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冥王の日 覇王の月

あなたはオーラの存在を信じますか?

めっちゃ怪しいこと言い出した。
しかしそうとしか言いようのない肌で感じる気迫のようなものって、実際ある。「あるんだよなぁ」と思うようになりました。アイドルを見るようになってから。

私のアイドルジャンルへの入り口はAKB48でした。
振り返ってみると、AKB48って…アイドルとしてかなり最悪!!! 思い返さなくても当時から思ってたが!!!
まず生で歌わない。今はどうなのか知らないのですが…。すごくないですか? ライブとかコンサート行ってCD音源流れてるの。ダンスもぬるい。なぜなら個人指導レッスンなんてものは無いので。じゃあビジュアルが最強に良くて顔を眺めてるだけで米が食えるかって言ったらそんな感じでもなく。

そんな人たちがほぼ毎日劇場で公演をやるってなって、一体何を武器に戦えというのか。歌もダンスもそこそこで人を魅了しろって、腕と脚を縛られて泳げっていうようなもので。

そんな人たちが獲得した技能というのが、表情、そして「覇気」とか「オーラ」としか言いようがない何かなんですよね…。
私はそれを見るのが好きで、AKB48のコンサート映像を端から見ていました。

定期的に思い出してはいまだに見ているのがこれ。

薬師寺奉納公演『スカート、ひらり』

怒ってんのか????????
怒ってるのかもしれない。このメンツはいわゆる「神7(セブン)」と呼ばれたメンバーなわけですが、この曲は本来この7人で歌う曲というものではないんですよね。
「神7で『スカート、ひらり』をやろう」という意図があって組まれたステージなわけです。

そもそもAKBでよく聞く「神7」という括りが何なのか、正確には知られていなかったりしますよね。なんとなく上位7位までの人気メンバーのことだろうと認識されがちなのですが、本来この呼び方は、特定の7人のメンバーを指す言葉でした。
メンツは、

前田敦子  大島優子  篠田麻里子  渡辺麻友  高橋みなみ  小嶋陽菜  板野友美 

これが第一回選抜総選挙、つまりファンによる人気投票の上位7名。順位順。
そして第二回選抜総選挙の上位7位というのが、1位から順に、

大島優子  前田敦子  篠田麻里子  板野友美  渡辺麻友  高橋みなみ  小嶋陽菜

つまり二回人気投票をやって、上位7人は順位は入れ替わっても顔ぶれが変わらない、不動の最強メンバーだったと。そこから「神7」と呼ばれるようになったそうです。へぇ~!
ちなみに第三回でここに3位で食い込んだのが柏木由紀で「神崩し」と呼ばれたりしました。カッケェ~!
(さらに言うと8位に順位を落としたのは板野さんなんですが、この年から「神エイト」という呼び方が生まれました。ともちんがいるところまでが神の領域ってワケ。自由か。元々メディアが箔をつけるために呼び出したみたいなことを見た気がするので、増える分にはいいんでしょう。)

この薬師寺公演は2010年、第二回選抜総選挙の3、4か月後とかにやっているので、神7という呼び方が出来た頃なんでしょうね。104人の中の頂点に君臨するメンバーなわけなので、そりゃあ強い。AKB48という世界において、はちゃめちゃに強い。
そんなメンバーにやらせている曲が『スカひら』なんですよ。

悪趣味。笑

『スカート、ひらり』とかいう曲。2006年、AKB48のインディーズ時代二作目のシングル。アキバ系と軽んじられ、「パンツ見せ集団」と揶揄された頃の曲です。MVとか、もう、あんまりで見てらんないよ……っ! 
一応7人用の曲ではあって、当時の選抜メンバーが「スカひら7(セブン)」と呼ばれていたという文脈があるといえばあるっぽいのですが、もっと他にいくらでもふさわしい曲があるだろ。
サクッと言ってしまうと、「最強メンバーに最弱羞恥ソングをさせる」ものになってるんですよね。
そうやって見ると、メンバー全員が放つこの異様な圧、「私の前に立ったら殺す」と言わんばかりの気迫に納得がいくところがある。目が笑ってないんよ。絶対に黙らす、誰にも軽口を叩かせないという気概を感じさせるステージ。何度見ても味がする。大好き。


もういっちょいくか。

『残念少女』
前田敦子・北原里英・高城亜樹シャッフル

転載されすぎて音ズレが年々大きくなってく、半永久的にインターネットから消えてはアップされを繰り返している動画。この映像を忘れられない人間がずっといるのでなくならない。かくいう私もそのような人間の一人です。

私のAKB48への入り口は前田敦子さんでした。
世間からは可愛くないと雑に叩かれ、オタクからはゴリ推しセンターだとかやる気ない省エネダンスだとか性格悪くて握手会対応塩だとか怨念込めて言われまくっている、その中でこういうパフォーマンスをする。黙るしかない。
あの大所帯グループの頂点にいた人の属性が「虚無」なのヤバすぎんか?

