第б回裏短コン#3「第三の選択」


お待たせいたしました!優勝作の登場です!

1位 虎野亜奈作 「第三の選択」

第三の選択

作意手順 
33竜、24桂合、47歩、56玉、36竜、同桂、46角成迄7手詰。

画像2

正解:33(1) 誤解:0 無解:1 無評価:0
評点:2.923
順位予想 1位:15 2位:5 3位:5
ベストタイトル投票:2票

圧倒的評点で他の追随を許さず優勝に輝いた本作。
順位予想も15名が1位に投票しており人気が伺える。
盤面13枚と裏短コンの中では少ない枚数からどんな手順が繰り出されるのだろうか。

本作の難所はいきなり初手からやってくる。
平凡に34竜は、35桂合(56玉は36竜46合同角成同飛成47金迄)、同角成、56玉、48桂、同飛生以下不詰。
44竜の両王手も56玉、47金、同飛成、57歩、同龍、同角成、同玉以下不詰。
他にも色々やってみたくなる手はあるが、33竜とそっぽに開くのが好手である。34竜の時と同様に35桂合は、45に利きがない効果で、同角生、56玉、57歩、45玉、44竜迄同手数駒余りで詰む。

どうやって受けるかが問題だが、なんと24桂の打診中合が飛び出す!
24同角成は、35歩合、同馬、56玉以下打歩詰を打開できず不詰。24同角生は、56玉、36龍、46歩合で同角成と取ることができないため不詰。
というわけで、この打診中合は取ることができない!

よって、47歩と打ち、56玉、36竜、同桂(24桂合が歩合だと、36竜に57玉、24角成迄同手数駒余り)、46角成迄で収束する。

狙いは打診中合動かしの最短手数実現。
この狙いの実現には、2手目に合駒が発生、3手目打診中合を取り、5手目に歩を打つ手が変化手順に必ず必要になるため、7手は間違いなく理論上の最短手数である。

実現だけでも気が遠くなりそうな狙いだが、数多の変化紛れを盤面13枚という少ない駒数で完璧に割りきっている。
衝撃の初手33竜はそう創られることが必然であったかのように自然に手順に溶け込み、打歩詰絡みの短編で緩みがちとなる歩打も弱点と感じさせない一点の曇りもない完成度。7手詰で本作を超える作品はあるのか疑問に思うほどの傑作である。

優勝おめでとうございます!

作者コメント
打診中合を取らずに動かす狙いです。
前例は詰将棋解答選手権2015青木裕一作があります。
本作は最短での表現がセールスポイントです。
ただ、打診中合動かしを7手でやろうとすると、誰が作っても同じような手順になりそうなので、類作が心配です。
自分が知らないだけで、過去に誰かが作っていてもおかしくありません。

詰将棋解答選手権2015チャンピオン戦 青木裕一作

解答選手権 青木裕一

☆青木裕一作は44に歩の打診中合が発生し、収束で動く構成。

☆作者のコメントの通り、本作のテーマを実現しようとすると、恐らくこの手順に辿りつくだろう。そして全くの同一作が誕生する可能性すらある。
だからこそ、本作は究極の作品と言えるのではないだろうか。
出来ることならば自分が発見したかったと思ってしまう。

