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taliki LABを立ち上げました

この度、株式会社talikiでは「taliki LAB」という取り組みをはじめました。
これはいわば若手の研究者・クリエイター・起業家の卵を中心とした、”社会実装集団”なのですが、どういう取り組みなのか、という話の前に、そもそもなぜこれに取り組もうと思ったのかというお話をしたいと思います。

巷で流行りの”若手起業支援”とは何ぞや

資金調達バブル、起業バブルと言われて久しく、私たちtalikiが起業家エコシステムの形成を推進する関西でも、ここ一年ほどで盛り上がりを見せてきたように思います。メディアやSNSでは「起業したら投資家がお金くれる」「起業したら芸能人と付き合える」というようポップで夢のある情報も多く語られています。

しかしこの一年間、ざっと100名以上の学生起業家・起業したいという学生にお会いし、自分自身も学生の間に起業し、大企業の事業開発もお手伝いしていく中で、成功している人よりも圧倒的に多くの「自身が思い描いた夢や希望を達成せずにフェードアウトしていく人」を見届けてきました。

内定を断って休学して上京したはいいものの、資金はどんどん消えて行き、まともに食べる事も出来ずバイトに明け暮れ結局事業のために使える時間は減る。しかし「世界を変える」と豪語して周りの人に応援され嫉妬されたからもう戻れない。精神的に追い詰められ、本当に実現したかった世界を1ミリも見る事なく「あれ、自分何やってんだろう」と絶望に暮れる。それでもタイムリミットは刻々と迫り、ついには逃げるように地元に帰り誰にも会えなくなる-そんな学生たちや若手起業家たちに本当にたくさん、たくさん、出会いました。

事実、最近起業家のメンタルヘルスがホットトピックとなっています。私の敬愛するcotree櫻本さんのこちらの記事でもその問題に触れられています。

「起業家の37%が、気分障害・不安障害の基準を満たしている(一般人の7倍)」
「起業家の49%が、生涯に一度はメンタルの問題を抱える」

もちろん、その結果が本人にとって納得いかないものだったとしても、私は挑戦したことそのものに尊敬の念を感じますし、いつかは例え違う形であろうと芽がでるのだと全員に思っています。そうじゃなかったとしても、他の道や自分により合った道を選択出来たのなら、それは全力で応援したいことでもあります。なのでフェードアウト自体は問題ではないですし、誰が悪いとか、学生起業はやめた方がいいとか、そういう話ではなありません。

私が今日この記事でしたいのは「こんな思いをしている人がたくさんいるのになぜそこにセーフティネットを張る人がほとんどいないのだろう」という問題提起です。

起業家支援を軽々しく語るな

起業家支援といっても様々な文脈があります。私たちtalikiのようにソフト・ハードの両面からサポートする形もあれば、オフィス貸しをする不動産事業者、資金面のサポートをする投資家などが挙げられます。今回は特にその中でも、「起業家支援」と銘打っている各事業者について触れたいと思います。

1年間起業家支援をしているというのもあり、よくそういった団体から「ピッチイベントをするので起業家を紹介してください」と言われることがあります。

これ、ちょっとおかしいんですよね。「起業家支援」をしているはずなのに「ピッチイベントをするから起業家紹介してください」って、彼らが普段支援しているのは誰なんでしょう?

よくある起業家支援の枠組みは、「ピッチコンテスト」です。よくて「月一の専門家によるメンタリング」です。ウリとして「産学連携」とか「行政とのコネクション」とかがあります。

彼らの主な仕事は、言葉を選ばずに言うと道端に生えてる「起業家」に対して月に一回くらい自分の手は動かさず好き勝手言って、残りの大半は適当にスペース貸しをするなどして、万が一萎れずに育ったら「ピッチコンテスト」で収穫して「投資家に出荷」したり「テナント貸する不動産屋に出荷」することです。

別にそれが間違ってるという話ではありません。彼らは何も悪くありません。できるだけ工数をかけず効率的にマネタイズするのはビジネスの基本です。私が物申したいのは、それを「起業家支援」と銘打つことです。

よく考えてみると、本当におかしな話です。自身が起業家や起業からの投資家ならまだ解像度が高いので理解できますが、起業したこともない人が、ジェットコースターのような精神状態で目まぐるしい日々を過ごす起業家に対して、1ヶ月に一回取るコミュニケーションと、たった数分のピッチに対するコメントと、具体的に何をしてくれるか分からないような”繋がり”の集合体によって、一体何の支援をするのでしょう?

特に、若い起業家の卵たちはまともな就労経験もなく、市場原理に対する解像度も低く、リソースもなく、スキルセットもなく、人脈もない。そんな上手くいかなくて当たり前な彼らを「いいじゃんやっちゃえ!」と唆し、まともなサポートもせず、たまに会えば正解なんて分からないくせにフィードバックという名の誰でも出来るダメ出しをする。
そういう無責任な業者や世間の声に翻弄されて起業家たちが心や体を壊したら、「失敗は成功の元」のような綺麗な言葉で片付けたり、「あの子は最近見ないね」「本当に出来る人だけが残る」などの自己責任論で片付ける。
日本の経済活動や発展、はたまた一人一人のかけがえのない命を鑑みた時、果たしてそれが本当に正しい在り方なのでしょうか。”起業”を、キャピタルゲインを生み出すツールではなく、1人の人間の生き方として向き合う意識を持って、本当に起業家支援は為されているのでしょうか。

目の前の起業家を成功させる覚悟はあるか

突然その全てのリスクを20歳そこらの1人の人間が背負わなくてはならない環境も、「根性の勝ち残り戦スタイル」も、リソースが限られており様々なビジネススタイルが必要とされるこの日本にはもはや向いていないのでは、と感じています。
また、ポジションに関してもそうです。全員が”創業”する必要なんて全くありません。CEOだけでは世の中も会社も成立しませんし成長しません。本当は参謀としてや、縁の下の力持ちの方が大活躍する人もたくさんいます。

