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北斗の拳

私はテレビドラマが好きでよく見るのだが、最近楽しんでいる作品に『私の家政婦ナギサさん』という作品がある。
ストーリーは、MRとして仕事に邁進する主人公と、それを家政婦としてサポートするナギサさんを軸として、主人公の周りで起きる出来事や恋愛模様を描いたドラマである。
ストーリー自体も大変魅力的で楽しんでいるのだが、私は北斗の拳が度々登場していることにも注目している。

家政婦ナギサさんでは、第一話で、得意先の病院の先生が『北斗の拳』好きであるという理由から、主人公が『北斗の拳』と出会う。
そして、作中のことあるごとに、『北斗の拳』に準えた登場人物やセリフなどが登場する。

率直に言って、『私の家政婦ナギサさん』と『北斗の拳』のメインターゲットは大きく異なっているのではないか。前者は若い女性向けであるのに対して、後者は中年男性向けのコンテンツだ。
しかしながら、そのコンテンツを同居させている理由はなんなのだろうか。
私には以下の二つの理由があると考えている。

一つ目は、中年層視聴者の維持である。
若者のテレビ離れが叫ばれているが、中年層についても例外ではない。コロナウイルスの影響もあり、在宅時間が増えたことにより中年のサブスク動画サービスの加入率が伸びたというデータもある。しかし、テレビ側から見ると、中年層は人口も多く、まだまだテレビ文化も強く持っている視聴者層なので彼らを視聴者として維持していくことは重要なミッションである。
なので、完全に若者向けのコンテンツとして出すのではなく、「中年層にもわかる」や、「中年層だから分かる」”通な部分”をあえて作ることによって自分向けのコンテンツだと感じてもらい、テレビからの離脱を食い止めようとしているのではないか。少なくとも、中年向けのジャンルではないコンテンツについても興味を持ってもらうために行っていることは間違いなさそうだ。

二つ目は共通言語の設定だ。
インターネット社会が進んでいくに従って、情報は膨大に膨れ上がり、自分の好きな情報・欲しい情報だけに触れて生きていくことは簡単になった。しかしながらその弊害として、社会的なムーブメントを作り出すのは難しくなったかのように感じる。というのは、個人の専門化が進むことによって、コンテンツに反応するコミュニティの大きさが狭くなってしまっているからだ。だからこそ、大きな社会的なムーブメントを起こし、視聴率を稼ぐためには、普段は関わらないようなコミュニティ同士をつなげる共通言語を設定し、普段過ごしているコミュニティを超えて話題化させることが必要なのである。だからこそ、若者と中年を結びつける橋として『北斗の拳』を導入したのだろう。

今後も様々なコンテンツにおいてこのような傾向が見られるのか、検証してみたいところである。