ポケモンカードにおけるnote記事有料化およびレビュー記事に思うこととその展望への期待

こんにちは、きたにちです。
今回はデッキ構築記事ではありません。
ここでは、昨今話題のnote記事の有料化ならびに有料記事をレビューした記事の登場について、僕なりの考えを述べたいと思います。
最初にお断りしますが、これは他の方に意見を強要するものではありません。

note記事が有料化されるまで

noteの有料記事が登場するまでを考えたいと思います。
まず、とーしん氏が新潟CLで使ったデッキについて、本人がポケモンカードのニュースサイトに記事を寄稿するという形でいわゆる「カエループ」に関する情報が公になりました。
ここでは各カードの採用理由はもちろん、試合中の各ターンにおける立ち回りなどが詳細に記されており、CLの配信卓における摩訶不思議なプレイングの意味が広く知れ渡ることになりました。
ここではまだポケカのnote有料記事は目立っていなかったように記憶しています。
ところが。


こちらの記事によると、CL新潟で有料noteを書くような動きが出てきたようなのです。
その後、いつしかnoteを有料で執筆する方が目立つようになり、様々なプレイヤーの方がここに参入するようになりました。

有料化の是非

まず、有料noteを購入しないことにはここを論じることはできないと思い、あむ氏のフーパブラッキージュゴンの記事を読ませていただきました。

正直申し上げて、解説もさることながらデッキの調整方法も言語化、体系化されており、感服いたしました。
有料記事の価値を毀損してしまうため内容を漏洩するわけにはいきませんが、記事中であむ氏は、勝敗における反省をしっかり言語化することを繰り返し説いておられました。
詳細は記事を参照していただきたいのですが、調整方法の部分に関してはいつ購入しても十二分に価値のあるものです。

さて、話を戻します。
noteを無料ではなく有料で提供することへの賛否について考えていきたいと思います。
まず、賛成意見について想定されるものを挙げます。
・実績を出せるプレイヤーの思考回路が公開され、そうでないプレイヤーも金銭を負担すれば容易にその思考回路を把握することができるようになった。
・有料化することにより収益をあげられるようになり、実績を出すまでの努力に対して対価が支払われるようになった。
次に、反対意見について想定されるものを挙げます。
・元々ポケモンカードは趣味や娯楽の側面が強かったのにもかかわらず、有料化により利益が発生するため商売の側面を帯びるようになった。趣味や娯楽で商売を行うことは不適切なのではないか。
・有料化がなされたが、その価値が金銭に対して不適切な事例が散見される。
などです。

賛成意見について

まず僕は、実績を出せるプレイヤー、つまりシティリーグやチャンピオンズリーグにおいて上位を安定して獲得しているプレイヤーの思考回路は、時としてそうでないプレイヤーと隔たりがあるように感じています。
今まではその内容は明かされていませんでしたが、金銭を払えば知ることができるようになりました。
その結果、現状よりも実績を出していきたいというトップ志向のプレイヤーのニーズが満たされたということは、歓迎されることだと考えています。
また、デッキ公開だけでは各カードの採用理由が不明だったものについても同じく明かされることとなり、実際に真似てデッキを使う際のプレイングの精度も向上したことでしょう。
そして、自らの勝利の手法を少し明かしたいと考えていたプレイヤーがいたとして、苦労して構築した勝利の手法を無料で公開することに抵抗を覚えるプレイヤーも多くいたのではないかと考えています。
金銭と引き換えにその手法を公開できることによって、対価を受け取れるようになり、今後のプレイヤーのモチベーションにつながるようになりました。

反対意見について

一方、反対意見についてです。
当初は今までの努力を金銭と引き換えに各プレイヤーに配分するという記事が多かったような気がしますが、最近では試合で上位を取れたのでそれを売りに記事を執筆するという方も多くなったように考えます。
有料である点は一緒なのですが、執筆の動機や目的が変わってきているのではないでしょうか。
そうなると、大型大会で入賞すれば間接的に金銭が手に入る、という思考回路に陥るプレイヤーが出現することは容易に想像できます。
これに対しての是非は今回は論じないこととします。
もう一つ、金銭と執筆内容が釣り合っていない現象に対して述べます。
僕が他に有料記事を多く購入して検証をすれば良い話だとは思うのですが、有料記事をレビューした方の記事を拝見すると、どうも一般的に知られているデッキタイプの説明に終始し、無料でも参照できるであろう内容が有料で販売されている現状があるようです。
別に購入は義務ではありませんので、本来ならばそのような記事は売上が伸びずに淘汰されると思うのですが、noteの構造上、当然ですが全文を参照してから価値を認めて購入するということが難しいのです(投げ銭を除く)。
したがって、序文を読んで続きを期待して購入したものの、思っていたような未公開の情報が記されていなかったという事態が起こります。
これについては、有名なプレイヤーの記事のみを購入する、有料部分ではどのような内容が書かれており、どこに新規性があるのかを明示している記事のみを購入するなどの対策を講じるしかないかと思います。

