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8月20日 芸術の夏、上野


今日は、とんぼさんと上野を巡る。とんぼさんは、写真を撮ることが好きな写真友達だ。


まず、とんぼさんおすすめの「羊香味坊」にてビャンビャン麺をたべた。おいしいお店でした!他の羊料理も、食べたい。また来たい。

ビャンビャン麺と半チャーハンセット


〈生まれておいで 生きておいで〉




東京国立博物館にて行われている内藤礼さんの展示
『生まれておいで 生きておいで』に向かった。
この展示は、前からずっと楽しみにしていた展示だ。

会場になっている国立博物館は沢山の文化財が展示されている日本最古の博物館。
内藤礼さんは日本の美術家で、造形作品やインスタレーション作品など、主に空間を扱う作品を作り続けている方。

場所と作品が共鳴し合う、面白い展示になっているのだろうなと、朝からワクワクしていた。


さっそく本館から入ると、第2会場の入り口が現れた。
とんぼさんと困惑していると、スタッフの方が、第3会場まであるということを教えてくれた。

本館から、隣の平成館にある第1会場へ向かう。


なぜか遠い第1会場



正直ちょっと遠かった。

常設の文化財展示スペースをいくつか通り過ぎて、たまに立ち止まって文化財を鑑賞したり、博物館の建築に感動したりしながら、やっと第1会場にたどり着いた。

そこから第2会場へ向かう時も、第3会場へ向かう時も、意図して迷わせてるのかと思うくらいぐるぐると歩かされた。
文化財や人間を、たくさん通り過ぎた。

第1会場 平成館企画展示室 (1回目)



第1会場の入り口で、この展示を鑑賞するにあたって
第1会場→第2会場→第3会場→第2会場→第1会場
という順番があるという説明を受けた。

初見とはまた違った見方で鑑賞して欲しい、という理由らしく、自分達もその順番通りに回ってみることにした。


1回目の第1会場は、宇宙のように感じた。


展示ケースにとどまらず、さまさまな色の毛糸の玉が色々な高さで吊るされていた。暗い会場内を、球体が浮遊している空間は、惑星と宇宙のように思えた。

雑なイラストで第1会場を再現



しばらく鑑賞していると、さまざまな色が、さまざまな感情にも見えてきた。誰かの心理状況を覗いてるようだった。


この第1会場はスタート地点であり、ゴール地点でもある。

最終的に自分はどう感じるのだろう?

(ちなみに今回の展示は全て撮影禁止だったので、作品の写真が掲載されている美術手帖のリンクを貼っておきます。)

⬇︎



第2会場 本館特別5室 (1回目)



第2会場では、大量のガラス玉が吊るされていた。真ん中には大きな木の板が置かれていた。
板をじっと眺めていると、スタッフの方に

「これは、上に座って鑑賞していただくための板になっております。横になっていただいても構いませんよ。」

と言われたので、さっそく寝てみた。

さっそく寝てみた図



仰向けになって、大きな天井を眺めた。

寝てはいけなさそうな空間で、急に寝てもいいと言われて、横になる違和感。それだけでウキウキする。

ガラス玉の他に、石や、綿や、木の棒や、毛糸もあった。無我夢中で絵を描いた時に、机にはみ出てしまったクレヨンの線、のようなものもあった。

子供の頃に遊んだ広場を思い出した。遊具がなにもなくても、その場のもので、工夫して楽しんでいた時間。その場で出会ったものを使い、純粋にたのしいと思っていた時間。

第3会場 本館ラウンジ



第3階上へいくと、瓶の中に水が入っているものが置いてあった。それだけだった。

第3会場にて

ただ瓶の中に水が入っているだけなのに、みんなまじまじと眺める空間、面白い。

本当は何でもないものなのに、すぐに意味を見出さなくてはいけない気持ちになる、思えば今までの会場でもしていた?
なんか人間らしい、なんて思うのも人間らしい。

言ってしまえば何の変哲もない瓶なので、これがもし近所の道端にあっても、多くの人は気づかず通り過ぎるのではないだろうか。

なにものでもないものをみつめるとき、あらためて向き合い、何か感じ取ることの面白さを、すごく感じる空間だった。

まるでこの世界で生きる意味を確かめようとする、心配性で繊細な(と自分はたまに思う)人間という生き物の、人間らしさを、包み込まれ、許され、迎え入れてもらったかのよう。

