小説「英彦(えひこ)の峰の気を負いて」抜粋⑦
福澤諭吉旧居・福澤記念館
蓬莱観を出た一行は、中津城の天守閣を左手に見ながらお堀端を歩き、一級河川の山国川が見渡せる土手へと出た。黒田官兵衛が開いた中津城は日本の三大水城と呼ばれ、城の内堀は川、海へと繋がっていた。江戸時代、河口にある中津港からは周防灘を経て瀬戸内海を通り、畿内へと最短距離で行ける水運があった。
「官兵衛は昔、この中津の地の利を生かして、関ケ原の戦いの情報は真っ先につかんでと思うよ。あの時、官兵衛は隠居を辞めて、瞬く間に9千人の兵を募り、九州の大半を制覇す