがあり、上半身が出た際は上半身だけスーツを着ていたり。「どっちにケツがあるでしょう」的なクイズだけではなく、大喜利的にもなっている。

謝罪がひと段落して出てきた際の先輩の第一声「許してもらえたぞ~」の気の抜けた感じもいい。そして客が「新商品を見たい」と言ってきたことに対して、またも新商品のサンプルを忘れている後輩。極秘資料もなくして、新商品のサンプルも忘れて、こいつもこいつでおかしいだろ。一体どんな会社なんだ。そんな会社の奴らが何でこんな立派な料亭で商談しているんだ。もしかしたら客もイカれてて、ケツ丸出し土下座を要求しているのは客なのではないか。余白がどんどん笑いを増幅させる。

二度目の失敗を受けて、また一人で謝罪しに座敷に入っていく先輩。捨て台詞の「今度は松屋の牛丼に味噌汁つけてくれよ~」に対して後輩のツッコミ「松屋は味噌汁ついてます!」、完璧な間と共感だった。先輩の発言を受けて「いや、松屋は味噌汁ついてるでしょ」と思った矢先にこのツッコミ。「まゆゆの写真集」もそうだが、突飛なシチュエーションでも置いてけぼりにならずに見ていられる原動力になっている。最後まで食い付いて見られたなあと思った。

●2組目:ニッポンの社長


男二人が、フランスへ旅立つ「ユウコ」を巡って「なんで思いを伝えに行かないんだよ」「もうアイツのことはいいんだよ」と押し問答する、まあまあベタな設定。ケツが辻を殴り、メロドラマチックな音楽が流れたと思ったら、すぐに辻がナイフでケツにやり返す。音楽が鳴った瞬間、まあ何らかの裏切りはあるだろうと期待したが、こんなにも鮮やかにやってくるとは。やられた。

まず素手で殴ってきた友達、それも親友に対して「何倍返しなの?」というナイフでやり返す面白さなのだが、そもそもいきなり殴るってのもなんだか変でギャグみたいなものだよね。今となっては違和感がないのだけれど、よく考えるとおかしい。いきなり殴ることはないだろう。そのおかしさに対してナイフで返すことは、ナイフで返すことだけに「変」とレッテルを張ることは、不公平ではないか。そうも感じた。

最初はナイフで切りつけただけ(だけ、というのもおかしいけど)なのだが、悶着を繰り返すうちに辻の攻撃手段が「ナイフでめった刺し」「拳銃」「ショットガン」「グレネード」「地雷」と過激になっていく。それに対してケツはあくまでも拳一筋。しかも「そんなもんかよ」「思いっきりこいよ」「卑怯な手を使ってでも勝ちに来いよ」と、なぜか終始ケツが優位。さらに胸→頸動脈→腹→脚部といずれもクリティカルなゾーンを狙われているのに何度でも立ち上がるケツ。

でも、この展開でグレネード以降は蛇足だったんじゃないかなあとも感じた。「殴られたらナイフでやり返す」という出発がベタに対する裏切りだとしたら、どんどんとベタにまた戻ってしまっているような。さらに、グレネードと地雷にひっかかかったときのケツの爆発演技が雑すぎて、何となく冷めてしまった。あと時間がゆっくりになってお互いが差し違えるようなシーンが3回あった。1回目は情景の理解にベタでいいのだが、距離のあった辻が拳銃の弾切れでショットガンを出す2回目のシーンは、逆にケツがすごい速さで近付いて殴るくらいの裏切りがあったらめっちゃ笑ったと思う。

とはいえ、最初は地雷に引っかからずに回避したケツの「中学のときよく食らったよな!」という発言、さらにそのケツを画面外から辻が“さすまた”で押し返すのは面白かった。一体何を巡って、こんな争いを続けてきたのか。そして、おそらくそのほとんどで渦中にいたであろう、今回飛び立ってしまう女性・ユウコとは何者なのか。

最後、結局ケツの熱意にほだされて、ケツが乗ってきたバイクで空港へと向かいフェイドアウトした辻。その際の音響が、明らかに出力のしょぼい原付のエンジン音だったのが結構面白かった。こんな銃火器を使う争いをしているのに、交通手段は50Ccなのか。

