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小説『英彦の峰の気を負いて』人生100年時代に

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九州の一地方都市で、この年65歳になる登場人物が、故郷を再発見し、自分の原点を探る旅を始めた。男女7名の高校の同級生が、故郷の大分県中津市に集まった。 メンバーは1970年代の…
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#故郷

小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋①

中津駅のホームから 高架線のホームから眺める街は雪で真っ白に覆われていた。 小幡次郎は大…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋②

1981年2月 渋谷 この日集まったメンバーは学生時代によく酒を酌み交わした仲間だった。…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋③

福永光男のこと 渋谷の喫茶店、バトーでの読書会は福永が主宰していた。彼は世話好きで、いつ…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋④

「さて、酔っ払う前に、明日からの予定を説明します」 幹事の小幡次郎が日程表を配りながら話…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑤

薦神社へ 二日目の朝は空気が澄み、天気も晴れ渡っていた。道路の雪はほとんどが溶けていた。…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑦

福澤諭吉旧居・福澤記念館 蓬莱観を出た一行は、中津城の天守閣を左手に見ながらお堀端を歩き…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑧ 

筑紫亭の夜 門から少し出て、一行の到着を待っていた女将が挨拶をした。 「皆さま、ようこそ、お越しくださいました。女将でございます。今日ははるばる遠方からのお出ましで恐れ入ります」 福澤通りから、少し脇道に入った一角に料亭はあった。年月を伝える竹の塀で覆われた料亭の佇まいは、周囲と隔絶して、そこだけ歴史が息づいているような趣があった。 「女将さん、お待たせしました。今日は同級生と参りました」小幡が前に出て挨拶を返した。 やや薄暗い料亭の庭内に案内されると、水打ちがなさ

小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑨

母校へ 高校時代、福澤は剣道部の主将を務めていた。母校の校長に剣道部の後輩がなったと聞き…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑩

羅漢寺にて 30分もかからず羅漢寺の駐車場に到着した朝吹は早速、急な石の階段を上り始めた…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑪

青の洞門と禅海和尚 「郁子ちゃん、『恩讐の彼方』って読んだことがある?菊池寛が書いた、も…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑫

英彦の峰の気を負いて  四日目の最終日、全員が朝早く母校の校門前に集合した。七人の卒業生…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑬

取締役会議 「パパがね、今度、退任するのよ、今年の秋はニューヨークに行けそうよ。もう、随…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑭

日本民芸館と小鹿田焼 岩田郁子は井の頭線、駒場東大前駅近くに、ずっと学生の頃から住んでい…

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小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑮

秋 東京日本橋 「ねえ、明日の晩、急だけど、日本橋あたりで集まらない、私、ちょうど予定がなくなったから、時間ある?」 初秋の頃、橋本雅子の声がけで、平田厚と和田裕二の三人が日本橋の小料理屋に集まった。三人が顔を合わせるのは2月以来だった。 「久しぶり、元気だった?みんなで集まってから、もう半年以上経ったよね。その後、どうしてた?」席に着くなり橋本が声をかけた。 「そうだね、早いね、あれから結構、みんなに変化があったよな。やっぱり今年は俺たち65歳になるから人生の節目だ