論文と比較してみる

突然ですが、僕はいま大学で卒業論文を執筆しています。
研究室で動き始めたのが数ヶ月前で、まだまだ先生に赤ペンだらけにされる状態ですが、毎日論文を読んでいく中で、noteにも似た部分があるのではないかと考えました。
論文は、自身の発見した新しい事柄について広く公開し、技術の発展に寄与したり未知の事柄を発見したりする目的で発表されます。
ここで、未知の戦い方を紹介するという意味ではnoteも似ているのではないでしょうか。
ただ、惜しいと感じることもあります。
ここでは、論文との比較を通じてnoteの課題について述べます。

論文との比較その1~新規性~

論文には新規性が求められます。
新規性というのは、今までの他の論文では触れられていない事柄を盛り込むことをいいます。
今までの論文で既に知られていることのみを触れたり、既に知られている結果のみを書いてもそれは認められません。
先述した「一般的に知られているデッキタイプの説明に終止していた」というケースは、新規性がないため認められないことになります。
今後有料のnoteを執筆される方には、新規性を必ず盛り込むようにしていただきたいものです。

論文との比較その2~開発の経緯、背景~

基本的に、論文にはなぜそのテーマで執筆しようと思ったのかを書く必要があります。
思いつきで、というのは通らないのです。
とはいえ、思いつくためには他にどのような論文があるのかを知り、他の論文では何が解明できていないのかを知る必要があります。
つまり、まず現状を述べて、そこではどういった課題があり、それを解消するためにはどのような方法を取ればよいのかについて説明する必要があります。
ですから例えば、他の論文では・・・ということについて書かれていたが、この点に関しては結論が出ていない。したがって本稿ではこれに対する結論を得ようと試みた。
といった論理展開をします。
絶対に理由があるはずなのです。
好きなデッキで優秀な成績を残せたとして、それをnoteに書くとします。
何も言わないと執筆者以外には、なぜ今の環境でそのデッキを握ろうと思ったのかが伝わりません。
ここが抜けている記事が非常に多く見受けられます。

この理由を言語化すると例えば、昔からこのポケモンの・・・という要素が好きでデッキに組み入れたいと思っていた。このポケモンには・・・という性質があり、これは現状の環境トップである・・・に・・・という観点で優位に立てるのではないかと考えた。そこで今回はこのデッキで試合に出ることとした。
となります。
好きなポケモンで出たというより、環境を読んでこれが最適解だと思ったから握ったという場合は、現状の環境トップには・・・というデッキがあり、これは・・・という性質を持っている。その性質に優位に立てる条件には、・・・というものがあると考えた。今回・・・という方法でそのカードを探したところ、・・・というカードが該当した。今回はそれをキーカードにして出場すれば良い成績を得られると考えてデッキを作成した。
となります。

言語化することは非常に大切です。
その理由は次で述べます。

論文との比較その3~批判的吟味~

批判的吟味という言葉があります。
そのとおり、批判的に書いている内容を吟味するという意味です。
世の中には一定数、俺の言うことを疑うのか、と言う方がいらっしゃいますが、論文の感覚ではそうです、という答えになります。
わざとか誤ってなのか、事実と異なる内容が世に出回ることがあります。
ただ、その場合でも書いている内容が100%事実と異なっているとは限りません。
10%かもしれません。
その場合、裏を返せば90%は事実だということになります。
それを他者が吟味できるようにしておけば、自分よりも博識な方がその論理の綻びを見つけてくれるかもしれません。
そのためには言語化して、第三者が執筆者の論理展開を後追いできるようにする必要があります。
ここで、上の段落で用いた例を使って、批判的吟味をやってみましょう。

