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チャンスを逃した役者さんの話

これから役者になりたい人も多いと思うので、実際にあった残念なエピソードはたくさんあるので、参考にしていただく為にそういうのも書いていきます。
今日はその第一回目。

役者のAさん(女性)が今回の残念な人。

▼Aさんはこんな人。

Aさんは演劇の専門学校を卒業した後、30歳になるまでずっと小劇場の舞台に出演していた。劇団やプロダクションには一度も所属したことがなく、フリーでやってきた。とてもストイックで役者さんとしての演劇への向き合い方は素晴らしいのだが、それなりの大人になるまでフリーだったというのが残念な結果を引き起こしたような気がする。

フリーでずっとというのは、逆に言うと劇団員やプロダクションに入ったことがある人が知っている、些細な当たり前を知る機会がなかなかない、誰にも教えてもらえないし、注意を受けるのも演技でのダメ出しくらいで、演技面以外の指導を誰からもされなかったのだろう。(フリーの人が全員そうとは言わないがAさんの場合。)

前置きが長くなったが、どんな残念なことがあったかというと・・・

▼舞台俳優のAさんに映像の話が舞い込む。

Aさんに私が制作で携わった小劇場の舞台に2回ほど出ていただいた頃。当時30歳くらい。そのAさんが出演した舞台をキャスティング事務所Xのマネージャーさんたちが数名観に来た。そこでXの方々がAさんを気に入った。

Xは舞台もやるがどちらかというと、映像系の仕事を取ってくる事務所で、ある案件で探してた役にAさんがピッタリだということでAさんに声をかけたいと私に言ってきた。

私からAさんに話をしてみると、Aさんは「これまで舞台ばかりだったし30歳にもなったので、そろそろ将来のことも考えて映像系の仕事をしたいと思っていた。」と言うので、その場で両者を紹介し軽く挨拶してもらったが、本番後でバタバタしていたので後日改めて私からXに連絡することになった。

後日、とりあえず私がAさんのプロフィール(宣材)を用意してあげて、それと一緒にAさんの電話番等とメールアドレスをプロダクションXにメールで送り(もちろん個人情報の開示なのでAさんの許可を得ています)、その後についてはXとAさんでやり取りしてもらうことにした。


▼キャスティング事務所XとAさんのやりとり。

その後については、XとAさんから聞いた話なので曖昧な部分もあるが、↓こんな感じ。

・XからAさんに、案件の内容と撮影日のスケジュール確認のメールを送った。
・AさんはXからのメールをバイトの休憩中(午後)確認。帰宅をしてスケジュールを確認してから、翌日の午前中に撮影内容の承諾とスケジュールOKのメールを返信。

・この案件はオーディションなしで書類審査のみ。書類審査が通過したのでXからAさんに出演決定と併せてスケジュール確保のメールを送信。
・出演決定のメールをAさんが読んだのは、メールが届いた日のバイト終了後の夜。返信をしたのは翌日のバイト終了後の夜。

・撮影本番2日前の午前中に、XからAさんに撮影場所や入り時間などの詳細をメールで送った。

・撮影前日の午前、Xから私にご立腹で「Aさんに撮影の詳細をメールしたが返信がない。」と電話が入った。続けて「Aさんはメールをしても返信が遅い。今回もいつものことかと思っていたが、さすがに前日になっても返信がこないなんてどういうつもりだ。やる気がないのではないか。」と、なぜか私が怒られた。怒りの矛先がなかったのだろうけど、別にAさんは私のところの所属タレントっていう訳でもなく、たまたま携わった舞台に出演していただけで、Xが紹介してくれというから紹介しただけで、私はAさんのマネージャーでもなんでもないのだが・・・でも、紹介した手前、少しは責任もあるので動きましたけどね。

・私からAさんに電話するも留守電。バイト中だったAさんはお昼休憩時に折り返し電話をくれた。確認するとXからの撮影詳細のメールは届いていないと言う。Aさんのメール設定はパソコンからのメールも受け取れるようになっていると言うし、それまではXとやりとりしていたので届かないのはXのサーバのせいなのか、Aさんが使用している携帯会社のせいなのか。いずれにしてもAさんからすれば不可抗力ではある。
Aさん曰く、「バイトしているんだからメールの確認は遅くなるし、撮影詳細のメールが届かないのは自分のせいじゃない。」とキレ気味だったが、とにかく撮影引き受けているのだから、すぐにXに連絡するように伝えた。


その後、私からもXに連絡し、Aさんに再度メールを送ってくれるようにお願いした。翌日の撮影はちゃんとAさんも行ったようだけど、その後AさんにXから仕事の依頼は入ることはなかったという話。


▼なぜ残念な結果になったのか。

Aさんに落ち度があるのかと感じた人もいるだろうけど、メールが届かないというやり取り以前の、連絡が遅いというのは否めない。Xとしては「バイトしていようと、休憩時や終わってすぐ連絡は出来るはず。」というもの。

おっしゃる通りなんだよね。特に映像系のチョイ役とかエキストラって、前日にオファーが入るってのもザラで、連絡を早くっていうのは必須だったりする。スケジュールがその場で分からないなら、今は分からないので今日の夜に連絡するでも良いかっていうことをまずはすぐに連絡すべき。

このあたりのことは、そういう仕事を経験している人なら当たり前。舞台しかやってこないAさんには分からなかったのだろう。プロダクションに一度でも所属していたら、マネージャーから連絡は早くと教えてもらっている場合が多いけど、そういう経験もないのだから。

まあメールが届かなかったのは、Aさん悪いわけではない。メールの返事が来ないならば、XからAさんに、電話してみるという方法もあったと思う。私に電話してくるよりそっちの方が早いと思うのだが。でもキャスティング担当のマネージャーって忙しいからね。連絡来ないっていうイライラを誰かにぶつけたくなる気持ちは分からなくはない。

ただこのXのマネージャーさんは、本当に気が短くて怒りっぽい。訳の分からないことで怒られることはこれまでもある。八つ当たりってやつです。付き合いが長いからだろうけど、一応私はそこの会社の同僚ではないので、いかがなものかとも思うところもあるが、いつもそのマネージャーが切れた後、他のマネージャーさんから謝罪の連絡があるので、それはそれでそこの事務所もいろいろ大変だなと思うし、いろいろ仕事で関わっている事務所なので、もう慣れてはいる。


▼残念な人にならない為に。

この業界、1つの仕事が次へと繋がることも多い。逆に1回失敗すると次がない。新人ならなおさら。同じような年齢・性別・ルックスの人はたくさんいる、つまり代わりはいくらでもいるから。
名前が売れて、オファーがかかるようになれば別だけど。

フリーの場合は、自分が自分のマネージャーとして、きちんとマネージャーらしく仕事のやり取りができるかが重要だということです。

もし、AさんがXに早めに連絡をしていたら、メールが届かないという事態が発生したくらいでそんなにキレられていなかったはず。そこまででどんどん信頼を失っていたのが問題なんだよね。

きちんとやり取りができて、撮影もうまくいったのであれば、その後もAさんには仕事がきていたと思うので、残念な話だ。

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