『脱獄計画(仮)』言葉で説明するとややこしい、でも体験するとそんなに難しくない演劇

脱獄計画(仮)ミニシンポジウムに行ってきました。

第1部 『脱獄計画(仮)』記録映像上映

二月にあったという舞台の、記録映像を観る時間。敢えて戯曲も読まず、映像も観ずに臨みました。

物語は一人のインタビュアーが、二人の役者へインタビューを始める、というところからスタートします。二人が演じたという『脱獄計画』という舞台について一応インタビューして行くのですが、それを聞いていても、観客はどういう舞台だったのか今一分からない。
それどころか、役者が突然役を演じ始めたり、そのインタビュアーが(出演者というわけでもないのに)何故か一つの役のせりふを口にしたりして、どうも、普通にインタビューが進むわけではないんだな、ということが分かってきます。

かつてのことを説明していると思ったら突然その再演がその場で始まり、また元の説明に戻り、人も入れ替わり立ち替わり、それどころか、一つの役が、複数の人によって演じられるようなことも起こります。

舞台はその後もメタ化して言って、今話しているこれが、これから書かれる戯曲の一部で、自分の振る舞いがどう戯曲に書かれるか、なんてことに言及したりもしています。

こう、言葉で説明するとややこしく感じるか、メタ化が目的化した演劇であるかのように感じるかもしれないのだけど、実は僕の体験は違いました。こうしたことは、目の前にあるというか、特に問題なく具体的な体験として感じられる物だったのです。
ここがすごく面白かった。こういう風に「普通に」演劇を観ているように感じられる、そう演出されたり演技されてりしているということが、すごいなと思うし、面白いなと感じる、そういう内容でした。
今回は舞台を録画した物をスクリーンに投影して観たわけだけど、舞台で生で見た人はもっとだったことでしょう。

観たい人は、ショップで戯曲を買ってください。そこにQRコードがあって、飛ぶと記録映像を観られます。
https://dr-holiday-lab.stores.jp/

第2部 基調発表_山本浩貴「〈私+環境〉の異なるヴァリエーション——時空間を束ね輸送する抽象的な肉体は演劇と魂の重ね合わせをいかに評価するか?」

続いてはいぬのせなか座の山本浩貴さんによる発表。

僕が体験したことを言語化してくれました。一つ一つ丁寧にしてくれていて、資料だけで22ページにもなり、やはり言葉であれを説明していくと大変なことになるな、と頭が下がる思い。

第3部 山本浩貴×鈴木一平×Dr. Holiday Laboratory トーク

その山本さんと、山本さんの属するいぬのせなか座、『脱獄計画(仮)』を作ったDr. Holiday Laboratory、それから今回出演した役者によるトーク。

演じられて、観られて、それでおしまい、数か月も経つともう語られもしないという演劇の現状に少しでも抵抗しようと、こうしてミニシンポジウムを開いたということで、第2部と第3部がありました。

こういうのは僕みたいな世代の感覚で言うと第三者が開く物ですが、もう、そういうことも期待できないようで(やられることは素晴らしいことだけど)自分たちでやってしまった、とのこと。偉い。

質疑応答だけでだいぶ時間を取っていたけど、戯曲・演出の山本伊等さんが、ゆっくりと言葉を探すようにして話していたのが印象的でした。自分の考えや感じていることをなるべくちゃんと伝えようという、誠実さが感じられました。

最後、戯曲に山本伊等さんのサインを貰ってしまった。へへ。


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