なんて壮大に捉えて考えてみる。

この展示は最初に「生まれておいで、生きておいで」と言っているのだから。

この空間が最後の会場であり、そして折り返し地点でもある、ということになる。


(ちなみにこの展示は、説明文などが全く無く、さっきから話している展示の感想は、本当に個人的な意見、感想として暴走しているものです。ご了承ください…!)

第3会場の壁


第2会場 本館特別5室 (2回目)



第2会場にもどってくる。


さっきの木の板にもう一度寝転んでみた。

吊るされたガラス玉が、雨に見えてきた。

立ち上がり、ガラス玉の真下まで移動し、ガラス玉を見つめてみた。
雨の日に上を見上げると、目に雨が入りそうになる時の感覚に陥った。

吊るされたガラス玉と雨の図

これは雨なのかもしれない!とひとりでに興奮する。このガラス玉の作品は『無題』なので、自分の想像力を駆使して日常の何かに重ねることもできるし、透明な丸い物体をただ見つめ続けてもいいのだろう。



そして、1回目では見つけられなかった作品に出会った。


所々でキラキラと光る四角い小さな紙の作品だ。
小さな紙が、風に揺れてキラキラ光っていた。

まぶた


この作品には『まぶた』という名前があった。


まぶたって…なんていい作品名なんだ。
ひらひら揺れる紙が、瞬きのように見えるからだろうか。その3文字は、紙切れに全く関係ないようで、それなのに全く邪魔をしていない。もはやこの作品には、まぶたこそがしっくりくるのかもしれない。名前って面白いな。


思ったより、2回目の鑑賞で発見が多いことに気づく。こんなにも新しく出会えるのなら、どんな展示であっても、最後で折り返して、スタートまで戻ってみるのもいいのかもしれない。

第1会場 平成館企画展示室 (2回目)



正直少し歩き疲れていた。ベンチに腰をかけながら第1会場の作品を眺める。
毛糸の玉が、今度は宇宙にも、感情にも見えなかった。

シマエナガみたいな、小さな生き物に見えてきた。色の違いは、それぞれのシマエナガが持つ個性。

第1会場の毛糸がシマエナガだったら



ひとつの空間に、さまざまな色が存在する。

という関係性で考えた時、北海道のシマエナガたちも、宇宙に浮かぶ惑星たちも、心に潜む感情も、そして会場内にいる自分たちも、どこか似ているのかもしれない。


また、展示ケースの中には『土版(紀元前2000〜400)』と、内藤礼による『死者のための枕(2023)』が置かれていた。


土版の制作年に目が飛び出そうになる。想像できないほど昔から存在している土版が、ポツンと、展示ケースに置かれてこちらを見つめている。

「お前はまだ21年間しか生きていないのか。」

と、言わんばかりに。

土版と対になる位置に『死者のための枕』が置かれている。

展示のスタート地点であり、展示のゴール地点でもある第1会場に

『死者のための枕』が置かれているのだ。

この死者のための枕が、はじまりから存在する様に、何かが始まるということは、同時に終息するということなのかもしれない。


(何度も言いますが、この展示には説明文がないので、すごく個人的な感想です。

『死者のための枕』はこちらからみれます!)