現状の環境トップには・・・というデッキがあり、これは・・・という性質を持っている。その性質に優位に立てる条件には、・・・というものがあると考えた。今回・・・という方法でそのカードを探したところ、・・・というカードが該当した。今回はそれをキーカードにして出場すれば良い成績を得られると考えてデッキを作成した。

これに思いつきで単語を当てはめます。

現状の環境トップにはモクロー&アローラナッシーGXを軸にしたデッキがあり、これには技「スーパーグロウ」によって後攻1ターン目からサポート役の2進化ポケモンを立てられるという性質を持っている。その性質に優位に立てる条件には、2ターン目のこちらの攻撃でモクロー&アローラナッシーGXを倒すというものがあると考えた。今回2ターン目に炎タイプで140ダメージが出るカードをポケモンカード公式サイトで検索するという方法で探したところ、レシラム&リザードンGXというカードが該当した。今回はそれをキーカードにして出場すれば良い成績を得られると考えてデッキを作成した。

ここから、一文ずつ疑いの目を持って読みます。
・現状の環境トップにはモクロー&アローラナッシーGXを軸にしたデッキがあり
 ➞本当に環境トップにいるのか?
 ➞ジムバトルなどの優勝デッキを検索して優勝デッキにモクナシが多ければこれは正しいと考えられる。
・これには技「スーパーグロウ」によって後攻1ターン目からサポート役の2進化ポケモンを立てられるという性質を持っている。
 ➞これはカードを確認すれば事実だと分かるため、正しいと考えられる。
・その性質に優位に立てる条件には、2ターン目のこちらの攻撃でモクロー&アローラナッシーGXを倒すというものがあると考えた。
 ➞倒せばこちらが優位に立つことができるのか?倒しても次のアタッカーが既に相手の場におり、こちらのサイドを取りに来るという可能性は否定できるのか?
 ➞検証する余地がある。
・今回2ターン目に炎タイプで140ダメージが出るカードをポケモンカード公式サイトで検索するという方法で探したところ、レシラム&リザードンGXというカードが該当した。
 ➞炎タイプ以外で2ターン目に370ダメージ以上出るポケモンを探すという方法もある。別に書く際には触れなくてよいが、「今回~探したところ」の記述が仮に抜けていると、執筆者が炎タイプ以外による対策を探していないということが読者には伝わらない。
 ➞読者がこれを受けて、炎タイプ以外で対策ができるカードを探してみた場合、先述した新規性があるので、新たな記事を執筆して公開する価値がある。
 ➞レシリザ以外に条件を満たすカードは見つからなかったのか?という疑問がある。論文では不適切にデータを棄却することはご法度であるので、他にカードがあったのにも関わらずレシリザのみを挙げた場合、他のカードではモクナシへの対策にはならないという理由をそれぞれ説明する必要がある。
・今回はそれをキーカードにして出場すれば良い成績を得られると考えてデッキを作成した。
 ➞仮に環境トップに対して高い勝率が得られるデッキだったとしても、優勝までの間に踏む可能性のある他のデッキに負ける可能性はあるのではないか?

このように、批判的吟味を行うことで執筆者がもっともらしく主張していることでも、実は事実と異なるということを見破れます。
ただ、僕はこの文章をわざと事実と異なるように書いたわけではありません。
僕の持っていない価値観を持ち出すと、違った観点から新たな疑問や検証するべき点が出てくるのです。
繰り返しますが、そもそもこのように執筆者が理由や根拠、方法を文章で書いてくれないとうまく批判的吟味ができません。
ですから、このデッキを使ったら勝てたという結果だけではなく、そのデッキを作った過程も言語化する必要があるのです。

論文との比較その4~参考文献~

論文でやってはいけないことの一つとして、盗用、いわゆるパクリがあります。
パクリは、他者がやったことをさも自分が思いついたかのように書くことをいいます。
デッキを構築する上でヒントとなった他者のデッキがあり、それがジムバトルの優勝ツイートなどに載っているのであれば、このデッキを参考にしたということをURL付きで明記するべきです。
そうすれば、読者も執筆者はそのデッキからどの要素、カードを参考にしたのかを知ることができます。

