自動再生機構と刷り込み記憶

今朝早く自転車で家を出た。
澄んだ空にたくさんの星が美しく輝いていたが、昨日の雨はけっこう遅くまで降っていたようでまだ道路は濡れていた。

私が普段使っている自転車は後輪の泥除けを外しているので、少し失敗したかなとも思ったが走り出してみるとそれほど水を跳ね上げることも無く、そのまま行くことにした。

5分ほど走って池の近くまで来たときには辺り一面に霧がたちこめ幻想的な雰囲気。
昨日までの冷え込みに比べ、今朝は幾分暖かい朝のようだ。

しっとりと、しかし潤んだ空気を身体に受けて「今日は走った後の喉のイガイガ感がそれほどでもないかも」とか考えていたときに、自分が「スモークオンザウォーター」を鼻唄のように口ずさんでいることにふと気がついた。
全く無意識だった。

「何でまたこんな古い曲を歌ってんだ?」
自分でも不思議たった。
この曲は若い頃よく聴いていた。バンドで演奏していたこともあった。と言っても30年以上前の話で、もう何年も何10年も歌うどころか聴くことさえなかった。

そうか、確かに「スモークオンザウォーター」だ。
さっき自転車を漕ぎながら見た風景は池の上に霧がたちこめ、まさに「スモークオンザウォーター」という景色だった。

あの当時、何でハードロックの歌詞が「スモークオンザウォーター」なんだ?
とか思いながらも、その情景を頭に描きながら歌っていた。
それがさっき見たあの風景そのものだった。

自転車漕ぎで活性化され、あの情景を目の当たりにした私の脳は、古い記憶の奥底に眠っていた「スモークオンザウォーター」なるものを引きずり出して来て、自動演奏のジュークボックスのように演奏を始めたのだ。
全く無意識のうちに。

考えてみればそれに近いことは良くあるかもしれない。

誰かの発した言葉が何かの曲の歌詞と同じフレーズだった時にその歌詞から突然その曲が甦って歌い出したり、歌わないまでも頭の中でその曲がぐるぐるリピートされたり、そう、まるでジュークボックスのように自動演奏が始まるのだ。

それどころか、子供の頃にいつも流れていたようなヒット曲や、テレビドラマの主題歌など、別に好んで聴いていたわけでもなく、それまで歌ったことなど無いような曲なのに、フルコーラスで歌えてしまったりするのだから自分でも驚く。

あぁそういえばこの曲はこんな歌詞だったんだとその意味が理解できる今になって、知らずに覚え込まれていたことに驚愕し、刷り込みの強力なパワーを改めて思い知らされる。

特に子供の頃に刷り込まれたであろうものは本人が何も意識せずともしっかり記憶に根付いているようだ。

子供の前では迂闊なことは言えないし、その能力をしっかりと本人のために利用できるように導いてやれたらそれは素晴らしい事だと思う。


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