●3組目:や団


めちゃくちゃ演技指導にクセがある演出家と、指導を受ける2人。
冒頭で中嶋と本間キッドが「厳しい演出家」ということを話し合って印象付けた上で、それをちょっと上回るようなクセのある演出家としてロングサイズ伊藤が登場。舞台装置の提示がスムーズだ。

演技指導にあたりいきなり演出家がワケの分からん言葉をごちゃごちゃ言って戸惑う本間、分かってる風には見えないけどとりあえず返事をして、あるシーンの演技を始める中嶋。中嶋の演技は適当なように見え、案の定ブチ切れた演出家が中嶋に灰皿を投げつける。ここで本間が「ダーツの的」のような柄のTシャツを見せつけて「俺めちゃくちゃ狙いやすい服なんだけど」と焦ってるのは笑った。

演出家の剣幕にもまったく臆せずに適当に灰皿を拾って戻し、再度演技を始める中嶋。それに対して「お前の演技はタウマゼインではなくアポリアなんだよ!」と伊藤が注文をつけたので、独自のワードセンスを持つ演出家を軸にするのかと思ったら、全然違う展開になった。

中嶋にしびれをきらせて、本間の指導を始める演出家・伊藤。「イライラすんだよ!!」「このスタイルで30年やってきた。子役でも大物でも灰皿を投げて教えてきてんだよ」「1ミリも妥協しない、死ぬ気でやれや!」と、これでもかとアピールした上で、中嶋に「あんたのせいで灰皿がべこべこになったから新しいの用意してくれや」と伝えて、出てきたのはごっついガラスの灰皿。こんなものを投げつけられた日には流血沙汰だろう。

その灰皿を中嶋が回すようにテーブルの上に置き、10数秒ぐらぐらと回転する灰皿。見つめる伊藤の表情もあっぱれだし、回し加減を調整できない要素を大一番に持ってきた度胸もすごい。ただ、灰皿の回転が止まったときの「他に灰皿なかった?!」(本間)が間も言葉のチョイスももったいなく感じた。もちろん小レースなので尺の制限こそあるにせよ、もうちょっとためてもよかったのでは。

ここから、演出家が日和り始める。いまだ演出家が表現してほしい感情として用いている言葉「タウマゼイン」を理解できない本間が聞き返すと、饒舌にタウマゼインの説明を始める。要するに、驚きを表現すればいいらしい。演出家が突如として説明を始めたのは、思わぬゴツさの灰皿で、当然投げることをビビッての翻意だろうが、この感情のゆれはもうちょっと丁寧に表現した方がもっと面白くなったと感じた。単に「あ、タウマゼインって意味不明な言葉だと思ったけど、ちゃんと意味があったのか」という1段階目の笑いがメインに受け取られてしまったのではないか。それと同時に「演出家がビビってる」というもっと重要な笑いが薄まってしまった。もちろんその後に本間の説明があるのだけど、時すでに遅し。

全体的にかなり面白かったのだけど、中嶋と演出家の関係がちょっとよくわからない(特に中嶋の動機)ように感じたので、どこかでそのあたりがあれば、最高だったなーという感じ。

●4組目:蛙亭


恋人の誕生日にプレゼントをサプライズで渡そうとしていて、フラれた女。誕生日に大好きな寿司を買って帰って食べようとしたら、すっころんでつぶしてしまった男。同じような境遇の2人を巡ったネタ。

なんというか、会話メインなのに演技が入ってこなかった。あと、中野のモンスターじみたデフォルメをした人間性と、2人の対称的な関係性を巡る“正論”のぶつけあい、どちらを掘り下げたいのかいまいちわからなかった。それがゆえに、中野のキャラがぶれているとも感じた。

たとえば中野は寿司をとっても好きだというならば、つぶれてでも食べるほどの病的なこだわりがあってもよかったのではないか。もちろん「寿司」としての形状、つまりネタとシャリが握られているあの状態を神的に拝めるのも病的といえるが、同じ寿司好きの自分はそこが引っ掛かった。帰って握り直せばいいじゃん、と。あるいはその場で無事なものだけを食べるとか。さらに、本当に寿司を好きならばなるべく安全に、はやく帰って鮮度や温度を保って食いたいでしょう。不慣れな交通手段なんか使わないし、岩倉と言い合いしないですぐ立ち上がって帰ってほしい。