論文との比較その5~引用~

ここでは、引用が有料記事という性質のためにしにくい、ということについて述べます。
論文は完璧に一から発想して書くとは限りません。
他者が「検証する必要がある」だとか「今後の研究が望まれる」としている箇所に着目し、検証したり研究したりすることも多くあります。
例えば、先行論文では・・・という結論に達しているが、5年前はまだ・・・というものは登場していなかった。そして、登場したことによって・・・が変わった。だから今の環境でも結論は変わらないのか、ということを調べることを試みた。
みたいな論文もあるのです。
ポケモンカードだと、新弾が発売されて環境が変わった場合が当てはまるでしょうか。
しかし、そういった論調にするためには先行論文ではどういった内容だったのかについて絶対に触れなければなりません。
ただ、先行する記事が有料である場合、こちらが無料で書いてしまうと部分的であっても有料の内容を無料で転載していることになります。
それが果たして許されるのでしょうか。
論文では、データベースといって膨大な数の論文にアクセスできる論文用googleみたいなものがいくつかあるのですが、無料のものも有料のものもあります。
ただ、有料のものはデータベース全体を見るための課金をするだけで、各論文ごとには課金が発生しません。
つまり、定額読み放題なのです。
したがって、こういった問題は起こり得ません。
今後、環境が変わったときなどに読者が新たな角度から昔の有料noteの内容を吟味し、そこからヒントを得たとして新しい形のデッキを生み出したとき、書けないという事態が発生すると思います。
もし昔の記事の内容を参考にしたにも関わらずそれを明記しなければ、それは盗用になります。
ですから、例えば期間経過後には無料記事への引用を認めるだとか、新たな観点でデッキを考察するという目的であれば引用を許可するなどといった方針を執筆者が示さない限り、この試みはできません。
これができるようになれば、もっとポケモンカードの議論が活発化し、強いデッキとは何かという答えに近づけるようになると考えます。

レビュー記事に思うこと

ここまで論文と対比させてnoteの課題を述べました。
ここで、昨今話題の有料記事に対するレビューを述べた記事が登場していることについて私見を述べます。
ちなみに、この記事のことを言っています。


結論から言うと、歓迎されることだと考えます。
投稿者も指摘していましたが、noteにはその記事の良し悪しを第三者が決める仕組みが存在しないために、新規性のない記事も他の記事と同様に公開されている現実があります。
論文であれば第三者機関がその内容についてチェックを行い弾くのですが、レビュー制度を設けて価値のある記事が目立つようにし、そうでない記事を実質的に弾くという方法も一つだと考えます。
ここで、ひとつ主張をしておきたいことがあります。
投稿者も触れていましたが、引用します。
「今回の記事は完全に僕個人の主観でしかないので、各々これはもっと評価高いだろ、低いだろ、というのがあるかと思います。が、僕としてはそういう感想を共有する風土が育って、それがnote記事のクオリティの向上に繋がってくれれば良いな、と考えています。」
つまり、人によって各カードやデッキの評価は異なるのです。
それに対して例えば、・・・というデッキは強いから執筆者の意見は間違っている、という指摘は不適切です。
指摘した人がどのような観点で考えた結果、執筆者と意見が異なる結論に至ったのかを明記しなければ、指摘したところで新たな結論は得られません。
意見の押し付け合いではないのです。
どのような観点で、の部分があれば、先述したように違う観点では異なる結果が得られるかもしれない、という発想も生まれ、月日が経過しても利用価値のある意見になる可能性があるのです。
あと、結論は一つではありません。
調査する方法や時期が変われば結論も変わります。
ですから、どれが本当に一番正しい結論なのか、どの結論が間違っているのか、という観点で読むのはこれまた不適切だと考えます。
この方法で調べたらこういう結果になりました。
そしたらこういうことが言えるのではないかと思います。
これ以上も以下もないのです。
ですから、読者の方は合っている、間違っているという短絡的な思考をするのではなくて、記事を受けてもっと調べるべきことはないかですとか、もっとこうしたら良いデッキになるのではないかとか、そういった視点で議論していただけるようになるともっと建設的な議論になっていくと思います。

以上です。
7500字ほど、長文ながらここまで読んでくださりありがとうございました。
2019年5月30日
きたにち

追記: 「note記事が有料化されるまで」の項、一部表現を見直しました。また、加筆しました。(2019年6月11日)
追記: 「賛成意見について」の項、「チャンピョンズリーグ」の誤表記を「チャンピオンズリーグ」に改めました。ご指摘ありがとうございます。



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