そのように組織体制やビジネスモデル含め、効率性/再現性/非連続性/非定常性/感性などを総合的に事業創造へと繋げていくためには、各起業家への個別最適化と様々な知見の融合による継続的なサポートが必要です。

もちろんたまたま環境や運に恵まれ大成できる若い起業家も多数いますが、大半の若手起業家にとって月一のメンタリングと場所貸しとピッチコンテストだけでそれらが補えるとは到底思えません。
多くの起業家支援を名乗る業者が「いい起業家に会えない」と言うのは、上記のような偶然に恵まれた奇跡の一粒がたまたま飛び込んでくるのを待っているからであり、目の前に現れる起業家の卵たちを「いい起業家」に育てる覚悟がないからです。
(余談ですが「同じことやってるところ結構ありますよね?」と聞かれたり、「ここと競合ですよね」と言われたりするのですが、そもそも”起業家育成・支援”を本質的にやってる事業者が全然いないくて苦しんでる友人が周りにたくさんいたから私たちが始めた訳で、起業家が生まれ続ける限り一生ゼロサムにならないこの領域において、エコシステムを醸成するために同様のことをちゃんとやってくれる人が増えて皆で支えた方が圧倒的にいいんですよね。起業環境さえ整ってないフェーズで起業家を商材にして競合とか言ってるから起業家の卵が苦しむねん)
(誤解のないように言っておきますが本当に起業家に寄り添い、なんならtalikiより効果的なサポートを行なっている事業者や経験豊富な投資家の方もたくさんいらっしゃいます!!!)

このように”まともな就労経験もなく、市場原理に対する解像度も低く、リソースもなく、スキルセットもなく、人脈もない”圧倒的不利な若手起業家ですが、一方で若者だからこその強みもあります。かつて毛沢東は革命家の条件を「若いこと・貧しいこと・無名であること」としました。その是非はさておき、フットワーク軽くトレンドに強くピュアなビジョンとパッションで飛び込める(そして飛び込んで許される)若者にこそ、プレイヤーとしての未来が託せると信じています。

そういう訳で、そんな「若くて、貧しくて、無名」かもしれないけれども「確実に今後活躍する革命家の卵たち」を応援すべく、今回”taliki LAB”を立ち上げました。
このtaliki LABは、それぞれの得意なことや好きなこと、人間性を掛け合わせながら、「共創による事業開発」を行う”社会実装集団”です。
集団として目指すことは、学びと実践とサポートを得て成功確度を上げることで、起業/ジョイントベンチャー/企業内起業などの事業創出のプロフェッショナルとなることです。この集団では、「社会に本質を実装すること」と「組織内で価値交換をすること」を軸として活動していき、その活動に関するバックアップ(という名のパシリ)をtalikiが行います。

taliki LABの基本活動

<学ぶ>
ビジネスインプット、リサーチ、各々の専門領域のナレッジの相互学習を促進する仕組みを導入し、扱える情報量の底上げを行います。

<創る>
上記の学びの実践の機会として事業創出を行います。こちらはLAB内で立ち上がったものや、LABメンバーの持ち込み企画などが挙げられます。

<GIVEする>
私たちtalikiの最大の特徴は、「自走する前提でのセーフティーネット」です。起業家はバッターボックスに立ち続ければいつか成功する、と言われています。だからこそ、様々な起業家に伴走し蓄積したデータとノウハウを元に、走り続ける起業家たちのダウンサイドリスクへのサポートをしています。
壁にぶつかった時に、メンバーや運営が解決策を一緒に考えたりgiveするだけではなく、精神的に苦しい時に黙って手を繋いでくれる人がいること、孤独に飲み込まれないように駆け込める場所があること、一緒に喜んでくれる仲間がいること、馴れ合いではなく、偽らずにありのままで存在承認と成長を得られること。このLABはそんな形でプレイヤーたちが絶望の狭間で1人苦しまずに済む環境を提供します。

所属メンバーが就職であれ株式会社の設立であれプロジェクトの立ち上げであれ、それぞれの良さを活かし、弱さを補完し、自主性を尊重しながらもプレイヤーとして活躍できるようなプラットフォームを作る。それがtalikiが一貫して目指していることです。

またこのLABの前身となるタリキチプロジェクトが始まった時から、ずっと変わらず以下の”運営三原則”を掲げてきました。
1.見放さない
2.ダメ出しではなく提案をする
3.妥協しない
これは、正直工数もコストもかかります。直近の経済合理性のみを考える営利団体には考えられないことです。ですが、この三原則なくして真に活躍するプレイヤーは増やせません。

数ヶ月に1回メンバーを募集しようと思っていますが、今回の募集において「ヘルスケア」「ものづくり」「マイノリティ支援」「グローバル」の4つの切り口を設定し、メンバーを募集しています。

もし今これを読んでいるあなたが、起業して成功しないと死ぬ生き物なのであれば、ぜひ門戸を叩いてみてください。もしあなたが何かのプロフェッショナルなのであれば、ぜひ事業創出のメンバーとしてジョインしてみてください。

この世から、社会に価値を創出したいと思いながら苦しんで消えていく起業家が少しでも減らせるように私たちも覚悟を持って走りたいと思います。(というか一応私も若手起業家の1人なので死なないように頑張る)

「taliki LAB」の詳細・ご応募はこちら
▶︎https://www.talikichi.com

追記:「自分は本気で起業家に向き合ってるねん」という事業者さん、すみません最高です!当LABのslackにご招待させていただきますのでぜひDMにてご連絡ください!


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