nono_y「唯一自力で解けなかった。▲34龍は△56玉で打歩詰で読みを打ち切
ってしまい、▲36龍△46合▲同角成というベタな順に気付かなかったため、その上を行く二段中合含みの作意まで辿り着けなかった。変化と紛れの深さで17の上を行く。」
☆解答集計後本作についての感想を何人かに聞いていると、56玉の変化手順が平凡ながらも見えにくかったようだ。無解1もこの変化によるもの。
園川「7手でこんなことが可能だったのか、と驚嘆。」
tsumegaeru「打診手筋が、驚異の短手数で実現されていて配置も軽く収束も完璧でいうことなし。」
田川雄大「エレガントな作品」
菊田裕司「打診中合を捨て駒で動かすという密度の濃い手順。2手目56玉の変化の46同角成がなかなか見えず苦労した。」
mituhiko「あえて3三龍とすることで打ち歩を回避しつつ、桂馬の限定合いからのこの収束と、とても楽しかったです。」
オオサキ「完璧。」
金少桂「初手34龍でも44龍でもなく33龍。2手目56玉でも35合でもなく24中合。攻防に第三の選択が見られて面白い問題。限定の打診中合を動かすというのもすごい。」
soga「打診中合を7手で動かす。そっぽの初手も上手い。」
大瀬戸「妙技。」
ミーナ「この打診が7手でできるとは信じられない。だって打診できてないし。56角が邪魔とは。やっぱり信じられない。」
ほっと「打診中合を取らずに動かすのが7手で可能だったとは。今回の裏短コンの白眉。」
雲虚空「打診中合を取らずに龍捨てで動かして局面を打開するのは面白い構想だと思います。」
まゆしぃ「まさかの打診に驚いた。」
だっしぃ。「中合があって良かった。」
おかもと「打診中合の最短手数かな。」
馬屋原剛「打診中合の桂を動かす作品は久保作があるが、本作は完璧な仕上がり。」
太刀岡甫「とても良い。35龍と34龍を読ませることにも成功しているし、その龍を捨て、打診中合を動かしてまとめるのも理想的。
作者予想は虎野亜奈さん。実力者の中から、構想の実現にとどまらず高い完成度を追求する作家を選択した。」
上谷直希「当初は15龍などを考えた。いくらなんでもひねくれ過ぎか笑」
斎藤光寿「ダントツで悩んだ作だ。
二手目の変化が難関で、中々34龍or33龍の有力さに気付かなかった。
僕は34龍から読んだので35合で行き詰まり、33龍で24合を発見するという流れ。24合の瞬間の47歩がまた難手で、ここで24の合が桂と判明するのだ。題意は初手の選択かと思ったが、35、24歩合に対しての24桂合だった。影も無かった桂が現れて跳ねる様は圧巻で、作為的なものを感じさせない初形もいい。
緻密に作られた七手詰の傑作。」
青木裕一「まさか、打診中合動かしが7手でできるとは!
収束も決まってるし、看寿賞の候補になりそう。」
山下誠「桂合は読みの入ったうならせる1手。」
まつきち「紛れが多くて苦労。打診の桂合を取ると桂の捨合で逃れるのは巧妙。」
宮田敦史「第三の選択とは初手の事?それにしてもまさか中合の桂が動くとは予想外。」
松下拓矢「角の態度を聞く中合。非常に勉強になった。」
黒川「いかにも手慣れていてうまい。」
梶谷和宏「これは難解。初手はなんとなくこう指しますが、まず2手目56玉が読みにくい。56玉を詰めても、正解の24桂打診中合いの発見は容易ではない。36に利かせるため、歩で節約できないという構成もすばらしい。」
奥鳥羽生「七手にて 打診中合 動きけり」
風みどり「打診中合を取らずに動かす。これは凄い。」
三輪勝昭「打診中合動かしですか。
簡単に創っているけど創作技術が伺える作品。完成品ですね。」
keima82「初手だけでも相当難しいですが、2手目は更に深い。
単に玉逃げは角成、△35歩合は角不成があるので、△24桂で態度を訊く。
合駒を取ると、成なら△35歩合、不成なら玉逃げで不詰。
よって、取らない手が正解で、合駒が働いての収束。文句なしで満点。」
「打診中合を取らない。」
有吉弘敏「まさかの打診中合。またそれを龍捨てで動かす。
     驚きました。」

作者予想結果

画像4

☆少ない駒数で構想を実現させるイメージからか相馬慎一さんに票が集中。優勝作だけあり、一流の実力派作家が名を連ねました。