逆に水掛け論にするならば、もっと脱線せずに中野に圧倒してほしかった。

オチも読めたし、前3組のようなインパクトや爆発力がなかった分、かなり見劣りしたように思える。「たまごの概念コーデ」とかはちょっとおもしろかったのだけれど。

●5組目:ジグザグジギー


元芸人の新市長が、芸人としての“さが”をどうしても出してしまうというネタ。
大喜利のフォーマットをいじるのはちょっと斬新に感じたが、そこに記者まで巻き込んでしまうことでリアリティーが失われた。審査員の飯塚が鋭いコメントをしていた。その通りだと感じた。市長の動機は「元芸人」というものが当然あるが、記者の動機がわからない。もちろん、展開としては面白いのだけど、ネタの結構という意味ではマイナスになってしまった。そこを掘り下げる場合は、もう一人が記者に扮するくらいでないといけないから、どうしようもなかった。

マニフェスト発表としてフリップを持った時点で展開はみんな読めたはず。問題はここの展開。大喜利というフォーマット自体をネタとしたことで、甘えがあったように思える。このような展開なら、フリップの中身でも勝負してほしかった。「共存」はちょっと笑ってしまったけど。その後にすぐ「捕獲して射殺」を出したのもよかった。「共存」といった後にすぐ「捕獲して射殺」と言い出すのはどういうことか。何かここから別の「お笑い芸人あるある」に展開してもよかったのでは。

また、細かい部分だが、新市長がフリップを出す際に、ところどころビートたけしらしさを感じたのに、言葉は関西弁だし、そのビートたけしがなんのフリでもなかったのは何だったのか。

●6組目:ゼンモンキー
今回の10組で、最もハマらなかった。3人目として登場したメガネの学生が、浮きすぎている。あざとすぎるというか。お賽銭を大量に突っ込むという所作などの内面と、キャラのガワがちょっとごちゃごちゃしてストレスに感じた。特に喧嘩する2人の間に割り込んでからは余計に違和感がある。

幼馴染の2人が同じく幼馴染の女性を取り合うという設定も、ちょっと食傷。もちろんそこに対しての新視点してのあの3人目なんだろうけど、いまいち何がしたいのかわからなかった。3人がそれぞれ機能していて構成的にはまあいいネタなんだろうと思うけど、どうしても笑えない。オチも余裕で読めてしまうし。

●7組目:隣人


動物園のチンパンジーに落語を教えるネタ。

明転して切り株の上にいるチンパンジー。そこに落語家が登場して「チンパンジーに落語教える仕事ってなんですか?」。当たり前のように座布団を敷いて、チンパンジーに一席ぶつ。あまりにも突飛な設定なのに、違和感がない。百聞は一見に如かずということか。いったいなんのためにこんなことをしているのか。誰が落語家に指示しているのか。逆にそうした余白が面白い。

10日目にしてチンパンジーの言葉を覚えて、その言葉で落語をする落語家。どういうモチベーションなのか。いきなりキーキー言いながら一席始めたのはかなり面白かった。檻の中のチンパンジーときっと同じくらい、いやそれ以上に驚かされた。そして見よう見まねで一席ぶつチンパンジー。そばをバナナに勝手に変換しているのが笑える。高知能なのか、なんなのか。噺の根本が「そば」という言葉にかかっているのに、果たしてチンパンジー語でどのように表現しているのか気になる。

そして、50日目。そばを食べ始めるのではなくバナナを剝き始めるチンパンジーと、よく50日も向き合っていられるよ。この取り組みの母体からいったいいくらの報酬を得ているのか。チンパンジーを叱る際にチンパンジー語なのも笑える。とにかく終始ばからしい。

こんなこというと野暮だけど、どこかでチンパンジーには人語を話してほしかった。檻を出る去り際にでも。10日でチンパンジー語を人間が覚えられるのなら、50日の間にチンパンジーもどうにかできるよ、きっと。

というかこれ、ネタがそもそも落語の噺になっているのか。いちいち幕間でしゃらくさいことを落語家が言っていたのもそういいうことだと捉えると、合点がいく。

●8組目:ファイヤーサンダー


サッカー日本代表選手のモノマネ芸人が、日本代表からその選手が落選したことに落胆するというネタ。
冒頭、日本代表として選ばれた選手が次々と名前を呼ばれていく。舞台には2人。左が代表ユニフォームを着た選手らしき男。→にいるマネジャーらしきスーツの男が、選手の名前が呼ばれるたびに「西田……」と祈っている。←の選手が西田なのだろうか。

