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「Wings of Vi」人の意思は美しい、それが悪意だったとしても

出会い

 初めて見た時は、可愛いキャラのアクションゲーム。
 きっとふんわりとした難易度なんだろうと、興味も何もなかった。
 だが、当時の配信プレイヤーが悲鳴を上げつつプレイしてるのよく見て、私の考えはがらりと変わった。

これに溢れているのは悪意だ。

 アクションの難度が高く、精密な動作を要求するステージ構成。
 高いHP、執拗に主人公を狙う攻撃で、進行の邪魔をするのではなく、殺しに来る雑魚敵達。
 ゴリ押しが通じない体力差、行動パターンを見極めしっかりと回避しつつ、適切な攻撃をしなければ勝てない個性豊かなボス。
 思えばこの時に私の心は奪われたのだ。
 ダークソウルや、隻狼等の高難易度ゲームを好み、戦場を求める私が、このゲームを手にするのはそう時間はかからず。
 私の望み通りの地獄巡りが始まったのである。

美しい悪意

 先ほど述べた通り、このゲームは製作者の悪意に満ち溢れている。
だが、その悪意には全て意味があったのだ。
 その意味を理解し、攻略ルートを探すのはパズルを解いていくような快感が有り、見つけたルートを自分の腕で再現して、キャラクターにアクションとして反映させるのはとても気持ちの良い体験であった。
 プレイヤーを無意味に苦しめる悪意は無く、計算され、煮詰められた悪意は、ある種の美しさを私に感じさせた。
 それを意識した瞬間から、私は製作者と会話をするように独り言を呟き、まるで製作者と会話をするかのようにこのゲームを楽しんでいた。

ランダム性を排したボス

 ボスの行動パターンを4種類に分けられたとして、A、B、C、Dの4パターンなら、この4行動を1セットとして、全ての行動が終わってから次のセットに切り替わる。

 具体的には、
ABCDからAが選ばれる→BCDからDが選ばれる→BCからBが選ばれる→残ったCを行う→ABCDからCが選ばれる→ABDからBが選ばれる→ADからAが選ばれる→残ったDを行う→ABCDから・・・以下繰り返し

 このように、アクションゲームにある、苦手な攻撃パターンだけ来たから、負けたという事が起きないようにしていると共に、ある行動パターンの組み合わせが回避不可能な状況を作られるといった、理不尽も排しているのだ。
 勝つためにはしっかりとボスの行動パターンを把握する事で、初見は回避不可能に見える攻撃も、繰り返す内に躱す方法がわかっていき、敵の攻撃を誘導するための立ち位置を覚えて、タイミングを見計らってのジャンプやスラィディングが成功した時は、このボスに勝てるかもしれないという希望を抱かせてくれた。
 その後は夢中になって挑んでは、死んでを繰り返し、気が付けば意地になってボスと戦っていき、ボスを倒した時の達成感はとても大きな喜びを私に与えてくれた。

挫折

 ラスボスはすさまじかった。
 常に減り続けるHPを、二つの足場の片側に交互に落ちてくる回復アイテムで回復を行う、そのアイテムは時間制限で消えるので常に回復アイテムの為に移動を強制されるギミック、背景に見える魔法陣のそばに居続けると、回復不能な量の継続ダメージを与えてくる。
 ボスはそんな事お構いなしに攻撃を行い、両端から撃ってくるビーム攻撃は、中央の落とし穴に降りて、ビームをやり過ごした後に、空中ジャンプを駆使して足場に戻る。体を震わせた後に行う自キャラに向けた体当たりは、速すぎて予備動作を見逃したらほぼ回避不可能等、ギミックを除いたボスの攻撃事態も難易度が高かった。
 ラスボスと戦って何より辛かったのは、回復アイテムの落ちた場所と、ボスの攻撃の組み合わせによっては、回復不能なダメージが確定してしまう理不尽が発生するようになった
 今まで、製作者と通じ合えたと思っていた気持ちは私の独りよがりだったのかと悲しい気持ちになった。(初めから独りよがりなのだが・・・)
 何度も何度もやり直し、このボスだけで4時間を超えた時、今まで楽しかったViを嫌いになっていく私がいた。
 ここまで来た意地があり、諦めるという選択肢を選べなかった私は、だんだんと無感情でひたすら挑む、亡者と化していた。
 10時間を超した頃、クリアーしたら2度とやるものかと何度も喚きながらボスに挑み続けた私に、遂にその時が訪れる。

クリア

 私がラスボスを倒した時、呟いた一言は「からの~~~?」だった。
 倒した事が信じ切れず、さらなる形態(弱いけど油断したプレイヤーを狩るアレ)があると思いコントローラーを離すことができなかった
 流れるエンディングを見ながらも、SFC時代のドンキーコングが頭をよぎり、やはりコントローラーから手を離さず待っていた。
 当時、配信中だった私に、周りの既に「Wings of Vi」をクリアーしたプレイヤーがおめでとうと言う中、それでも私はコントローラーを離さなかった。
 エンディングからデス数、クリアー時間が流れ平和な世界になった世界を探索できるようになり、ようやくクリアーしたという実感と共にコントローラーを離した。

その後

 Wing of VI 以外にも面白いゲームは沢山有る。だが気が付けばViと比べてしまっている自分がいた。
 Viならもっと難しいのに・・・
 Viならこんな理不尽じゃない方法で苦しめてくれるのに・・・
 Viだったらボスを倒した時もっと気持ちいいのに・・・
 気が付けば、Wing of Vi を無意識に求める自分がいた。
 難解なパズルゲームのようなステージと、殺意を持った雑魚敵を潜り抜けた先のセーブポイントの喜び。
 動きが速いが、わかりやすい初動モーションのおかげで、こんな速い攻撃をかわせる俺ってすげぇー!と、思わせてくれるボス。
 数々の攻撃を掻い潜り、長い戦いを制してボスを倒した時の達成感。


 私は気づいたのだ
ラスボスを倒した時に発した一言。

「からの~~~?」

この言葉の本当の意味に・・・


福音

私は幸いである。
私にはまだ攻略していない難易度のDemonがある
クリアーした当初は、こんなん2度とやらねぇと思っていた。
だが今ならはっきり言える。
私にはそれが必要だ。
戦い続ける喜びが・・・
私は再び
「Wings of Vi」
と戦う

最後に

 これを読んでくれた人へ
 これは特殊な人の感想ですので、鵜呑みにせずにまずはデモ版をプレイして耐性を確認してください。
 それでも尚、このゲームをクリアーしたいというなら、どうぞ・・・・・夢を存分に追い続けてください・・・・・!
 我々は・・・・・
 その姿を心から応援するものです・・・・・・!

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