研修医指導の際の心構え.04「決断させる」


研修医のレベルには様々な段階がある

1. 有用な病歴聴取・身体所見が不十分
2. 病歴聴取や身体所見は十分出来ているが、アセスメント&プランに繋げられない
3. アセスメント&プランまで提示できる

1→2への成長は、型を覚えることで比較的容易に到達できるが、2→3への成長が大きなハードルの一つだ。

研修医はどのようにして自分の臨床能力の向上を実感できるか。色んな講習会に顔をだしたり、教科書や文献を読んだりして知識を増やせば「できレジ」になれるかというと、そうではない。

外科的な手技であれば

「できた・できなかった」
「速くできた・時間がかかった」
「合併症を起こさなかった・起こした」

で、自分の実力を認識することはできるが、臨床能力は簡単には評価できない。

自分の成長を感じるポイントの一つは、上級医からの「ツッコミ」の程度ではないだろうか。

一通り患者情報をプレゼンテーションして、アセスメントとプランも提示して、「その方針でいこうか」と上級医に言わしめたら、合格点クリアだろう。

はじめのうちは、自分の拙いアセスメントとプランは見事に却下され、上級医の方針にただただ従うだけに終わってしまうだろう。

だが、ここで挫けてしまえばその先の成長はない。

上級医よりも先手を打ってプランを提示し、ゴーサインを勝ち取れるようになってきたら、確実に成長している証拠だろう。

この段階に辿り着くために、「決断すること」から逃げてはいけない。一番負荷がかかる部分で、最も頭をフル回転させる部分であるが、ここのトレーニング無くして成長はない。

指導医側も注意すべき点がある。研修医が収集した病歴・身体所見をもとに先にアセスメントとプランを提示しないことだ。

研修医の成長段階によってはそうせざるを得ない時もあり、緊急度・重症度が高い時はその限りではない。

研修医の中には、自分の情報をもとに上級医が出したプランを、あたかも自分のプランであるかのように錯覚してしまう人もいる。それを認識して、自分の中で消化・吸収し、次に活かすことができる研修医は問題なく成長していくだろう。

一方で、決断することを避け続け、「他人のふんどしで相撲を取る」ような研修を続けていると、いざ3年目になったときに困ってしまうのだ。

そうさせないために、研修医のうちから自分で決断することを意識し、上級医と方針が違えばディスカッションし、修正をしていく。このプロセスを地道にやり続けていくしかない。

はじめのうちは、上級医に挑んでも0勝10敗で打ちのめされるかもしれない。
それがいつの日か、2勝8敗→五分五分→8勝2敗→全勝となる日が来るであろう。もちろんここで言う「勝ち」は、上級医の方針を論破することではなく、同じ方針を打ち出してゴーサインを出させることである。

研修医の決断力を鍛えるためにも、上級医は真剣に研修医と向き合い続けなくてはならない。

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