見出し画像

ミナトゴハン×魚の旅         vol.3 2021.10.22           富山県射水市新湊 ”富山湾しろえび倶楽部”

富山県西部に位置する射水市新湊の白えび漁について知ったのは、コロナ禍直前の2020年1月上旬。

港からほど近い内川という地域で街づくりに携わっている明石博之さん・あおいさんご夫妻に射水の食について教えていただいた時でした。

富山名物として馴染みのある”白えび”はこの新湊漁港で水揚げされていて、しかもその漁を海上から見学できるように観光船の準備が進んでいるとの話。
漁を見学できるとはなんて楽しそうな!

それから6ヶ月後の7月に”白えび漁観光船”はスタートしました。

その観光船を始めたのが”富山湾しろえび倶楽部”。
白えびの資源保護に取り組み、持続可能な漁業を全国の消費者に知ってもらうため県や市の事業ではなく、漁業者自らで立ち上げたプロジェクトです。

観光船はその取り組みのうちの1つ、実際に漁を体験してもらうことで、白えびの乱獲を防ぐための取り組みやとれたてのおいしさ、魅力を知ってもらう事などを目的としています。

漁の解禁は4〜11月、観光船は4〜10月までの操業。
コロナ禍により1年越しとなってしまいましたが、2021年度最後の観光船の操業日10月22日に乗船してきました。

*筆者が抗体検査をした後、感染対策をした上で参加しました。

目次


1 白えび漁の準備風景
 

2 白えび漁観光船に乗船


3 水揚げ〜片付けまで

4 おわりに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1 白えび漁の準備開始

a.m4:00
白えび漁の出港は夜明け前の朝4時30分すぎ。夜明け前〜夜明けにかけた浅瀬にいる時間帯を狙います。
観光船は4時半の集合ですが、漁の準備が始まる4時に向かいました。

漁船が泊まっている場所は新湊漁港の中心にある競り場(水揚げした魚介を競りにかける施設)から少し離れたところ。
港の中は想像よりも真っ暗です。少し早く着いたので港の中を散歩していると船の方角に灯りがつきました。

船長、野口さんの漁船、正㐂丸(しょうきまる)です。
近づいていくと乗組員の方々も次々に船に乗り込み漁の準備が始まっています。

画像9



白えび漁は底曳網という網を海に入れ、その網でぐるりとえびの群れを囲み船の方に寄せながら引き上げる漁法。

船に書いてある記号はしろえび漁の船の印。定置網、カゴ網漁、一本釣など、それぞれの船ごとに獲る魚種や漁の種類が違います。

底曳に使う長さ80mある網を2人でタイミングを合わせながら船のヘリにかけています。

画像10

野口さん ”簡単そうに見えるでしょ、でもこれ技術がないとできないんですよ。この網をきちんとかけていないと海で網がきれいに広がらない。”

船の先端に重ねられているのはこの網を引き上げるため、網の両端につながっているロープ。

画像11


白えびが生息する場所は水深100〜400m。季節、日、時間によって白えびの群れのいる深さが変わるためその都度長さを変えて使うそう。

船内には魚群探知機などがコンパクトに並んでいます。

画像12

観光船の受付時間が近づいてきました。もう少し見ていたいところですが、出港する場所が少し離れているので移動します。

a.m.4:30
受付は港の競り場の脇に停泊している船の前にありました。黄色と青の看板が目印です。

画像13

船にはのぼりも。この可愛らしいロゴは一般公募で選んだものだそう。

画像14

白えび漁は乱獲を防ぐために8隻ある漁船を2班に分け、1日の漁に出るのは4隻と決められています。
漁に出ない船(休業船)を観光船として使います。

この日は縄井恒さんの漁船、栄勢丸(えいせいまる)が観光船として操業します。
船甲板には白えびを入れるザルを裏返した特等席が。
脇にあるロープも普段使っているものをそのまま置いてあるそう。

画像15

船長縄井さんの操縦で海に出て、海上では乗組員のお2人が解説してださると聞きテンションが上がります。
実際に漁に出ている方に直接お話を聞けるなんて貴重な機会!

すでに正㐂丸は出港し漁は始まっているとのことでしたが、この日は波が高いということで網を上げ始める頃まで陸で待機ということになりました。


a.m.4:50


乗船まで少し時間があったので、港に帰ってきた定置網船の水揚げを見せてくださいました。
観光船の方から見るとこんな感じ。朝の5時にこの賑わい。

画像17

何隻もの船からクレーンで魚が水揚げされている風景を間近で見ると迫力満点!
魚はみるみるうちに選別されてすぐ脇にあるセリ場にどんどん運ばれていきます。

画像16

これでも今日は魚が少ない方というのですから驚きです。

*注 船のそばは作業中で危険です。許可なく近づかないようにしましょう。

2 白えび観光船に乗船

a.m.6:00 


そうこうしているうちに空が少しづつ明るくなってきました。
海上からのOKが出たと言うことでいよいよ海へ出発です。漁船に乗るのは初めての体験!ワクワクします。

画像18

日本海の波は白波がたつようなザブンザブンというものではなく、うねるようにゆっくりと海面が上下するような動きなのだそう。大丈夫かなとちょっとドキドキしつつ乗船します。


a.m.6:15
港を出てほどなく漁船の近くに到着しました。船に酔ったらどうしよう、と思う間もない程に近い漁場にびっくり。
波も思っていたより荒くなく、気持ち良いくらい。

富山湾は他の地域に比べて漁場までの距離が近いのが特徴、ということは聞いていましたが、まさかここまでとは。
この漁場までの近さが鮮度が富山湾の強みのひとつ。他の魚介も漁場が近いため、新湊で揚がる魚介はどれも新鮮なまま競り場に並びます。

出港時にはうっすらと明るかった空がオレンジに色づいてきました。
立山連峰の日の出を海上から眺めるというのはなかなかできない体験!