選手の読み上げが終わり、結局呼ばれずに相当悔しそうに床に伏せるユニフォーム男。「コシニダ……」と声をかけるスーツ男。ここで、ユニフォームの男が「西田」のモノマネ芸人「コニシダ」ということが明かされる。

うーん、こういうバラシに重きを置いているネタはそんなに好きじゃない。その後の、スーツ男が「クリバヤシ」という代表監督のモノマネ芸人「そっくりばやし監督」だと明かされたのも、うーんという感じ。なんでなんだろうと思う。結構コントってこういうパターンもあるので、それなりの定石であるはず。それでも好きじゃないのは、どうも「出オチ」のように感じてしまうからだろうか。

まあ、この「モノマネ芸人」というバラシを巡って大喜利的に、ドラマ的にも展開があったのはいいのだけども、どうしてもバラシのインパクトを超えるものがないと、やっぱり出オチ的な感じをぬぐえない。モノマネ芸人あるあるという共感的な要素があまりないシチュエーションなので、共感的な笑いに昇華するのも難しい。

オチとかは結構秀逸だと思うのだけど、自分はいまいちだった。音響を使うシーンが多く、それがいい意味での余白としてではなく進行において結構重要なものだから、なんだか疲れもした。

●9組目:サルゴリラ


テレビ局のプロデューサーみたいな男・赤羽が、マジシャン・ルールに出演交渉をする的なネタ。

途中までは「変なマジック」みたいなテーマなのかと思ったけど、ルールの独り言「午前中区役所に行って~」から明らかにギアチェンジ。そこからは、胡散臭いマジックをしていたルールが、胡散臭いを通り越して物悲しい中年男性として笑っていいのだとわかるようになる。見方が提示されると、より笑えるようになる。

ツッコミ側の赤羽は、必要以上の言葉を弄さずに、表情などサイレントでためてためて、ドカンとツッコミ。これもすごく面白い。中箱Bが出てきたときの本当に嫌そうな顔で笑える。

カードマジックを赤羽にダメ出しされて、まともなマジックをやれと檄を飛ばされ、一生懸命に道具を片付けてその後にすぐ出してきたのが「靴下人参」。ここの緩急の詰め方はとても鮮やかで、そこからのイカ箱、ペンチピーチの流れも笑った。最初は余裕ぶっこいていたルールが、赤羽にお願いする立場になって必死になっているのも笑える。

考えると、ルールのマジックは全て何かを入れ替えることに特化している。しかも入れ替えるのは豆同士、風景のカード同士、あげくには意味不明な創作野菜・果物。なぜそれがすごいイリュージョンだと思っているのか。午前中に区役所に行って何をするのか。疑問が尽きない。

●10組目:ラブレターズ


いわゆる「娘さんを僕にください」シチュエーションのネタ。スーツ姿の純朴そうな青年(塚本)と、その男の彼女の母親(溜口)が茶の間に2人。母親の方は、ゴルフキャップのような帽子をかぶりサングラスをしたイカれた風貌。

お茶を運んできて2人で卓を囲み、しばらく間が空いて母親の一言「どうかしてると思った?」。曰く「彼女の実家(コントの舞台)がアパートで、シベリアンハスキーを放し飼いにしていること」を指しているようだ。面白かったのだが、それ以上に気になるのが屋内での母親の風貌。こっちには最後まで言及しないのが謎だった。

そこからシベリアンハスキーが吠えるたびに隣の部屋から「壁ドン」されて、それに母親が負けじと壁ドンをしていくという展開。付き合っている相手の実家で「逃げられない密室」というシチュエーション、さらに母親もイカれている設定において、壁ドンは一つの機能としてはいいけど、それで押し切るには力不足だったんじゃないかな。もっと部外者の存在を抜きに、密室の狂気で力強い何かが欲しかった。

隣人のVtuberから壁ドンをされる、ベランダに爆竹を投げ込まれる――というドタバタ劇なら、母親がここまで変な風貌をしている必要はないと思う。部屋の外から攻め込まれることによって、塚本・溜口の連帯感が生まれてしまい、2人の差異が生かされずに単にうるさいだけになってしまったように感じた。

