研修医指導の際の心構え.03「気遣い」

円滑に診療を行う上で、気をつけること

人に気を遣いながらやる

救急外来を受診した患者さんは、医師を選ぶことができない。診察室に入ったとき、もしくは救急車から降りた時、目の前にいる人がその日の担当医となる。それが、20年目のベテラン医師かもしれないし、はたまた医師成り立ての1年目初期研修医かもしれない。ベテラン医師に診てもらえるのが果たして「アタリ」なのか「ハズレ」なのかは置いといて。。どちらにせよ、患者さんにとってはその日命を預けることになるかもしれない「一人の医師」なのである。

救急外来は研修医教育を行う上で最適な場の一つであるが、そのやり方を間違えると患者さんからの信頼を失うことになる。大切なことは

たとえ研修医であっても患者さんの前で一人前の医師として扱う

救急診療では、先に研修医が問診・診察をし、あとから上級医が出てきて患者さんと話しをする場面が多いだろう。この時、先に研修医が患者さんに間違ったことを言っていたり、違う方針の話をすでにしていたとしても、決してそれを患者さんの前で非難・否定してはならない。

「そんなこと言っていたんですか?ごめんなさいね、間違いです」
「なに適当なこといってんだよ、違うだろ」

こんなことを患者さんの目の前で言ってしまうようでは最悪だ。たとえ研修医であっても、自分を担当してくれた医師が目の前で説教されたら、患者さんはどう思うか考えてほしい。
たとえ上級医が後から見事な診断をしたとしても

「最初にみた研修医に危うく誤診されそうになった」
「次来たときもあんな若造に診られたらどうしよう」

と、不安になるに違いない。そして、研修医も患者さんの目の前で怒られて恥をかくだろうし、自尊心を傷つけられる。患者さんの前で説教してしまう指導医は、自分では教育的だと思っているかもしれないが

「うちの病院はこんな半人前を現場に出しているんですよ」

というマイナスイメージを与えるだけであり、病院への信用を大きく損なうだけである。上級医であれば、患者さんからの信頼も損なわず、研修医の尊厳も保つような対応が求められる。「さっきの先生(研修医)はこう言ったんだけど!」などと言われたら、

「確かに(研修医)の言うように〇〇ということもあるので、伺ったお話と診察と検査の結果をもとに(研修医)と再度検討してみましたが、今回は✖✖ではないかと考えています」

このように、研修医を交えての意見であることを伝えるのがよいと思う。これは、他院から「△△疑い」で紹介され、その治療(入院)を行うつもりできた患者さんへの対応でも応用できる方法である。前医を決して非難しない。

「確かにこの症状からは△△が疑わしいですが、▢▢との判別が難しんですよね。検査をしたら今回は▢▢だと分かったので、これなら入院までは必要がなく外来治療でも大丈夫そうですよ。」

指導医は、研修医の指導だけをすればよいのではない。指導医は、その日の救急外来の責任者である。円滑に診療が進むように目を配り、気を遣い、危うい火種があれば燃え盛る前に消さなければならない。それには、多方面への「気遣い」が必要なのである。

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