画像19

正㐂丸も見えました。船の先端で2人が作業しています。

画像20

網を上げているところから少し離れた場所から見学します。船の向こう側にも白えび漁船がいます。

ちなみに新湊では8隻の船は同じ網を使い、漁の条件を揃えるため、プール制という方式で利益を8隻に均等に分けています。

これは競争からくる乱獲を防ぐための取り組みで、全国で取り入れているところは少ないそう。

海の中を覗き込んでいるように見えるのは、網に”ねじれ”が入らないように、作業・チェックしているところ。

画像21

朝日が徐々に登ってきました。

画像22

刻々と変わっていく景色が素晴らしく船と景色を交互に見るのに大忙し。
この日は虹までかかる大サービスでした。

画像7

a.m.6:30 帰港
網が上がりきる前でしたが、波の状態が良くないということで観光船はひと足港へ戻り、帰ってくる船を待つことに。
*波が穏やかな時は船の上でとれたてのしろえびを試食できるそうです。

3 水揚げ〜片付け

a.m.6:55 
船が帰ってくると船上で網からカゴに移したしろえびを港にあげて重さを測ります。
正㐂丸のこの日の船の水揚げはザル3杯分で120kgで普段よりも少し少なめ。

画像8


船からあげて、重さを測って、その場でセリをして(写真上 赤い帽子をかぶっている方がセリ人)仲買さんが持って行くまでわずか10〜15分ほど。
鮮度が落ちやすい白えびは水揚げのたびにセリが行われ、あっというまに仲買さんにカゴごと運ばれていきます。

画像5

8隻の漁船のうち1日の操業は4隻まで。1隻につき漁は2回まで。ですから1日の水揚げは多くて8回ということになります。
この日は波が高く、4隻出ていた船全てが2回漁に出れなかったので計4回のセリとなりました。

これがとれたてのしろえび。
手に持っているえびの後ろ側の指が透けて見えています。ピンと伸びた触覚やフォルムが繊細で美しい!

画像6

セリに気を取られていると、向こうの方では片付けが始まっていました。

画像3


網にかかっている魚をとり、網を片付けます。
ちょっとしたほつれを見つけたらその場で網針という平たいプラスチック製の針を使ってヒョイヒョイヒョイとリズミカルな手つきで編んでいきます。なんとも鮮やかな手つき!

画像4



破れがひどい時は網を港に広げ、乗組員約50人全員で1日がかりかけて補修します。

そのため、全部の船の網のチェックが終わるまでは漁に出ていない漁師も自宅で待機するのが決まりだそう。


えびを傷つけないように柔らかく繊細に作られている網は見た目には固そうなのですが、実際に触ってみるとサラサラとしていて絹のような手触り。
歯の鋭い太刀魚など網にとっては天敵ですね。

えびが直に触れる場所は細かく柔らかに、外側は目が荒く少し固めの糸、白えびを上から抑える網はさらに柔らかく、など、全網の場所により糸の素材や網目が違うつくりになっています。

picture_pc_6e4738f27c76275fe1aa97813d51bfd1.jpegのコピー

a.m.7:30 終了
この日は大きなほつれもなく終了となったよう。
これで白えび漁観光船の見学もおしまいです。

とれたてのキレイな白えびと雄大な富山湾の景色。写真や動画では体験することができない素晴らしい時間になりました。
唯一の心残りはあまりに楽しくて港でとれたての白えびの試食しそびれてしまったこと、、、残念!

*片付けまでの様子をを3分ほどの動画にまとめましたので併せてご覧ください。
とれたての透明な白えびや、素晴らしい手さばきの網の補修の様子ものせています。

YouTube  

 https://youtu.be/QrVJVwlcc9I

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4 おわりに

画像1

左からこの日漁に出た正㐂丸(しょうきまる)船長の野口和宏(のぐちかずひろ)さん、漁には出ないで競り場で仕事をしていた松宝丸(しょうほうまる)船長の松本隆司(まつもとたかし)さん、観光船の操業をしてくださった栄勢丸(えいせいまる)船長の縄井恒(なわいひさし)さん。

”富山湾しろえび倶楽部”の発起人の3人です。みなさん持続可能な漁業をしていくために日々話し合いながら活動を続けていらっしゃいます。3人誰に何聞いても同じこと答えますよ。いうくらい皆さん共通の認識を持っているそう。

昔はたくさん魚をとった船が偉い、という風潮だったけれど、それは違うと思っていた、とお話してくださった縄井さん。その違和感を着実に変えていく実行力が素晴らしい!

この”しろえび倶楽部”での活動を通して、まずは全国的に白えびの事を知ってもらいたいという野口さん、松本さん、縄井さん。
これからの活動も楽しみにしています。ありがとうございました。

富山湾しろえび倶楽部HP
https://shiroebiclub.net

白えび漁観光船
https://shiroebiclub.net/kankousenyoyaku/
*観光船は4月〜10月まで。
”富山湾しろえび倶楽部”HPより申し込みができます。

しろえび倶楽部 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCIG0H_e1VIC-6yl2nNCtcxA