48の曲の特徴として、劇場公演曲というものがあります。
シングル曲がいつも「”奥手の僕”目線でキショイ」と言われがちなAKB48さんでしたが、彼女たちの持ち曲は「AKBシアター」というホーム、劇場でしかやらない曲が全体のほとんどを占めています。私が追ってた時でもグループで400曲くらいあった。
そして劇場というくらいで、その楽曲はシチュエーション色がとても強いです。
笑顔で歌う曲だけでなく、切ない表情や怒りすらあるような力強い曲、病んだ曲まで多様で、それを秋元康がメンバーやチームにあて書きするように歌詞を書く。(よって公演曲の一人称は圧倒的に「私」が多い。)
つまり歌とダンス以外の部分での訴求力が異様に強い。

そしてある時期からの前田敦子さんはこの、絶望の中にある少女の曲を有無を言わせぬ圧をもってやるようになります。

この『残念少女』という曲は元々まゆゆの公演曲で、コンサートでは「ユニットシャッフル」といってメンバーを入れ替えてサプライズ的にパフォーマンスすることがありました。登場時のどよめきは、「この曲をあっちゃんが!?」の声です。良い…。
限界まで抑えられたダンス、けだるげでありながら一切無駄の無い動き、真に迫るセリフ。タナトスを宿したこの目。

いわゆる表情管理とも違って、なんならニコリともしないで一曲を終える。それでも息を詰めて見てしまうようなただならなさを感じる。「歌詞の体現」というところで最強だったんですよね…。
なのでやっぱり、「AKB48の顔」だったんだと思います。好きだった。


「PRODUCE48」という番組をご存じでしょうか。


元々PRODUCE100やPRODUCE101など、「PRODUCEシリーズ」という感じで韓国で展開されていたアイドル練習生の公開オーディション番組のシーズン3として2018年に放映されました。
「48」とあるように、シーズン2までにかなり注目が集まるコンテンツになっていたプデュシリーズに、なんでか48グループが参戦します。マジでどういうこと? 何の力が働いたん?

最終的に48グループからは3人のメンバーが投票で選ばれて勝ち抜き、48グループの活動を休止してこの番組から生まれたアイドルグループに所属し2年ほど活動しました。この番組で世界のサクラミヤワキが生まれたというわけです。

この番組のスタート時、能力に応じたクラス分けのためのパフォーマンス発表で48Gメンバーは韓国の練習生のレベルの高さにコテンパンにされます。
まあ…でしょうね。

そんな中で出された宮脇咲良さんのパフォーマンスがまさに48的で、歌えんし踊れんし、けど目が、戦う者の目なんですよね…。それが評価されて上のクラスに選ばれるという。
またこの時やった曲なのが「黒い天使」なのがたまらん。前田敦子の代表公演曲です。歌やダンスのスキルというところでなく、圧で黙らすための曲をここにもってくるの天才過ぎて頭抱えちゃったな。

ついでにクソ強韓国練習生の映像も置いておこ。

ユジニ!! ウォニョたま!!! 
これでデビュー前っていうんだからスゲ~と思いつつ、やっぱまだ上手いだけなんですよね、この時は。

うまい歌を聴きたいならプロの歌手のコンサートに行けばいいし、うまいダンスを見たければプロのダンサーを見に行けばいいわけで、じゃあアイドルって何を見せるのかって、究極のところ剥き出しの「命」なんだろうなと私は思っています。
その表出として、オーラだとか覇気だとか圧だとか言い様のない何かがあり、それがその道のプロでもないアイドルのパフォーマンスを特別なものにしているんじゃなかろうか、と考えたりします。


せっかくなのでインターネットに現存する好きな動画貼っちゃお。
2010年代ってあらゆる映像がwebにアップされててそれは普通に違法だったんですけど(ダウンロードはまだ違法じゃなかった)(それもすごいな)、ほとんど消されることなく野放しにはされていて、結果それを見てファンがつく流れだったので、アイドルに関しては私は見せられるものは見せていった方がいいんじゃないかと思っています。公式でやってほしい。K-POP方面はやれてますよね。そういうところだぞ。

パート分けが全然ないのは「一丸となる」ステージを意識したものなんだろうな。チームKは「体育会系」と呼ばれたチーム。この曲はそんなチームKにあて書きされたと言われてます。
この時のパフォーマンスはは再編成された2代目チームKによるもので、Kの柱だった2期生の大島・宮澤・秋元を残しつつ、Aから来た板野・峯岸がK的な熱いパフォーマンスをしてるのがエモかった。この時は秋元才加さんが不在なのが惜しい。
こうやって見ると明らかに大島優子さんのステージ力がズバ抜けてるな…寄りでも引きでも…。身長152cmって感じではない。ラストカッコ良。

東京秋祭り『転がる石になれ』 チームK


この映像面白すぎる。球技大会というイベントの終わりにやったパフォーマンス。金テープを巻いていることから分かるように直前までめちゃくちゃ遊んでたっぽいのだけど、この曲『Pioneer』はチームAの魂ソングなので、これをやる時は基本皆覇気を纏う。切替どうなっとんねん。
これも再編後の二代目チームAなので、一期生である前田・高橋・篠田・小嶋は特に圧が強い。さっきまでめちゃめちゃちょけてましたよね?

球技大会『Pioneer』 チームA

流れ的にチームBの動画が来るべきなんだけど、チームBのパフォーマンスってアイドル路線で多幸感が強いのでオーラとかそういう感じではないんだよな…。そのへんもいずれ書きたい。楽しい部分なので。

東京秋祭り最高なんだよな。昼間にぐだぐだカラオケ大会やってたとは思えない。Beginner大好き。
前田敦子さん、10代前半の頃はダンス未経験で運動も得意ではなく、たしかにこれは「省エネ」と言われても仕方ないか…的な動きの小ささだった時期もあるんですが、その後雑さのない曲線的で美しいダンスを体得して、どこで切り取ってもポーズが完成してるみたいなパフォーマンスになっているのがこの映像とかでも分かる。ストイックだ。

東京秋祭り Beginner 選抜メンバー


ただ、この辺のAKBさんの放つ覇気って、倫理の無い世界で理不尽と辛酸を舐めさせられ混沌の泥の中から生じたものなので、今この令和で好きなグループにこれをやってほしいとはあんまり思わない。明るい覇気を放って欲しい。

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