最初の「どうかしてると思った?」のときは結構期待したのだが、ちょっと尻すぼみ。

個人的ファーストステージトップ3


さて、ここまでがファーストステージ。自分的にはサルゴリラ・カゲヤマ・や団がトップ3だった。
ここからが最終決戦。

●ファイナル1組目:ニッポンの社長


盲腸の手術をしているのだが、必要以上に臓器を取り出してしまうというネタ。
臓器の模型がそこまでリアルというわけではないのだけれど、なんとなく気持ち悪い気持ちが勝ってしまい、笑えなかった。

どこかで辻がツッコミすることは間違いなくて、そのタイミングとかは良いと感じたのだけど、天丼とバリアントがそこまで爆発しているわけではなく、なんとなくイマイチ。医師免許カードの伏線回収もややあざとく感じてしまった。

●2組目:カゲヤマ


オフィスで話し合う部長と中堅社員(益田)。部長は中堅社員に全幅の信頼を寄せているようだ。しかし、部長が自分のデスクにあった2枚の書類を目にして、一気に話が展開する。なんでも、部長の机に「うんち」が置いてあった事件の犯人を、部長が調べていたところ、益田が犯人だったらしい。

部長が全社員の髪の毛を集めて調査していたというのもなかなかだが、バレたあとに益田がかなりの間を空けて「僕は……どうなるんですか」とつぶやいたのもこれまたすごい。さらに益田はこの日が来るのを分かっていたかのように後任を準備しており、自分の仕事をまとめたUSBもその場で部長に手渡すほどの念の入りよう。

なぜ、期待のホープ・益田はそんなことをしたのか。部長が問い詰めるも、益田は決して明かさない。それどころか「部長のことはビジネスパーソンとして尊敬している」といったり、さらには土下座をして謝るのかと思ったら、そうではなく「部長の娘と付き合っている」「部長の娘のお腹には赤ん坊がいる」といった新たなカミングアウトをいくつもしたり。

この「なぜあんなことをしたんだ」「結局謝らないのかよ」という笑いがずっと続いていくんだけど、それはいいとして部長がしきりに口に出す「部屋」のメタファーがちょっと浮いていると感じた。益田がミステリ小説好きということももうちょっと何かほしい。

でも、しきりに提示される聞きたくない情報。そしてその中央にどんと居座る「なぜ、益田は部長の机の上にうんちを置いたのか」という謎。結局これを明かさないことがこのネタの面白さなのかもしれない。そして、最後にまた部長の机の引き出しの中に置かれているうんち。新たな謎が提示され、オフィスに電話が鳴り響いてネタが終わるのはなんだかかっこいい。

あらためて考えると、わけもわからないまま信用している部下に机の上にうんちを置かれて、しかもそいつが娘と付き合っていて子どもまで作っていて、しかもまたうんちが仕掛けられている部長がおもしろすぎる。余韻がすごい。

●3組目:サルゴリラ


高校野球の最後の試合で4番ながら活躍できずに負けた球児と、監督との会話を扱ったネタ。
球児を慰めようとする監督がこれでもかと会話の中に「サカナ」を盛り込んでくるという、いってしまえばそれだけのネタ。

だいぶ序盤で球児側は違和感を持っているのだけど、さんざん「サカナ」を泳がせて泳がせて、ドカンと突っ込む、1本目と同じような展開。それでもあまりにもねちっこいしゃべり方で監督がしつこくしつこくサカナを盛り込んでくるから笑ってしまう。

球児が怒りながら「絶対にサカナはやめてくださいよ」「サカナはやめろよ」と振りに振った上で「サカナは……」と切り出すのはめちゃくちゃ笑った。もう見ているこっちは完全にサカナの口だった。そこから「同じ釜の飯というサカナを食った仲間のサカナ」「ご家族のおサカナ」「昔お世話になったサカナ」という畳みかけでもうノックアウト。文句なしの優勝だ。

結び


去年のキングオブコントはそこまで盛り上がらなくて、今年もそこまで詳しくないコンビがファイナリストに多かったから、実はそんなに期待していなかった。しかしながら、蓋をあければ近年でもかなり面白かったと感じる。個人的には、ハートウォーミングな展開をする組がほとんどないのが良かった。来年にも期待。
そしてここからは、いよいよM-1の3回戦が近付き、あっという間に12月になれば決勝戦。楽しみだ。

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