⬇︎


この展示を通して感じたのは、生まれて死んでいく生命という存在に触れる、はじまりから終わりにかけての感覚。


時間でもないし、形にも音にもまとめられない。そういう意識の現象みたいなものが、展示を通して起こっていたと思う。


東京国立博物館はすごく広い。そして建築がかっこいい。会場から会場へ、博物館を歩き回っているうちに、窓から差し込む光の角度が変わっていることに気づく。


特に第2会場は自然光がたっぷりと降り注ぐ空間なので、1回目と2回目では会場の色味がかなり変化していた。私たちは、自然と変化を感じながら、会場を行き来していたのだろう。

窓からの光 本館にて




国立博物館の裏庭に周り、セブンティーンアイスを食べた。


アイスがどんどん溶けて地面に垂れて、地面にアイスで水玉模様ができてしまった。

とんぼさんがそれをみて

「この地面に落ちたアイス、作品みたいですね。」

と言って笑っていた。

左が自分で右がとんぼさんです


とんぼさん、完全に内藤礼ワールドに引き込まれているじゃないか。
とんぼさんは、アイスだったものを、いろいろな角度から真剣に撮っていた。

博物館の裏にある池とアイスの棒
博物館ととんぼさん


〈国際こども図書館〉


上野公園を抜けて、国立国会図書館 国際こども図書館に向かった。

この図書館には、レンガ棟アーチ棟がある。

レンガ棟はルネッサンス様式の洋風建築で、その歴史は明治時代から続くものだそう。当時から増設を繰り返しており、現代の形に収まっているらしい。

レンガ棟の階段
アーチ棟


ホールに張り出し窓があったり、ラウンジでは元々外壁だった煉瓦がそのまま室内に残されていたりと、今と昔が入り混じったような作りになっているのが面白い。

外壁に触れるとんぼさん



図書館では

「絵本で知る世界の国々―IFLAからのおくりもの」

という展示が開催中で、世界各国の絵本が読み放題だったので、世界各国の絵本を読んでみた。


絵本が並ぶだけでも、その国の経済状況や重視している問題が分かりやすいことに驚いた。

特に印象的だったのはフランスの絵本

他の国と比べても、多様性を意識した絵本が多く置かれていた。そういうテーマの絵本、日本ではあまり見かけないような気がする。

幼児が読むには、早いのではないか?と少し思った自分の感覚は、日本人としての、絵本に対する感覚なのかもしれない。


そんなフランスの絵本の中だと『Buffalo Belle』『Cap!』の2作品が興味深かった。

『Buffalo Belle』Olivier Douzou


『Buffalo Belle』はトランスジェンダーの子供を扱った作品で、ひとりの女の子が成長するにつれ男の子らしい容姿になっていく様を描いていた。フランス語で、詳しくは読み取れなかったけれど、ラフに描かれた線から生まれる表情の中に、主人公の様々な感情を読み取ることができた。

『Cap!』Loren Capelli


『Cap!』は、邦題だと『勇気!』だ。

赤いセーターを着た女の子が森の中を走っている。読者から見て、ずっと象徴的だった赤いセーターは、最終的に解けて赤い糸になり、女の子はありのままの姿になって飛び出す!というラスト。

未知の世界(未来)に飛び出すのは若者(子供たち)なのだ、というメッセージを勝手に感じた。
ほぼ文章のないこの絵本を、大人たちがどうやって子供たちに読み聞かせるのかが気になった。

調べていたら作者の作品サイトが出てきた!

⬇︎



絵本をみていたら、いつのまにか閉館時間になってしまった。これにてとんぼさんとの上野巡りは終了。


〈帰り道〉


駅まで戻る途中、上野公園で行われていた野外フェスから陽気な音楽が聴こえてきた。聴くだけでも疲れてしまうくらいの、大音量の陽キャ音楽だった。

ラッキーオールドサンとか聴きたいですね、なんて話しながら駅に着いた。

様々な作品に触れて、上野の夏も楽しめて、とても充実した一日になった。

上野ととんぼさん、ありがとう。




追記 (8/27)

とんぼさんの撮ったアイスだったもの
と謎に大量の足元

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